恋愛結婚はオワコン!どうする少子化?問題解決のための実現可能な提案

令和の今、“恋愛結婚”はもう古い! 「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)などでもおなじみの世代・トレンド評論家の牛窪恵さんが、新著『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)で新時代の結婚の形を大胆に提言。インタビュー【後編】では、マーケティングのエキスパートである牛窪さんならではの視点で提言する“共創結婚”という概念についてうかがいます。

※【前編】では、結婚しない今の若者たちを取り巻く環境と現状についてのお話を公開中。

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“共創結婚”という考え方


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――著書『恋愛結婚の終焉』で、新しい結婚の形“共創結婚”を提言していらっしゃいます。 “共創”とは思いを共有するパートナー、仲間と共によりよい社会や未来を作り上げていこうとすることで、マーケティング由来の考え方だそうですが、恋愛結婚を超えた共創結婚を目指すために必要なこととは何でしょう?

「恋愛して結婚し、出産するのが幸せだという三位一体の概念“ロマンティック・ラブ・イデオロギー”は、ヨーロッパでも日本でも、産業革命や高度経済成長の時代に、“結婚したら男は外で熱心に働き、女は家庭を守るべき”という意識を社会に根付かせるべく生まれ、機能してきたように思います。でも、今は共働きが全体の7割を超え、若い世代では8割に近付いています。女性は男性に守ってもらう代わりにただ家を守り、子供を産み育てるだけでいいという時代ではなくなっています。イクメンを求められる男性もそうでしょう。

国の第三者機関の調査(※)では男性の48%が女性に経済力を求めています。また、ある民間の調査では、結婚相手の女性に300万円以上の年収を求める男性が、54%にのぼります。女性が300万円以上稼ぐとしたらパートでは難しく、多くがフルタイム勤務でしょう。それなのに、共働きの男性の家事育児時間は、この20年で1日あたり18分しか増えていません。フルタイムで働いた上に家事育児もやらなくてはならない女性は、疲れ切っているのです。
※2021年 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」

国としては人口が減少していますから、マンパワー確保のためにも女性に働き続けてもらわなければならない。だとすれば、男性側の意識を変える、そのためには企業の意識改革も必要です。本書でジャーナリストの浜田敬子さんが指摘されているように、正社員の男性ならいくら残業させてもいいと考えるような企業風土は、根本から変えていく必要があります。

そうした現状を、若い世代は見ています。“結婚するとあんなに大変な思いをするのか”と思えば、結婚・出産への憧れなど持つことができない。社会、特に企業が変わって、働き方を変えていかなければならないと痛感しています」

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――女性側にも、経済力に家事分担に自分への気遣いに…など男性に多くを求めすぎてしまっているという問題もあるかもしれないですよね。

「社会学者で中央大学 文学部の山田昌弘教授は、経済力や社会的地位の上昇を目的に、女性が経済力の高い結婚相手を選ぶことを“上昇婚”と定義されています。男女平等が進んでいるにもかかわらず、女性の上昇婚志向は50年以上も変わっていません。ほとんどの女性が、いまだに自分より収入が高い男性としか結婚したくないと思っているのです。

いまや20代から30代前半ぐらいまで、男女の年収の差はさほど大きくありません。賃金も含めて社会が男女平等に近づくほど、女性にとって自分より収入が高い相手は減っていく。つまり、ターゲットが狭くなるわけです。女性も、男性に家事育児の分担を強く求めるのであれば、経済面でも、ある程度平等と考えて、年下や自分より年収が低い相手とでも、頑張って一緒に稼いで、共に切磋琢磨してアップデートしていければいい、という共創結婚の概念を持って欲しい。みんながみんな、高年収など条件のいい人を選ぼうとしても、要領や条件がいい人たちだけが結ばれて、そうではない、のんびりした穏やかな人たちがあぶれる社会になっていくのです」

――あぶれる…耳が痛くなるようなご指摘ですが、本当の意味で自分にふさわしい相手を求めれば「結婚したいのに相手がいない」と嘆くことはないのかもしれないですね。

「多様性の時代、一番大事なのは他人との比較ではなく、自分が重視する価値観との一致だと、多くの皆さんが分かっているでしょう。だとしたら、相手の年収にばかりこだわらなくてもいいはずです。いくら稼ぐかより、稼いだお金を堅実に使えるか、共にその財を活かし、育んでいけるかどうかが大事なのではないでしょうか。

私も結婚する前に、夫の年収は聞きませんでした。父親がテレビ局の元局員で、かなりの高年収を得ていたのですが、毎月一人で驚くほどの額を使ってしまい、家に入れてくれるお金は本当に微々たるものだったのです。子どものころは外出しても母と二人でカフェにも入れず、牛乳スタンドでジュースを飲む程度しかできませんでした。

夫は結婚後、外資系企業に転職し、たまたま年収は上がっていきましたが、リストラされそうになった時期や、うつになり会社に行けなくなった期間もありました。人生何が起こるか分かりません。でも、お互いに力を合わせて補完し合い、堅実に貯めていければリスクヘッジできます。

