元国連専門機関職員がズバリ!“インバウンドそして日本の現実…”「日本の変化は特に顕著」

2024年のインバウンド(訪日外国人旅行者)数は、前年2023年比47.1%増の3687万人と過去最高を記録。円安などを背景に旅行支出も伸び、こちらも過去最高の8兆1395億円となった(※日本政府観光局調べ)。
国内で外国人を見かけるのが当たり前になった昨今だが、その実態はどうなのか? 世界の動きとは?
「テレ東プラス」は、世界のニュースを忖度なしの切り口で分かりやすく解説する「世界のニュースを日本人は何も知らない6 -超混沌時代の最先端と裏側-」(ワニブックス【PLUS】新書)の著者で、元・国連専門機関職員の谷本真由美さんを取材。令和7年目を迎えた今、“インバウンドと日本の現実”について話を聞く。
【動画】“日本人の当たり前”商品、世界の国へ持って行くとどう評価される?
実質的な経済としては、20~30パーセントほど値上げしている
――谷本さんは、国連機関やインターネットベンチャー、外資系金融機関での勤務経験があり、ご家族とイギリスで暮らしています。直近は、いつ日本に戻られたのでしょう。
「2024年末に帰国して、年明け1月まで日本にいました」
――谷本さんの著書「世界のニュースを日本人は何も知らない」シリーズの第1弾が2019年10月に発売され、その数カ月後、世界的にパンデミックが拡がりました。
「そうですね。ここ1~2年はイギリスと日本を行き来する生活を送っていますが、コロナが収束するまで、約3年間はどこにも行けませんでした。2022年の夏にやっと帰国することができた感じです」
――ここ数年、海外から帰国した際に感じる“日本の変化”はありますか?
「日本に戻って来る度に、物価の上昇に驚かされます。3年ぶりに帰国した際も感じたことですが、人々の生活もそれ以前とは大きく変化していて、物価の上昇が国民を直撃している。イギリスで長く生活していることもあり、日本の変化は特に顕著だなと感じています」
――谷本さんは一児の母でもありますが、主婦目線で、特に値上がりを実感するものは?
「すべて値上がりしている印象ですが、中でも野菜や果物、輸入品も高くなったと感じました」
――一方、イギリスの農産物の価格はいかがでしょう。
「イギリスでは農業政策が物価に与える影響が大きいため、キャベツや玉ねぎ、にんじんなど、基本的な野菜の価格は比較的安定しています。日本は農産物の品質が高い反面、収穫量が少なく価格が高い。去年から続く米不足もそうですが、根底には、日本の農業政策に問題があると考えています」
――物価の上昇は、一般家庭に深刻な影響を及ぼしています。
「私の両親のような年金生活を送っている世代も、台所事情が厳しいと聞いています。食費の負担が増して、最低限必要なものしか購入できない家庭が増えているようですね。
子育て世代もそうで、共働きの家庭が増加している一方で全体的な賃金はそれほど上昇していないため、生活費や学費の負担に苦しんでいる方も多いのではないでしょうか」
――スーパーに並ぶ食材や日用品は軒並み高騰。そのあおりを受けて、外食産業も次々と値上げしています。
「これまで日本は人件費の抑制や企業努力を重ねて何とか低価格を維持してきましたが、さすがに限界でしょうね。店員さんが馬車馬のように働く代わりにお酒も食べ物も安い…それはもうあり得ないこと。物価が上昇する中、値上げするしかないと思います」。
――さらに先ほども話に出た、「令和の米騒動」が追い打ちをかけていると。
「そうですね。この間、帰国してふと感じたのは、回転寿司チェーンのシャリについての違和感でした。“明らかに、以前よりシャリの量が少ないくないか”と。通常のシャリが『以前の“シャリ少なめ”くらいの量じゃない?』と(笑)。ヨーロッパで外食する場合、値段こそ高くはありますが、そこまで量は減っていないかな…という印象なので驚きました」
――弁当を上げ底にするなど、メーカー側の苦肉の策も話題になりました。
「ポテトチップスやカップ麺も、あからさまに量が減っていますよね。子どもですら『これ、少なくなってる!』と気づいたくらい(笑)。
価格は据え置きでも、以前は100グラム入りだったお菓子が80グラムになっているということは、値上げしたことと同じ。実質的な経済としては、20~30パーセントほど値上げしたんじゃないかと実感しています」
――他にも、谷本さんが、海外に長く住んでいるからこそ気づいた日本の変化はありますか?
