鉾が山頂に刺さっているのか謎! 坂本龍馬の新婚旅行先「天の逆鉾」をレッツ登山

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テレ東プラス

2019.10.8

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宮崎県と鹿児島県にまたがって連なる霧島連山の主峰、高千穂峰。その山頂には、かつて神々が日本列島を創りだす際に使ったとされる"鉾(ほこ)"が、逆さまに突き立てられている。

江戸時代から話題を集めてきたこの鉾、誰が何のために突き刺したものなのか、300年以上も解明されないまま現代に至っている。折しも登山ブームの昨今、抜群の眺望と一緒にこんな歴史上の謎を目指して登るのも一興だろう。ちょっと変わった山の旅にご案内したい。

いざ霊峰へ! 神々が降り立った舞台を行く


tozan_20191008_01.jpg画像素材:PIXTA

高千穂峰は宮崎県の高千穂峡と並んで、天孫降臨の地として有名な場所だ。つまりこの山は、神々が降り立った神話の舞台ということになる。

最初に神話をざっくりおさらいしておくと、日本列島を創ったのはイザナキ・イザナミの夫婦神だ。イザナキ・イザナミが天から鉾で大地をかき混ぜて創りだした土地を、国土として整備したのがオオクニヌシ。これを後に、統治者として地上に降りたったニニギノミコトが譲り受けることになる。

今回の登山で目指すのは、イザナキ・イザナミが大地をかき混ぜる際に用いた鉾である。なんと、高千穂峰の山頂(標高1574メートル)にはその鉾、通称「天の逆鉾」が今も突き立てられているのだ。

神話を真に受けるなんて、と一笑に付す人もいるかもしれないが、百聞は一見にしかず。高千穂峰の山頂に向かうコースは3つある。今回はその中でも比較的手軽とされる高千穂峰コースを選択した。

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スタート地点となる高千穂河原は、ニニギノミコトを祀る霧島神宮のお宮がかつて置かれていた場所である。6世紀の創建と伝えられる霧島神宮は、霧島山の噴火によって何度となく焼失と再建を繰り返していたため、今から500年以上前に麓(ふもと)に移された経緯がある。

山頂を目指す前に、まずは高千穂河原に設けられたビジターセンターで、簡単な情報収集を行うのがいいだろう。とくに登山初心者は、ルートの確認や必要な装備をスタッフの人に相談を。ペットボトル飲料の携帯はマストだし、軍手やトレッキングポールもここで調達できる。

準備が済んだら、大きな鳥居をくぐって山道へ。砂利道を5分ほど進むと、最初に見えてくるのが「天孫降臨神籬斎場」だ。

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ここはかつて霧島神宮が置かれていた頃の古宮址(こぐうし)で、今も祭祀が行われている場所。手を合わせ、道中の安全を祈願して先へ進もう。道はどんどん険しくなっていくので、心して進んでほしい。

絶景を背に、道なき岩場を登り続ける


それでも最初のうちは、開かれた眺望の素晴らしさに、清々しい気持ちで登ることができるに違いない。たまに背後を振り返ってみると、高千穂河原のビジターセンターがみるみる小さくなっていくのがわかる。

また、お隣りには最近まで活動が活発化していた新燃岳が並び、日によってはもくもくと吹き上がる噴煙が見られることもある。これもまた絶景だ。

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しかし油断は禁物。そのうち山道はうやむやになり、斜面のキツい岩場を這いつくばるようにして登ることになる。

少しでも頼りがいのありそうな足場を探し、急斜面を慎重に登っていく。時折、砂利で足を滑らせることもあり、なかなか危険な道程だ。こまめな水分補給も欠かせない。

活火山の火口を通り抜け、山頂に到着!


出発から1時間ほど登ったところで、右手に「御鉢」の火口が見えてきた。御鉢は高千穂峰に接する山で、数千年前から幾度となく噴火を繰り返してきた現役バリバリの活火山だ。

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たぎるマグマが見えるわけではないのだが、21世紀に入ってからも火山性微動がしばしば観測されているから、いつドカンと来るかわからない。入山前に気象庁のウェブサイトなどで警戒レベルをチェックしておくべきだろう。

その御鉢の火口のヘリの部分、「馬の背」と呼ばれる山道を進んで行くと、小さな鳥居が見えてくる。

これは皇紀1200年(西暦540年)に僧慶胤(そうけいいん)が神殿を造営し、ニニギノミコトを祀った場所なのだそう。いわば霧島神宮の前身のようなものだが、これほどの高知に鎮座する神殿は、さぞ荘厳で壮麗だったに違いない。

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ここまで来たら、山頂まであと一息だ。最後の急斜面を一気に登り上がろう。山頂が近づいてくるにつれ、少しずつあらわになる三叉のシルエット。いよいよ、伝説の「天の逆鉾」との対面だ。

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山頂に到着すると、「天の逆鉾」はチェーンで囲われたひときわ小高い地形に突き立てられていた。周囲にはちらほらと先客がおり、逆鉾を物珍しそうに眺めたり、写真を撮ったりしている。

高千穂河原から山頂までの所要時間は、ざっと90分。登山としては手軽な部類かもしれないが、不慣れな人にはそれなりにハードな道程だろう。しかし、間近に見る「天の逆鉾」の感動に、疲労感も一気に吹き飛んでしまった。

山頂の心地いい風を浴びながら、ぜひゆっくりと神話の痕跡を噛み締めてほしい。

あの坂本龍馬が新婚旅行で訪れた場所


ところでこの逆鉾、神話の時代の物としてはさほど古びた感じがせず、拍子抜けする人もいるかもしれない。

それもそのはず。「天の逆鉾」は度重なる火山の噴火で一度折れてしまい、今見られる逆鉾は、数百年前に何者かがあつらえたレプリカなのだそう。

折れてしまった柄の部分は、しばらく宮崎県都城市の荒立神社の御神体として祀られていたが、それも戦後の混乱で行方がわからなくなってしまったという。地中には本物の鉾の柄の部分が今も埋まっているはずだが、残念ながら確認する手段はない。

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ただし過去に一度、この逆鉾を手で引き抜いてしまった人物がいる。日本史上のスター、坂本龍馬だ。

龍馬が妻おりょうとの新婚旅行でこの高千穂峰を登ったのはよく知られるエピソードで、本人が姉に宛てた手紙の中で、逆鉾を引き抜いてしまったことを綴っている。なんとも罰当たりな話だが、龍馬は期待に違わぬ型破りな人物であったようだ。

山頂で体感する神話の世界


言い伝えによれば、世の中が平和を保ち、2度とこの鉾を使う機会がないようにとの願いを込めて、イザナギ・イザナミが山頂に鉾を突き立てたというのが、「天の逆鉾」の起源。ただし、これには諸説ある。

「天の逆鉾」はすでに奈良時代には存在していたと言われ、信心深い山伏が置いたものであるとも、薩摩の島津藩が勢力を誇示するために作ったとも言われるが、真相は不明だ。

地面に埋まったオリジナル部分の科学鑑定が行われれば、何らかの新事実が明らかになるかもしれないが、それを望むのも無粋というものだろう。

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そして山頂から見られるのは逆鉾だけではない。周囲の山々や遠くに霞む町並み。そして見晴らしのいい日には鹿児島県の桜島や屋久島までが見渡せる絶景には、誰もが言葉を失うだろう。

もしかするとこれは、高みから鉾を突いたイザナギ・イザナミが見た光景そのものなのかもしれない。神話の世界を肌身で感じられる高千穂峰登山。ぜひ一度は体験してみてほしい。

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