• #
  • トップ
  • トラベル
  • かつて水路だった渋谷・大きく移り変わる街のルーツを散歩

かつて水路だった渋谷・大きく移り変わる街のルーツを散歩

トラベル

テレ東プラス

2018.10.29

sanpo_shibuya_20181029_01.jpg


2018年9月、渋谷駅に「渋谷ストリーム」が誕生した。今東京で話題の飲食店や外国人観光客を意識した和食屋さんが軒を連ね、賑わいを見せている。多くの人が知るとおり、これまでの渋谷駅南口側は「渋谷ヒカリエ」のような大型の商業施設もなく、ただオフィスビルが立ち並ぶばかりで、地味な場所だった。そんな渋谷駅南口が、「渋谷ストリーム」の登場によって一気に華やいだ。今回はそんな「渋谷ストリーム」を出発点に、地形に詳しいサラリーマンN氏の協力を得て、渋谷から代官山までの道のりを案内する。曰く「いま東京の町を歩くなら、外せないコースがこの渋谷~代官山ルート」なんだそう。一体どういうことなのだろう。



君は本当の渋谷駅を知っている?


実は「渋谷ストリーム」の誕生により、大きく変わったことがある。それは渋谷の駅前で川を眺めることが可能になったということだ。


sanpo_shibuya_20181029_02.jpg


ドーン!と駅前に半世紀ぶりに姿をあらわした渋谷川。


渋谷に川が存在していたことを知らない人も多いかもしれないが、実は渋谷に川はあるのだ。それも街のど真ん中に。半世紀ほど前の渋谷駅の工事により姿を消し、"封印された川"とも呼ばれていたらしい。一説によると、「渋谷」という地名は渋谷川を流れる赤土色の水が由来になっていたという話もあるくらいなのである。これまでは駅の真下を流れていた川が、駅前再開発で再びお目見えになったのである。


そもそも渋谷川とは、新宿御苑を流れてくる隠田川を源流にもつ川のことだ。「隠田」とは今の原宿駅あたりの地名のことで、その名の通りかつては一帯に田んぼが広がっていた。北側から流れてきた渋谷川は渋谷駅の真下を通り、恵比寿方面に流れる。地図を見ると渋谷からいきなり川が流れているように見える。


sanpo_shibuya_20181029_03.jpg


駅の真下から流れる渋谷川。


これは「暗渠」といって、上に蓋をされ地下化されているのだ。新宿から渋谷駅までは一度も姿をあらわすことなく流れている。


蛇足かもしれないが、渋谷川といえば欅坂46のシングル「サイレントマジョリティー」のジャケット写真で一躍有名になった。ちなみにカップリングとして「渋谷川」という楽曲が収録されている。同曲の中で"名前を聞いてもピンとこない"、"誰も気づいてない"などという歌詞があるように散々な言われようだが、"都会の隅で涸(か)れることなく流れ続ける"川とも表現されている。この記事を読み終えたころにはピンとくるようになっているだろう。


では、早速歩き始めよう。



都会の隅で涸れることなく流れ続ける川の上を歩く


sanpo_shibuya_20181029_04.jpg


スタート地点は「渋谷ストリーム」の路面に突き出しているハンバーガーショップの「THE GREAT BURGER STAND」。


ここから代官山方面に向かって渋谷川沿いを歩いて行く。川に沿って伸びるこの道は、かつての東横線が走っていた線路跡でもある。


渋谷~代官山間を歩く上で頭に入れておかなければならない出来事といえば、2013年の副都心線直通運転開始だ。地上2階にあった東横線渋谷駅は、隣駅・代官山との間で地中に深く潜り、副都心線・東武東上線との直通運転を行う地下駅となったことは記憶に新しい。実にその高低差30メートル。


では、地上を通っていたときはどこを走っていたのだろうか? それがこの道。


sanpo_shibuya_20181029_05.jpg


こういうもの。かつて2階の高さを走っていた東横線の姿を感じよう。


ここに高架がかかり、地上2階の高さで代官山に通じていた。この線路に沿って歩いて行くと、かつての線路を思わせるモニュメントがいたるところにある。


この60番のモニュメントがあるのが並木橋の交差点付近だ。右手に上がっていくと代官山駅方面に続く八幡通り。


sanpo_shibuya_20181029_06.jpg


現在はこの辺を歩いている。


地形に詳しいN氏いわく、この並木橋の交差点には東急線・並木橋駅があったのだという。1946年に廃止された東急電鉄・並木橋駅跡地は、東横線の開通に伴い渋谷の隣に設置されていた駅とのことだ。並木橋駅の詳細はこちらのページに詳しい。



