大切な人との「死別の悲しみ」を乗り越えることはできるのか?

ライフ

テレ東プラス

2020.1.20

seitoshi_20200120_00.jpg画像素材:PIXTA

誰もが体験せざるを得ない「大切な人との死別」。そんな死別経験に苦しむ人々を支援してきたNPO団体が「生と死を考える会」です。こちらでは遺された者同士が率直に気持ちを話し分かち合う場や死生観について学ぶ教養講座を定期的に開催しています。大切な人を失って喪失感にさいなまれることは、長い人生の中で起こり得ること。そんな悲しみに捕らわれたときに、乗り越える方法はあるのでしょうか? 「生と死を考える会」の、理事長と事務局長にお聞きしながら探っていきます。

悲しみに寄り添い回復をサポートする"グリーフケア"とは?


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──「生と死を考える会」では、死別の体験をお互いに話し合う「分かち合いの会」や、死生観を学ぶ教養講座を開催されているそうですが、それらに参加することは、死別を体験した人の心のケアに役立つのでしょうか。

理事長「まず『分かち合いの会』についてお答えすると、役立つとは断言はできませんが、一定の効果はあると考えています。『分かち合いの会』は、専門的に言えばグリーフケアの一種。グリーフとは、直訳すれば深い悲しみや悲嘆という意味で、大切な人を失ったときに起こる身体上・精神上の変化を指しますが、グリーフケアとは、その悲しみに寄り添いケアすることで、回復をサポートする取り組みです。一対一で体験を聞いてもらうグリーフカウンセリングや、体験者同士が体験を話し合うグループワークなどがありますが、『分かち合いの会』で行っているのは、このグループワークにあたるものですね」

事務局長「グリーフケアは、日本ではまだまだ浸透していませんが、アメリカやオーストラリアでは、昔からグリーフを学問として研究してきたこともあり一般的なものになっています」

誰もが「ネガティブな感情を抱えて生きる力」を養う必要がある


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──体験者同士でグループワークをすることで、実際に死別の悲しみは癒えていくのでしょうか。

事務局長「あくまでサポートの指針のひとつなのですが、私や理事長も共に伴侶を亡くしたことを受け入れるのに、ここで受けたグループワークは役に立ったと感じています」

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理事長
「例えば、会員のひとりである、息子さんを事故で亡くされたお母さんは、『私が目を離した隙にあの子が死んで、もう二度と会えなくなってしまった。私が殺したのも同じです。だから責任をとって後を追いたい』と初めのころは話していました。ただ5年、10年、20年と経っていくうちに少しずつ、みなさんの話の内容は変わっていくことが多いんです。先述したお母さんも『自分を責めてしまう気持ちはゼロにはなっていません。ただそのことによって、ずっとあの子と一緒に生きてきたし、人の痛み、苦しみも分かるようになって、人間関係や社会を見る目が深まってきました。この痛みを抱えていることは辛いけれど、得られたことも色々とあります』と語っていました。まわりの人は良かれと思って『もう忘れなよ』と言いますが、ネガティブなものを抱えて生きていくことで生まれる大事なものもあるんです」

──辛いことや悲しいことが起きたとき、忘れるように努めるのが良いわけではないと。

理事長「そうです。医療の現場で、薬だけでなく、『ネガティブ・ケイパビリティ』=ネガティブな感情を抱えたまま生きて行く力をどう養うかを大事にしているところもあります。今後何かしらの喪失体験を経験するであろう、全ての人が生きていくために必要な力だと考えられているんですね」

DV、離婚...ケアが必要な喪失経験は"死別"だけではない


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事務局長「喪失経験は大切な人との死別のみを指すわけではありません。喪失とは、自分にとって大切なものを失うこと。ですから、例えばDVを受けた人が、自分のプライドを喪失したり、イジメで周囲に嘘の情報を拡散されて信用を失うこともそう。失恋や離婚も喪失体験のひとつですよね」

理事長「どの喪失体験も辛いものであって、肯定できるものではありません。ただ、辛い経験をしたことで、人や社会を見つめる新たな視点が生まれてくるのは間違いないんです。つまり、喪失を経験したことで自分やまわりの人たちすべての人生が尊いと知ることができる。それも大事にしていこうよという前向きな姿勢を醸成してくれるのが、ネガティブ・ケイパビリティという力。その力を養うことが、グリーフケアの本来の目的です」

事務局長「日本の場合、グリーフケアは死別による喪失感のケアがメインになっていますが、本来はもっと色んな喪失に活用できるケアなんですよ」

悲しみの予防はできない、ただ知識は生きる力になってくれる


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──教養講座で、死生観を学ぶのは何故でしょう。生と死について日頃から考え、知識を身に着けることで、死別で受ける悲しみを緩和できるのでしょうか?

理事長「いえ、どれだけ学んで知識を蓄えても、死別の悲しみが軽減するわけではないんです。だからこそ、それらを抱えたまま生きていく力を養う必要があるんです。死生観を学ぶ意味も、そこにあるのかもしれません。そして死生観を学ぶことで、どう生きるかを考えるきっかけになるんです」

事務局長「例えば、今の自分は人からの評価や肩書を大事にして生きているけれど、死ぬときに仲間や家族をもっと大事にすれば良かったと後悔しないだろうか、などと考えるようになる。死を意識することで今の生き方を見つめ直すことになるんです」

──死生観を学ぶことは、今後の生き方を考えるきっかけになりそうですね。

理事長「そうですね。今は40歳以上の参加者が多いですが、本当はもっと若い世代の方々も、参加してほしいなと思っています。教養講座は会員でなくても参加できるオープンな場なので、興味を持たれた方はぜひ足を運んでみてください。心理学や哲学、医療に興味があるからと、来る方も多いですよ」

【取材協力】
NPO法人 生と死を考える会
住所:東京都千代田区神田駿河台1-8-11 東京YWCA会館2階 214号室
電話番号:03-5577-3935

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