新型コロナは「正しく恐れて、適切に行動」を! 免疫力を落とさない家での過ごし方:主治医の小部屋

「主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)は、第一線で活躍する医師たちが、より健康に、より快適に生きるための医療情報を紹介してくれる知的エンターテイメントバラエティです。

今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」では、特別企画として、現在、全世界で猛威を振るう「新型コロナウイルス感染症」を取り上げます。同番組のレギュラー・中山久德医師に、その特徴や感染予防対策などについて現時点でわかっていることを教えていただきました!

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感染拡大を防ぐには、外出しないこと!


── 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイク(予想以上の感染拡大)によって、首都圏をはじめ7都府県では緊急事態宣言が発令されました。どんどん状況が緊迫してきてとても怖いのですがどうしたらよいでしょう?

「テレビをつければ常に新型コロナウイルス感染のニュースが流れていますね。しかも状況が厳しくなっている内容ばかりです。連日こうした話題ばかりですと怖くなるし、気が滅入ってしまうのも無理はないです。しかし事実として新型コロナウイルスは感染拡大の一途にあり、皆さん一人ひとりがこれまで以上に危機感をもって行動することが必要です。新しい確かな情報を取り入れて、正しく恐れて、適切に行動しましょう」。

── 流行当初は時期的に花粉症やインフルエンザと重なりましたが、症状から間違えやすい病気などはありますか。

「新型コロナウイルス感染症は大きな脅威となっていますが、いろいろな報告を聞いていても、新型コロナウイルスのみに特徴的な症状いうものはなかなかないようです。初期症状は一般の風邪のように、熱が出て、咳が出るといったこと、なかには味がわからなくなったり、ニオイがしなくなったりといった味覚障害や嗅覚障害を伴うこともあるといわれています。

ただ、これも新型コロナウイルスに限った症状かというと必ずしもそうではないです。したがって、症状から新型コロナウイルスかそうでないかを見分けるのはとても難しいことだと思いますね」。

── 4日以上続く37.5℃以上の発熱はやはり1つの目安になるのでしょうか。

「新型コロナウイルスに感染した人のうち、約80%は無症状もしくは軽症で、残りの約15%が重症、さらに5%程度が生死にかかわるような重篤な状態だといわれています。重症・重篤を合わせた約20%の人を見逃さないようにしようとすると、37.5℃以上の発熱がしばらく続くことが感染を疑う根拠になるんですね。だからといって平熱の人、発熱の期間が短い人は新型コロナウイルスに感染してないとは言い切れません。

感染を確認するにはPCR法による遺伝子検査(PCR検査)で調べなければなりません。

国も検査数を増やして対応していますが、1日に1万2000例(実際には検査現場の事情によりさらに少ない)ぐらいしかできない(近く2万件に増やす予定)検査ですので、疑わしい人をみんな検査するわけにはいかないのです。

そこで基準となったのが、37.5℃以上の発熱が4日以上(高齢者や基礎疾患がある方は2日程度)続く、もしくは強い倦怠感や呼吸困難感があること。いずれも重症・重篤例に結びつくような症状で、これらに該当しそうな場合は早めに検査をしたほうがいいということで目安とされたわけです」。

最長3時間空気中に漂うことも。換気を心がけて


── いっそうの感染拡大が懸念されますが、今いちばん気をつけたいことは何でしょう。

「昨年末に発生が報告され、年明けの1月から中国でどんどん感染者が増え始め、最近では世界中で数日間で10万人ずつ増加していくような、いわゆるパンデミック(世界的な大流行)が起きています。繰り返しますが、新型コロナウイルスは約8割の人は軽症あるいは無症状で、誰もが重症化するわけではありません。一方で重篤化すると死に至る非常に怖い感染症です。

では、どんな人が重症・重篤化しやすいのかというと、まずは高齢者や持病のある人。具体的には糖尿病、循環器系疾患、呼吸器疾患がある人やステロイド剤などの免疫を抑える薬を服用している人などです。

そういう方々に新型コロナウイルスをうつさないようにしなくてはいけないのです。しかしながら若い人や持病のない人で無症状なのに新型コロナウイルスに感染している方が増えていて、こうした人たちが高齢者にうつしてしまい、重症化させてしまうケースが多くなっています。症状がなくても、もしかして知らないうちに感染していて、誰かにうつしてしまっているという恐ろしいことが現実にあちらこちらで起きているのです。

もちろん若い人は重症化しないというわけではありません。とにかく人にうつさないようにすること、そのために外出しないでお家で過ごすこと、これが今いちばん重要になります」。

外に出なければならないときは、3つの『密』を避けて


── 感染経路から予防できることはありますか?

