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93歳の渋谷円山芸者・小糸姐さんに聞く”芸者という仕事”...人生の哲学。東京ローズとの気になる関係

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テレ東プラス

2022.2.12

――鈴子さんにお伺いしたいのですが、最近の弟子入り事情はいかがですか?

鈴子「最近は、応募があってもお断りしています。もう10年、新しい弟子はお迎えしていません。円山町に料亭が1軒しかないので、働ける場所がないでしょ。だからお願いされても、お迎えできないのです。
芸者になるには時間がかかるので、お座敷が減ってしまっている今、育てることすらできない。もしどうしてもやりたければ、お座敷が多い他の花柳界に行きなさいと言っています。今いる円山芸者の仕事や生活を成り立たせるだけで手一杯なので、この方針はずっと変わりません。円山芸者は、4人で十分です」


小糸「綺麗な子や三味線が弾ける子も多いんですよ。だけどお座敷で通用するかというと、話は別。三味線もただ弾ければ良いというものではないですし、一人前になるまでには、かなり時間がかかりますからね」

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geisha_20220213_04.jpg▲お座敷で人気の三吉さん。悩みや愚痴を笑顔で受け止め、ほんの1時間程度の交流だったが、癒しをいただいた記者(笑)。

――お2人にとって、円山芸者はどんな存在ですか?

小糸「同じ日本人だし、運命共同体みたいなものね」

鈴子「たった4人しかいないのに、ケンカなんかしたら解散だからね(笑)」

――コロナ禍でのご苦労があれば教えてください。

鈴子「だんだんお座敷は少なくなっていましたが、コロナ禍になってから、より減ってしまいました。例えば4月は新年会シーズンなので、例年ならお座敷がありますが、キャンセルが増えてしまいましたね。もし弟子を抱えていたら、より大変でした。4人だからこそ、なんとか生き残っています」

――小糸さんが芸者のお仕事で大切にしていること、やりがいを教えてください。

小糸「芸者はあっちにもこっちにも目がないとダメ。あらゆる場所に気を配って、気がついて、その場を切り盛りする。お作法はいろいろあるけれど、芸者はサービス業だから、とにかくお客さまを第一に。お客さまが美味しいものを食べて飲んで、私たちの芸を見て喜んでくださる。私たちはお客さまに喜んでもらうために、唄や踊りのお稽古を頑張る。これ以上に楽しいことはないし、こんなに良い商売は他にはないですよ」

――鈴子さんが一番大切にしていることは?

鈴子「芸者としてのポジションを維持し、古典を守っていくこと。街はどんどん変わっていくけれど、私たちは変わらず、伝統を守る。私は、時代の流れで円山町に若い人が増えるのは、良いことだと思います。和芸が見たければ、若い人もどんどん円山町で遊んでほしい。だけど、私たちが若い人たちに合わせる必要はない。私たちはお座敷のプロ集団として現状を維持していきますが、本当のところを言うと、良いものがなくなったらもう終わっていいの。拙劣なものが残ってもしょうがないでしょ? だからもし、小糸さんがどこかでおっ死んじまったら、もうおしまい!(笑)」

小糸「えー、うふふ」

鈴子「小糸さんのように、この年齢まで元気で現役の方はもう少ないんですよ。だから、観に来るなら今のうちですよ(笑)。小糸さんは本当に頑張っていらして、日本の花柳界も元気をいただいています」

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――鈴子さんから見て、小糸さんの魅力は?

鈴子「私はずっと惚れてますから。もう30年以上の付き合いで、親子以上に長い関係です。何かあったら小糸さんしかいないといつも思っていますし、小糸さんの唄があって、私が踊る。それはすごく光栄なことです。
基本的に、芸に関して小糸さんからはあまり言われませんが、叱る時は怖いですよ! でも、そこがいいところ。『言えばわかるだろうな』と思うからこそ叱ってくださる。着付けなどに関しては、『鈴ちゃん、襟はもっとこうだよ』と直してくれたり…。やはり芸者は身だしなみが大事ですし、ほんのちょっとの違いで変わるので、これは本当に有難いことです。“江戸前”のしきたりに関しては、うるさく教えてくれますね」

小糸「『うるせぇなぁ』と思ってる?(笑)」

鈴子「思ってないわよ、嬉しいのよ。私のことをちゃんと見てくれてるから…ありがたいです」

――人生の先輩としてお伺いしたいのですが、今の日本に思うところはありますか?

小糸「そうねぇ…あまり深くは考えないわね。そんなに煩わしく考えず、いいことを考える。くよくよ考えたって、どうなるものでもないでしょ? だから、それぞれが今の商売を一生懸命やればいいの。私、見てみぬふりが上手なのよ」

鈴子「お座敷では、芸者が政治の話をするのはタブー。芸者は語らないものなんです」

――本当に元気な小糸さんですが、なにか健康法はありますか?

小糸「ないない! タバコも毎日吸うし、特別なスキンケアもしない。テレビでよく見るコラーゲンやサプリとか一度も飲んだことがない。腸が少し弱いけど、大きな病気もないしね」

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鈴子「小糸さんが本当にすごいのは、三味線を持った時。それはぜひ、円山町に来てご自身の目と耳で確かめていただきたいですね」

――最後に。お2人にとって“芸者”とは?

小糸「芸者は“芸の者”と書く。だからもちろん芸がなきゃダメだけど、芸者って“精神”なんじゃないかな。私たちにとってお座敷は戦場ですし、何においても気持ちがないと、絶対にダメ」

鈴子「真摯な気持ちで向き合うことですね。毎回古典の芸をするけど、必ず真摯な気持ちで音色や踊りを伝えています」

小糸「私は、生まれ変わっても芸者! 本当に良い仕事ですよ。綺麗な着物を着て、お客さまがいて、時々いい男が来て、美味しいお酒をいただいて…。大戦下のことを思えば、こんなに結構なことはない」

鈴子「小糸さんは、生きること=芸者であること。ずっとそのままで、私たちのそばにいてほしいです」

小糸「私は100歳まで生きるつもりですから」

鈴子「100歳なんて言わないで、世界最高齢の更新を目指してね。女性にとって、こういう方が現役でいらっしゃるというのは、本当に励みになります」

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※お座敷のご予約などはこちらから TEL&FAX:03-3496-5418

【撮影協力】たか田(渋谷・円山町)

geisha_20220213_08.jpg▲宮崎より朝引き直送新鮮鶏を特製の塩で焼き上げる「鶏ミックス焼き」、新鮮レバーを強火で炙った「レバテキ」、熊本直送「鮮馬刺し」などが楽しめる円山町の人気店。焼酎・日本酒も豊富に揃う。

(取材・文/みやざわあさみ)

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。

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