「お客様は神様ではありません」衝撃の貼り紙は飲食業界への疑問から生まれた。和牛酒場「コンロ家」に聞く

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テレ東プラス

2018.12.8

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「お客様は神様ではありません。また、当店のスタッフはお客様の奴隷ではありません」。
その衝撃の張り紙がSNSで話題になったのは2018年の夏。

「おい、生ビール」1000円
「生一つ持ってきて」500円
「すいません。生一つください」380円

上記のようにスタッフに対する客の態度によって値段を上下させるという試みに、賛否の嵐が吹き荒れた。それが東京都内に5店舗を展開する和牛にこだわった酒場「コンロ家」だ。

コンロ家はなぜ、これほどとんがったお店経営を行っているのか。その裏に秘められていた想いと、気になる「お客様は神様ではありません」の真意に迫る!

「面白さの追求」が社員のやる気向上と商売繁盛の起爆剤に

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「私たちのコンセプトは、売れることより面白いこと。時にはアルバイトも巻き込んで会議を行い、面白いと思うことを自由に提案し合っています」

そう語るのは、コンロ家の副社長を務める蒲池章一郎さん。「たとえば、これもその一つです」と言って注いでくれたミネラルウォーターは、どこかで見たパッケージ。お肉の焼き方を案内するポスターも、なんともシュールな絵柄で描かれている。

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こうした斬新な取り組みを始めたのには、きっかけがあるという。

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「飲食業界で18年間働いてきて、ずっと非効率に感じていることがあって。それが、社員同士で行う月次の会議でした。今月の売上を振り返り、来月の施策を持ち寄って考える。でも、実際に良いアイデアを持ってくる人は稀にしかいません。飲食店の社員は経営を教わっているわけではないため、優れた企画を持ち込めというのが無理な話です」

そこで蒲池さんが考えたのが、「売れることより面白いこと」だった。

「いったん利益は度外視して、なんでもいいから面白い案を考えてこようと。すると、次から次へとアイデアが出るようになって。しかも、面白いことは議論を盛り上げるし、自分のアイデアが採用されたら社員のモチベーションも上がる。あれだけ元気のなかった会議が、一気に活性化したんです」

面白さの追求は起爆剤になった。社員のモチベーションアップは、お客の満足度にもダイレクトにつながる。当初は30~40代と考えていたターゲットも、20~30代の若者中心に切り替えた。平日の飲み会はもとより、デートや女子会に使われるケースも激増した。

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(メニューのなかには「人生想談」の文字も踊る。"相談"ではなく"想談"と命名しているところがユニーク)

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(「面白さを追求しすぎて、和牛のお店だとわかりづらくなってしまった(笑)」からと、牛柄のTシャツも飾った)

さらに蒲池さんは、こんな戦略も見据えている。

「どの飲食店も料理やサービスはオンリーワンを目指すんですよ。でも、空間でそれを目指すお店はほとんどない。居酒屋にしても、似通ったレイアウトのお店が多いですよね。ちょっとおしゃれで高級か、あるいは大衆的かという"上下の評価軸"しかない。これからは料理と同じくらい体験も大事なので、そのために"オンリーワンの空間"を目指しています」

その根底にあるのは、誰もが知る「あの企業」にも似たビジョンだ。

「僕は東京ディズニーランドが好きなんですよ。園内の壁の隅っこにキャラクターが描かれていたり、本当にディテールにこだわっていますよね。大げさに言えば、僕たちもテーマパークを目指したいと思っています。ふと視線を向けたら面白いものがあって、お客様も従業員も楽しめる。そんなお店づくり、最高じゃないですか」

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「お客様は神様ではありません」ジョークに秘められた想い

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そんなコンロ家だからこそ、「お客様は神様ではありません」の張り紙も面白さを求めて生まれたものだという。しかし、そこにはやはり業界歴18年の蒲池さんの想いもある。

「飲食業界に勤めていて思うのは、上から目線で接してくるお客様が多いこと。もちろん仲良くなってからフランクに接してくださるのは、この上なくありがたいことです。でも、初対面ならお客様である以前に人と人、一般常識として敬語で話すべきじゃないですか。あの張り紙ではシンプルに『敬語を使いましょう』と伝えたかったんです」

蒲池さんはかつて飲食の世界を離れ、サラリーマンも経験している。取引先とのやりとりは当然のように敬語で、飲食業界に感じていた疑問は確信に変わったという。そしてお店を出すとき、「従業員に嫌な思いをさせたくない」と思った。

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(自分たちを「ブラック企業」と称したクスリと笑える貼り紙も)

「でも、所詮は紙であり、ジョークですから。マナーの良くないお客様が一人でも減ったら御の字だと考えています」

そんな蒲池さんの想いに応えるように、近ごろコンロ家ではマナー違反者が減っているという。たとえば、悪酔いしてしまったお客も、友人や同僚が「あの貼り紙を見て」と冗談交じりに促すことで、「おっと、まずい」と笑いながら襟を正すケースもあるとか。もしかしたら"面白さ"は、人に意見を伝えるための有効なコミュニケーションになるのかもしれない。

ただ料理を食べるだけではない。豊富な樽ワインを飲み比べたり、ヘンなものを宝探し気分で探してみてもいい。コンロ家には、面白おかしい体験が待っている。


【取材協力】
「大衆和牛酒場 コンロ家 渋谷店」
住所: 東京都渋谷区渋谷2-6-8 ST青山ビル1F
電話番号: 03-6427-2718

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