「品質の低下も著しいと感じています。もちろんしっかりしている製品も多いですが、特に衣類に関して言うと、前よりも素材が薄く劣化しているようなものも。
以前であれば、同じ価格で質のいい綿100パーセントの製品が買えたはずなのに、ポリエステルなどの化繊の割合が増えて、下手をすると化繊が全体の80~90パーセントくらいになっているケースもある。私は肌が弱いので、日本の安くて優秀な肌着を身につけていましたが、本当に残念です」
中国共産党による情報の遮断や若い世代の壊滅的な失業率の高さは東アジア情勢に大きく影響する
――日本のメディアが海外について報じるのは「インバウンド復活」など、国内から見たニュースが大半。テレビでは毎日のように“日本のことが大好きな外国人旅行者が大勢押し寄せている”という映像が流れています。谷本さんはこのような状況を、どう捉えていますか?
「もちろん、心の底から日本のことが好きで興味を持っている人もいると思いますが、ほとんどの外国人旅行者は、日本の物価が安く、クオリティーが高いから来ているというのが実情でしょうね」
――谷本さんは、このテーマについても、シリーズ6の第1章「世界の『最新ニュース』を日本人は何も知らない」で書かれています。
「20~30年ほど前のことですが、日本人が物価の安いフィリピンやプーケット、マレーシアあたりに行きまくっていた時がありましたよね。これと何ら変わらないと思います。
ここ最近はテレビなどの情報に加え、インターネットやソーシャルメディアが発達しているため、“日本がいかに激安な国なのか”が世界中にバレてしまったのかなと」
――かつての日本は、世界的に見ても物価が高い国の一つでした。
「そうですね。アメリカやヨーロッパから距離があり、航空券も高かったので、訪れるのは富裕層の人たちに限られていました。しかしコロナ禍以降、ここ数年の間に訪日している人たちは、ただ単に“安い”という理由で旅行先に日本を選んでいるような感じがします。
今の日本は、彼ら旅行者からすればホテルも外食も娯楽も自分の国の半額から1/3くらいの感覚。しかも日本のものは安全で清潔、お酒も食べ物も安くておいしい。こんな夢のような国に来ないわけがありません」

――「世界のニュースを日本人は何も知らない」第1弾の発売から数カ月後、日本はコロナ禍となり、“ウィズコロナ”から“アフターコロナ”へと転換して約2年。
激動の約5年間を見つめてきたシリーズですが、谷本さんはこの間の世界的な変化を、どうご覧になっているのでしょう。
「1990~2000年代の初頭まで盛んに言われた“グローバリゼーション(国の枠組みを超えて、文化、経済、政治などが地球規模で拡大していく現象)”というナラティブが否定されるような出来事が次々と起こっていますよね。
20年ほど前までは、グローバルに人や物が移動して世界的に発展することが好ましいとされていましたが、今は全体的に保守化している。
コロナの拡大やロシアがウクライナに仕掛けた戦争、現在の第2次トランプ政権といった出来事が起きて、元々保守的だったヨーロッパが、さらに“国内第一”という空気になってきたことが一番の変化だと思います」
――シリーズ6の第6章「世界の『EU極右化事情』を日本人は何も知らない」でも、取り上げています。
「第6章で書いた“欧州における保守系と極右の台頭”ですね。これまで左派が強かった国々でも顕著な傾向にあり、EUに加盟していないイギリスを除いたほとんどのヨーロッパの国で極右の政党が躍進するなど、驚くべき結果になっています。ここ数年でこういう事態が起きたという事実は、“我々が歴史の大きな転換期を目撃していること”を意味します」
――「世界のニュースを日本人は何も知らない」は、硬軟織り交ぜた情報やニュースのチョイス、谷本さんの忖度のない切り口が人気となっていますが、最新シリーズの見どころは?
「もう一つの見どころとしては、“中国におけるバブル崩壊がかなり深刻な状況である”という実態ですね。中国共産党による情報の遮断や若い世代の壊滅的な失業率の高さは東アジア情勢に大きく影響するため、ぜひ注目していただきたい部分です」
(取材・文/橋本達典)
▲「世界のニュースを日本人は何も知らない6 -超混沌時代の最前線と裏側-」(ワニブックス【PLUS】新書) 【谷本真由美 プロフィール】
著述家。元国連職員。1975年、神奈川県生まれ。
シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。
ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。
X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
趣味はハードロック/ヘビーメタル鑑賞、漫画、料理。
著書に『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)、『日本人の働き方の9割がヤバい件について』PHP研究所)、『不寛容社会』(ワニブックスPLUS新書)、『激安ニッポン』(マガジンハウス新書)など多数。
6月10日(火)には、『世界のニュースを日本人は何も知らない BEST版』(ワニブックスPLUS新書)が発売される。
※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。