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故人の遺骨を大海原へ送る......。新しい供養のスタイル「海洋散骨」とは?

ライフ

テレ東プラス

2020.3.14

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故人の見送り方にも様々なスタイルがありますが、あえて遺骨をお墓に納めず、大海原に撒く「海洋散骨」がいま注目を集めている。果たして、そのメリットは何か? 実際に海洋散骨の体験クルーズに乗船してみた。

過去12年で受注数は100倍以上に!


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故人の遺骨は、先祖代々の墓に納められるのが一般的。ところが近年、遺骨を海に撒く「海洋散骨」のニーズが急激に増加しているという。

「思い入れのある海に遺骨を流してほしいと望む方や、何らかの事情でお墓に入ることを望まない人は、意外と少なくありません。また、近年ではお墓を管理する人がいなくなり、墓じまいをする世帯も増えています。そうした事情を抱える方にとって、遺骨を海に撒く葬送のスタイルは、メリットの多い選択肢と言えます」

そう語るのは、海洋散骨事業の草分けである株式会社ハウスボートクラブの代表取締役社長、村田ますみさんだ。近年では、自ら海洋散骨を生前予約する人も珍しくないという。

村田さんによれば、海洋散骨事業をスタートした2007年の総依頼数は6件であったのに対し、2019年はなんと600件超。この12年で、実に100倍以上にまでニーズが拡大していることになる。

海洋散骨とは一体どのように行なわれるものなのか? 百聞は一見にしかず。実際に散骨体験クルーズに参加させてもらうことにした。

散骨体験クルーズに出発!


株式会社ハウスボートクラブの船は、東京・勝どきの船着き場から出港する。この日はあくまで体験クルーズということで、参加者には身内の海洋散骨を検討している一般客のほか、斎場や終活サロンで働く人も多数。それだけ海洋散骨に対する世間の関心が高まっているということだろう。

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まずは船内で、この日の流れと諸注意に関するレクチャーから。散骨する海域への到着時刻、この日の気象状況、船内での喫煙場所など一通りの説明がされ、最後に船長から、故人の冥福を祈って安全に航行する旨の宣言があった。

そして出港後、船は小一時間かけて散骨ポイントへ向かうこととなり、その間、船内では模擬セレモニーを行なわれる。

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なお、セレモニーの様式については基本的に遺族の自由。モニターで個人の思い出ムービーを流しながら飲食を楽しむのもよし、僧侶を呼んで法要を行なうのもよし。ただし、法律により火を使うことができないため、線香を焚くことはできず、献花で代用することが多いという。

ちなみにこの日、模擬的に見送られるのは舵を取る船長だった。船内には祭壇が設けられているほか、故人の思い出の品を飾るスペースも。

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小さな子供連れの場合は、モニターでアニメを流し、大人たちはお酒を楽しんで到着を待つこともできるそう。船の上とは思えない、至れり尽くせりの空間である。

大海原に故人の遺骨を撒いて見送る


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東京タワーやレインボーブリッジなどの風景を楽しみながら、船は朝潮運河から東京港を通過し、そして東京湾へと抜ける。この日の散骨ポイントは、羽田空港に近い海域だ。

到着後、さっそくデッキから海に向かって遺骨を撒く。遺骨はあらかじめ粉状にされ、水に溶ける紙に包まれて手渡される(※この日は環境に影響のないダミーの粉を使用)。雨や風が強い日は、開封せずに包みのまま海へ落としたほうがいいとのこと。

参考までに付け加えると、成人男子で遺骨の量はおよそ1.5キロ。これをすべて撒いてもいいし、一部をお墓へ、一部を海へと分けてもいい。

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献花や故人へのメッセージを書いた紙(やはり水溶性)も、遺骨と一緒に海へ。この日は天候に恵まれ、海面に散る花びらがよく映えた。

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模擬クルーズとはいえ、実際に散骨を体験してみると、お墓に遺骨を収める従来の葬送法とは、見送る側の心持ちがまったく異なることがよくわかる。実際、参加者からは「しんみりせず、遺族が思い出を共有するいい機会になりますね」という声も聞かれた。

海風と鐘の音を浴びながら黙祷


散骨後は、デッキに集合して黙祷を。この際、鐘が10回打ち鳴らされる。海風を浴びながらの鐘の音に耳を傾けるのは、海洋散骨ならではの体験だろう。

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その後、船は散骨ポイントをゆっくりと3周まわる。これが故人との最後のお別れの時間で、思い思いの感傷にひたるひとときとなる。

ここまでの行程を終えると、船は勝どきへと引き返し始める。残る時間は、船内でデザートブッフェを楽しみながら、スタッフへの質疑応答タイムにあてられた。

ちなみに、最も多く寄せられる質問は、やはりルールに関するものだという。「海にお骨を撒くのは、法律的にOKなの?」というのは、当然の疑問だろう。村田さんは次のように回答する。

「現状、海洋散骨という葬法を取り締まる法律はありません。しかし、だからといって社会的に認められないやり方をするのでは問題です。海域周辺の地域や漁業関係者に迷惑をかけるようなことがあってはならないので、私たちは一般社団法人・日本海洋散骨協会という団体を立ち上げ、業界内でのルールとガイドラインを設定しています」

たとえば遺骨を粉骨化しておくのもその1つで、もし人骨がそのまま岸に漂着するようなことがあったら大騒ぎになるだろう。また、献花についても、自然に還りにくい茎の部分はあらかじめ断裁しておくなど、細かな配慮がされていた。

自分の散骨は自分ではできない


出発から帰着まで、きっかり3時間のクルージング。株式会社ハウスボートクラブ体験クルーズは海が荒れない限り毎月実施されている(フードやドリンク、デザートブッフェの試食代込みで1人5000円)。興味がある人は、まずは体験してみることをおすすめしたい。

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実際に体験クルーズを終えてみて、海洋散骨に対するイメージは大きく変わった。これは故人の遺志を叶えるためだけでなく、残された遺族が気持ちを整理し、前を向くためのセレモニーにもなり得るものだと実感させられる。また、この体験によって、自らも海洋散骨を望む人が増えるかもしれない。

ただし、こうした希望に対して、村田さんはこうも語る。

「身内に迷惑をかけたくないからと生前予約をされる方は少なくありません。しかし、あくまでご家族の本当の気持ちと向き合った上で、慎重に判断するべきだと思います。お骨やお墓を管理することを迷惑だなんて思っていないご家族も多いですし、海に流さず、いつでもお参りできるようそばにいてほしいと願う方も大勢います。自分の散骨は自分ではできません。だからこそ、今のうちからご家族とよく話し合っていただきたいですね」

あるいは、海洋散骨という選択肢を視野に入れることで、家族との深いコミュニケーションが生まれるきっかけになるかもしれない。選択肢の1つとして、今のうちから家族とじっくり話し合ってみてほしい。

【取材協力】
海洋散骨のブルーオーシャンセレモニー

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