憧れの国宝『紅白梅図屏風』に「オーマイガッ」尾形光琳の屏風絵の技法を学ぶ:世界!ニッポン行きたい人応援団
今回は、ドイツに住む外国人の来日の様子をお届けします。
【動画】「世界!ニッポン行きたい人応援団」最新回
国宝を再現した日本画家に師事
紹介するのは、ドイツ在住の「屏風」を愛するベンジャミンさん。
晴れの舞台を彩る装飾品としてお馴染みの「屏風」。「風を屏(ふせ)ぐ」という言葉が由来で、屋内の隙間風を防ぐ道具として使われていましたが、戦国から安土桃山時代に武将の権力を示す美術品として重宝されるように。
近年は海外でも注目され、ニューヨークのオークションでは、当時の為替レートで約3億9000万円で落札されたことも。
ニッポンの屏風に憧れ、7年前から独学で作り始めたベンジャミンさん。骨組みから自作し、アクリル絵の具で絵を描いています。さらなる探究のため、インターネットで見つけた日本人と、屏風についてメールでやりとりもしているそう。
ベンジャミンさんが屏風の虜になったのは、江戸時代の画家、尾形光琳作の国宝『紅白梅図屏風』がきっかけ。憧れの尾形光琳に一歩でも近づくため、ニッポンで本格的な技術を学ぶ必要があると話します。
これまで、本業のオペラの指揮や作曲の仕事が忙しく、ニッポ
ンにはまだ一度も行ったことがないそうですが、60歳を前に第二の人生として、屏風作りに一層力を注いでいきたいと願っています。
そんなベンジャミンさんを、ニッポンにご招待! 念願の初来日を果たしました。
今回の大きな目的は、憧れの尾形光琳の技法を学ぶこと。そして帰国後、これまでにない新たな作品を描きたいそう。
向かったのは、静岡県熱海市。何も知らされないまま、閉館後の「MOA美術館」へ。

ここで、ウェルカムサプライズ! 憧れの『紅白梅図屏風』を目の前にしたベンジャミンさんは、「オーマイガッ!まさか本物が見られるなんて!!」と大感動。
「20年前からずっとこの作品を愛されていると伺って、非常に感動しています」(学芸員の米井善明さん)。
はるばるドイツからやってきたベンジャミンさんにたっぷり楽しんでほしいと、閉館後に鑑賞の時間をつくってくださいました。
左の白梅は年老いた老木、右の紅梅は生命力溢れる若い木ともいわれる『紅白梅図屏風』。「まるで屏風全体で人生を表現しているようです」とベンジャミンさん。国宝を心ゆくまで鑑賞しました。
「MOA美術館」の米井さん、本当にありがとうございました!
続いて、屏風絵の技法を学ぶため、岡山県吉備中央町へ。迎えてくださったのは、森山知己さん。屏風に深く精通する数少ない日本画家です。
実は、ベンジャミンさんが屏風についてメールでやりとりをしていた相手が森山さん。ベンジャミンさんが来日すると聞き、快く受け入れてくださいました。

森山さんの案内で「岡山県立美術館」へ。見せてくださったのは、森山さんが『紅白梅図屏風』を再現した作品。長年の研究で尾形光琳が使った材料や技法を推測し、約300年前に描かれた当時の状態を再現したそう。
「光琳の絵を実際に描いてみることで、たくさんの技術や日本の文化など大切なことを経験しました」(森山さん)。そこで、『紅白梅図屏風』をもとに、屏風絵の極意を教えてくださることに。
まずは、「流水の模様」から。光琳はリアルな川の流れではなく、渦模様で流水の動きや淀みを表現。この大胆なデフォルメこそが、光琳の真骨頂なのです。
森山さんのアトリエで、金箔と銀箔を貼った屏風に絵を描くことに。本番用の屏風は一つしかないため、失敗は許されません。紙で練習し、いよいよ屏風に直接描いていきます。
使うのは、膠とミョウバンを水に溶かした透明なドーサ液。透明なのでくっきりした模様にはなりませんが、森山さんは「次のステップがあります。それはマジックです」と、屏風を持って外へ。

小さなビニールハウスの中に屏風を入れ、硫黄の粉を置き加熱すると、ベンジャミンさんは「まさにマジックです」と驚き! ドーサ液が塗られていない銀箔が、硫黄による化学反応で変色。美しい流水の模様が浮かび上がりました。
続いて学ぶのは、「大胆な構図」。川の隣に梅の木を描きます。こちらも失敗は許されないため、先に構図のアイデアを練ることに。
悩むベンジャミンさんに、森山さんは「光琳の絵を見てみましょう」とアドバイス。よく見ると、川の流れと木の生え方が垂直となる構図に。さらに、木をあえて画角からはみ出させることで、その大きさを想像させる工夫も。これらのテクニックが、ダイナミックな印象を与えるそう。