「新型コロナウイルスは飛沫感染と接触感染によって人から人へ感染するといわれています。飛沫とはウイルスなどの病原体の周りを水分が取り囲んだ直径5マイクロメートル以上の粒子で、感染者が会話をするだけで1〜2メートル近く飛びます。咳をしたならその距離はもっと伸びておよそ3メートル、くしゃみであれば5メートルくらい飛散します。人との距離をある程度とるようにしないと容易に感染させてしまうんです。

今、さかんに密閉・密集・密接の3つの『密』を防ぐようにといわれているのもそのためです。人と人との距離が近い "密接" した場面で会話や食事をすることで飛沫感染のリスクは上がります。多くの人が集まる "密集" も人と人との距離が近づきやすくなるので避けなければなりません。

また、通常の飛沫感染であれば、飛沫の粒についているウイルスは会話で1~2メートル飛んでもすぐに地面に落ちるのですが、今回の新型コロナウイルスは最長で3時間くらい空気中に漂っていることがあるとされます(空気感染するという意味ではありません)。

そうなると、感染者がいる空間では、しばらくの間ウイルスが空気中に残っている可能性があります。 "密閉" 空間が良くないのはそういう理由からです。窓を開けて外気を取り入れてよく換気することが大事なんですね。」

── 感染から身を守るために、マスクは常時つけていたほうがいいのでしょうか。

「新型コロナウイルスに感染しないためには、まずはおうちで過ごすこと、外出しなければならないときは3つの『密』を防ぐよう行動すること、そして丁寧な手洗いとマスク着用です。マスクは入手が困難な状況ですが、人のいる場所ではぜひ着けてほしいですね。咳をしている人はなおのこと咳エチケットとしてマスクをしてください。今多くの人は使い捨ての不織布マスクを使っていると思いますが、顕微鏡で見るとマスクには無数の穴が空いています。その大きさはおよそ5マイクロメートル、飛沫はこれ以上(ウイルス自体はもっと小さい)の大きさなのでマスクをしていれば、ウイルスがこびりついた飛沫が口や鼻から入ることをある程度は防げると思います。

ただし、マスクは正しく装着することが大事です。一見、口や鼻を押さえているようであっても鼻の横や頰がうまくフィットしていなければ効果が落ちてしまいます。鼻のところにワイヤーがある場合は鼻に合わせて曲げているか、顔の大きさに合ったサイズで横に隙間ができていないかを確認してしっかり装着しましょう。

どうしても不織布マスクが手に入らないという状況が続く場合には、何もしないよりは多少目が粗くなってもガーゼ(布)マスクをすることをおすすめします。

マスクには接触感染を減らすという役割もあります。手洗いやアルコールによる手指の消毒を意識している人は多いと思いますが、顔は常時覆っているわけにはいかず外気に触れています。人はだいたい1時間に20回ほど無意識に顔を触るといいますから、せっかく手を清潔にしてもウイルスのついた顔を触ってしまえば、手にウイルスがつくことは十分にあり得ます。

マスクの脱着時もマスクの外面に触ってしまったらいくら手を洗っていても無意味です。外すときやズレを直すときは耳のゴムかマスクのへりの部分を持つようにしましょう。食事などで外したマスクをもう一度装着する場合には、自分の口が当たる内側を清潔に保ち、机などに置く場合も内側を伏せるなどの配慮が必要です」。

doctor_20200415_02.jpg画像素材:PIXTA

── 即効性は期待できないかと思いますが、自己免疫力を上げる食べ物などがあれば教えてください。

「日ごろからウイルス感染症に負けないように免疫を高めるような食事に気をつけておくことは重要ですが、新型コロナウイルス感染症が真っ盛りの中で、今これを食べれば免疫が高まり、明日からの感染が予防できるという即効性が高いものは残念ながら思い浮かびませんね。