結婚においては何よりも“サステナブル”=持続性が重要なポイントです。特に子供を産んだ後は、できれば離婚しない方がいい。私の親は熟年離婚しましたが、それでも多少は私自身、「私のせいかも」と傷つきました。ただ、母は離婚後のほうが幸せそうで、父も私を大切に思ってくれている実感はあるので、まだ救われています。離婚してはじめて、二人は適度な距離がとれ、パートナー感覚の「共創結婚」に至ったのかもしれません。

恋愛は性との結びつきが強く、本能的に種(遺伝子)をまく側の男性はできるだけ多くの女性と交わろうとする、というのが生殖の根底にあります。そのため、激しい恋愛は本能的に、4年以上続かないようにできている。つまり、恋愛の延長線上で結婚を考えるのは、持続性と相反するわけです」

多様性の時代の結婚・出産


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――新著では、少子化対策として、ここまでうかがってきた概念の変革だけでなく、実質的な対策として卵子凍結などの生殖医療や養子縁組制度の議論についての提言もされています。

「結婚すれば子どもができる(妊娠する)のが当たり前、という時代ではないことは、不妊治療するカップルが増えたことからも明らかです。男女の精子や卵子の状態がどうかだけではなく、産むタイミングの問題もあります。

10年ほど前から、女性が会社の上司に子作りしていいかと相談するという話も聞きます。また、映像の制作会社の男性は、仕事先のロケ現場まで妻がやって来て、周囲に「排卵日だから、今晩は邪魔しないでくれ」と協力を仰いでいました。これは極端な例ですが、共働きだと、それぐらいしなければ子供を産むタイミングがはかれない人が、決して少なくないのです。

バブル期までのように、当たり前のように子供を産める時代ではないということを、社会で共有してもらいたいですし、女性の卵子凍結のガイドラインも含めて、真剣に議論してほしいです。健康な男女、とくに未婚者に関する精子バンクや卵子凍結はまだ、国や社会が正式に推奨してはいません。ですが、今はインターネットで精子を売買できる時代になっています。ある報道番組で取り上げられた事例では、ネット上で知り合った男性から精子を買い、100円ショップで購入したプラスチックケースに入れてそれを持ち帰り、自分で膣に注入して妊娠、出産する女性の姿が描かれていました。

結婚はしてもしなくてもいいけれど、どうしても子供は欲しいと願う女性たちの一部が、既にSNSや海外の精子バンクで精子を購入し始めているのです。そんな形で精子を得て妊娠するのは、どう考えても健康上のリスクが大きい。こうした一連の妊娠・出産に関するガイドラインを、社会として真剣に議論しなければならない時期でしょう。

性的マイノリティのカップルが第三者の精子・卵子を用いた生殖医療で子供を持つケースも出現していますが、現行の法律では、そこでできた子にはどちらか一方しか親権を持てず、養子縁組のような扱いになります。養子縁組制度については他にも考えるべきことが多いですが、出生率の向上だけでなくLGBTQカップルとその子の人権を守る上でも、法を見直す必要があるのではないでしょうか」

――時代に追いついていない制度がたくさんあるので、それを検討していかなければいけないですね。

「今の若い世代、とくにZ世代がジェンダー平等を強く意識していることは、複数の調査結果からも分かっています。働き方の件と同じく、若い人たちは上の世代の言動を見ています。社会が時代に合わせた制度や概念を取り入れれば、今よりは結婚に希望が持てるようになるでしょう。同時に、「恋愛力がないと結婚できない」「異性とでなければ生活を共にできない」といった概念からも、徐々に解放されるのではないでしょうか。

同性婚や選択的夫婦別姓を認めない、などの旧態依然とした婚姻制度を維持しようとすると、この国に失望した若い人たちが海外に出て行ってしまう恐れさえ感じています。ただでさえ少子化なのに、優秀な人材がどんどん海外に流出する。それを、ただ指をくわえて見ていて良いのでしょうか? 上の世代が変わっていかないと、やがてこの国は劣化が進むだろうと、非常に危惧しています」

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――お話をうかがってきて、少子化対策はすべての人が自分事として考えていかなければならないと実感しました。

「実は、今回の本には“共創結婚”とは具体的にどういうものなのか、について、あえて書いていません。本を読んでくださった皆さんと、このあとご一緒に、どうしていくべきなのかを議論できたらと思っています。

私も昭和の人間ですから、この本を書きながら出版プロデューサーの干場弓子さんに何度も怒られ、原稿を書き直しました。『牛窪さんも結局、バブル期までの『男たるもの』『女らしく』や、トレンディドラマの恋愛感覚から抜け出せてないよね』と(笑)。若い世代の方々、あるいは私と同じぐらいの親世代の方々が、令和の時代の恋愛や結婚をどう考えているのか? 皆さんの意見を聞かせていただきつつ、新しい時代の結婚のあり方をこれから社会全体で考えていきたいのです」

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新著「恋愛結婚の終焉」(光文社新書)

【プロフィール】
牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
東京生まれ。世代・トレンド評論家。立教大学大学院(MBA)客員教授。著書を通じて “おひとりさま”“草食系男子”などの言葉を広めた。近著は「恋愛しない若者たち」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「若者たちのニューノーマル」(日経プレミアシリーズ)、「なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?」(共著/光文社新書)など。「サタデーウオッチ9」(NHK総合)「ホンマでっか⁉TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビの番組コメンテイターとしてもおなじみ。
マーケティング会社・インフィニティ
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(取材・文/伊沢晶子)
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