さらに、折り目を利用して枝に立体感を出す技法も。屏風だからこそできる技に、ベンジャミンさんは感動。構図が決まり、翌日、いよいよ屏風に梅の木を描くことに。
屏風にまつわる職人技に感動
ベンジャミンさんは、屏風絵に使う筆の作り方を知るため、筆の生産量全国トップの広島県熊野町にも訪れていました。
お世話になるのは、日本画筆専門の工房「松月堂」。試し書きをさせていただき、一度水をつけると長く描き続けられることに驚き! その作り方を見せていただきます。
まず、上質な筆にするために毛を選別。さらに筆作りではブレンドも重要で、「松月堂」では約200種類の毛を使い分け、400もの配合レシピがあるそう。

6種類の毛を混ぜる工程を見せていただくと、まずは毛を重ねて束に。3つに分けて一直線に薄くのばしたら、水を付けて折り返し、もう一度毛の束に。これが「練り混ぜ」と呼ばれる工程です。
筆に抜群の水含みを持たせるため、この工程を多い時で20回ほど繰り返し、均一に混ぜます。ベンジャミンさんも挑戦しましたが、毛の束はほとんど広がらず……。
混ぜ合わせた毛は、筆1本分の量に取り分け、衣毛と呼ばれる上質な毛で包みます。さらに糸で縛り、熱したコテを当てて接着。軸に取り付けたら完成です。

「こんなにも手間をかけ、筆を作っているなんて」と職人技に感動したベンジャミンさん。お土産に「松月堂」の筆セットをいただきました。
「松月堂」の皆さん、本当にありがとうございました!
続いて向かったのは、京都。屏風などの表装を担う表具師、「弘誠堂」店主の田中善茂さんに、屏風を長持ちさせるための和紙の貼り方を教えていただきます。
ところが、残念ながら田中さんは前日に指を負傷。実演は、代わりに息子の健太郎さんが「浮け掛け」と呼ばれる工程を見せてくださることに。
ドイツでベンジャミンさんは大きな和紙を1枚貼っていましたが、健太郎さんは小さな和紙を何枚も。
善茂さんによると、1枚で貼ると和紙が縮む際に大きな力が加わり、作品が破れる原因に。小さく切った和紙を貼ると力が分散し、屏風が破れにくくなると教えてくださいました。
表具師の田中善茂さん、健太郎さん、本当にありがとうございました!
江戸時代の技法・たらしこみを習得
そして、いよいよ屏風作りは最終工程へ。最後に学ぶのは、「樹木の表現」です。
ベースとなる木のシルエットは墨でつくり、岩絵具で色を加えます。岩絵具とは、主に鉱物を砕いて作る日本画の絵の具。緑色の岩絵具を膠と水で溶き、先ほど墨で描いた場所が乾かないうちに上から置いていきます。
これは、江戸時代に見られた「たらしこみ」。重たい粒子の絵の具を上から垂らし、軽い粒子の絵の具を押し除けることで、独特の色のまざりや滲みを生み出す技法です。
たらしこみをした絵が乾くと、まるで樹木の表面のようなグラデーションが。
尾形光琳のさまざまな作品で、この技法が使われています。

ドイツではアクリル絵の具を使っていたベンジャミンさん。人生初、岩絵具と墨を使った たらしこみに挑戦。森山さんのアドバイスで、たらしこみの時に絵の具が動きやすいよう、水をたっぷりと使って描いていきます。
そして、緑の岩絵具でたらしこみを施し、ベンジャミンさんの『紅白梅図屏風』が完成。初挑戦のたらしこみで、老木の質感を絶妙に演出しています。
「光琳のさまざまな技術を知ることができて、最高の経験になりました」。

森山さんの評価は95点。「あと5点は、ベンジャミンさんがドイツでもっと絵を描くことを楽しみにしている分です」と話してくださいました。
森山さん、本当にありがとうございました!
帰国後、ベンジャミンさんは新たな作品作りに挑戦! 硫黄を加熱し、屏風に貼った銀箔に模様を。さらに、ニッポン滞在中に購入した岩絵具で、たらしこみも。

こうして、生命力あふれるブドウの木を描いた屏風が完成! たらしこみでブドウの葉の陰影を表現し、銀箔を硫黄で変色させ、まだらな幹の質感に落とし込みました。
最後にベンジャミンさんは「ニッポンの皆さんの協力のおかげで、屏風職人として一皮むけた気がします。この経験を活かして、屏風の魅力をドイツで広めていきたいです。ニッポンの皆さん、ありがとうございました」と語ってくれました。
ベンジャミンさん、またの来日をお持ちしています!
月曜夜8時からは「世界!ニッポン行きたい人応援団」を放送!
●群馬県の老舗「冨士久食堂」の大人気メニュー、生姜焼き作りのテクニックを学ぶ!
創業から60年継ぎ足されてきた秘伝のタレ、さらにご飯や美しい配膳方法まで定食の極意を全力で吸収!
●最高のおかずレパートリーを求めて全国へ!
京都では学生に愛されるチキンカツの秘密を知り、高知ではまるでフルーツのような新生姜のポテンシャルに大感動! さらに、亀有のメンチカツの秘密の製法を直伝される!