ただ逆に、免疫力を落としてしまうような行動は避けるべきです。例えば、過食や過飲酒によって腸に負担をかけて免疫力を下げてしまったり、寝不足など生活リズムが乱れたり運動不足によっても免疫が低下することがあります」

── 家の中に引きこもっていると運動不足になりがちですが、何か良い解消法はありますか?

「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには外に出ないでおうちにいることが重要ですが、そうした日が長く続くと運動不足に陥ってしまい、運動機能が低下してしまいますね。

とくに高齢者の方では、1週間も横になっていると筋力は約15%減り、3週間では半減するともいわれています。寝てばかりではないとしても、動く機会が少なくなれば筋力は確実に低下します。そして衰えてしまった筋肉はこの何倍もの時間をかけないと回復しないのです。この感染症が終息して、ようやく普段の生活に戻れるとなったときに体が動かなくなってしまう恐れもあります。

そうならないためにお家の中でも、朝、昼、晩と積極的に体を動かしてください。ラジオ体操やテレビ体操のような柔軟体操は気分転換にもなり、良いでしょう。歩行能力を維持するには下肢の筋肉や骨が丈夫でなければなりません。そのためにはスクワット運動やかかと落としが効果的ですね。

さらに、立ったままテレビを観たり、歩きながら音楽を聴いたりと、座っている時間を減らすように心がけるだけでも筋肉の衰えを防止できます。また、一人での散歩やジョギングは感染リスクを高める外出には該当しませんから続けてください。

庭やベランダでひなたぼっこすることも、免疫にかかわるビタミンDの産生を高めるので良い習慣でしょう」。

── インフルエンザのように、来年以降も流行する可能性はありますか。

「可能性はあると思います。新型コロナウイルスは今回我々が初めて目にするウイルスなので、わからないことが多いですが、感染はしばらく続くと考えて用心したほうがいいでしょう。

一般に多くのウイルスは温度と湿度が高くなると活動しにくくなり、弱まって死滅していきます。インフルエンザウイルスも流行期は冬の、気温が低く乾燥している時期であって、夏場にないとは言えませんが少なくとも流行はしません。

新型コロナウイルスもそうしたウイルスであるといいのですが、タイやシンガポールのような高温多湿の地域でも感染者が増えているという報告を聞くと、インフルエンザのように季節性で夏になると収まってくれるといった類のものではないかもしれず油断できません。しかし、新型コロナウイルスに対するワクチンや有効な治療薬も近いうちに手に入りそうだという明るいニュースもあります。

人類はこれまでも天然痘やペスト、スペインかぜ、SARS(重症急性呼吸器症候群)などの恐ろしい感染症に立ち向かい、犠牲を払いながらも知恵と努力で克服してきました。新型コロナウイルスは私たちの前に初めて現れた難敵ですが、これまでに多くのこともわかってきています。こうした新しく正確な情報を取り入れてパニックになることなく、繰り返しなりますが、何より正しく恐れて、適切に行動しましょう」。

── 中山先生、ありがとうございました。

【中山久德医師 プロフィール】
1965年 東京都生まれ。1988年 早稲田大学商学部卒業 1996年 国立山形大学医学部卒業 東京大学医学部付属病院物療内科(現、アレルギーリウマチ内科)入局
東京大学医学部付属病院、東京都立駒込病院アレルギー膠原病科を経て国立相模原病院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科医長
2012年 そしがや大蔵クリニック開業
内科総合専門医、リウマチ専門医、骨粗鬆症認定医

※この記事は中山久徳医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った中山先生も出演する「主治医が見つかる診療所スペシャル【揚げ物の裏ワザ&家族が見つけた命の危機】」(4月16日木曜夜7時58分)。

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