渋谷、代官山、恵比寿がせめぎあう魔の三角地帯


並木橋駅跡地を超え、恵比寿方面に続く9月にオープンしたばかりの「渋谷ブリッジ」という商業施設の先にN氏のおすすめスポットがあるという。


sanpo_shibuya_20181029_07.jpg


「渋谷ブリッジ」は「渋谷ストリーム」に負けず劣らずおしゃれだ。いや、おしゃれの巣窟だといってもいい。今風のスナック、バーやホテル併設のレストランなどが並ぶ。そんなおしゃれスポットに脇目も振らず、我々は地味な道を歩いていく。


ゆるやかなカーブに沿って行くと、やがて山手線の線路にぶつかる。渋谷から続く一本道はここまでか、と思うところで、線路の反対側を見てほしい。


sanpo_shibuya_20181029_08.jpg


ビル2棟に挟まれた不思議な空間がある。「その奥に何が続くのか気になるでしょ?」とN氏。ここがイチオシのスポットらしい。この先に何があるのか。そう思った矢先にN氏はおもむろに語りだす。


「町を歩いていると明らかに雰囲気が変わる町と町の境目があるんです。電車で移動しているとその境を感じることはないけれど、町歩きの良さはそれを楽しむことにあります。東京は駅と駅の距離感が近く、それぞれ町に個性が残っている。だから散歩は楽しいんですねえ」


確かに、開発は進むものの、いわゆる「下町」の残り香を感じられるのも東京の特徴かもしれない。渋谷付近で、町の境目を体感できる交差点が、この先にあるらしい。早速歩道橋をわたってみよう。


sanpo_shibuya_20181029_09.jpg


歩道橋を渡ると恵比寿。こちら側は渋谷。線路のこちら側までは渋谷だったけど、あの歩道橋を渡ると恵比寿。なんだろう。わかる気がするようなしないような。「向こうが恵比寿ならば、ここはどこなんですか」と、歩道橋の上で聞いた。


「ここはいわば国境の上ですね。町の開発によって、その境界は常に変わっていくんです。2018年の今現在は渋谷と代官山と恵比寿がせめぎ合っているが、渋谷の開発が進めば、ここは渋谷に占拠される可能性はある。言い換えれば、恵比寿の領分が減っていくんです」


sanpo_shibuya_20181029_10.jpg


これが、国境らしい。なるほど。なんとなくわかる気はする。さらにN氏の言葉に耳を傾けてながら歩き進める。


国境を渡ると渋谷から恵比寿に続く線路沿いの道路と、ほぼ垂直にぶつかり、代官山に向かう道路が。


sanpo_shibuya_20181029_11.jpg


一見するとなんでもないこの交差点。


N氏いわく、ここが恵比寿と渋谷と代官山が領土を取り合いながらせめぎあう魔の三角地帯だという。


sanpo_shibuya_20181029_12.jpg


ちなみに今はこのあたりである。矢印のあたりが魔の三角地帯だ。



電車の揺れと踏切の音を感じ、歴史に思いを馳せる


三角地帯を代官山方面に進むと「ログロード代官山」が見えてくる。ここはかつての路線跡の敷地に生まれた商業施設。「元・線路」であることを感じるような、細い空間を活かした作りになっている。


sanpo_shibuya_20181029_13.jpg


細長い道。左側の石崖は、かつて電車のなかから見えた景色そのもの。その向こうには...

sanpo_shibuya_20181029_14.jpg


東横線の線路だ!


本日の散歩コースの終着点が、スプリング・バレー・ブルワリーというダイニング。「ブルワリー」という名が示す通り、店内にはビールの醸造所が併設。実はこの店、キリンが運営する「クラフトビアバー」であり、様々なクラフトビールが味わえる。


sanpo_shibuya_20181029_15.jpg


その至近距離にあるのが、このテラス席。


そして、ここで味わえるのはビールだけではないとN氏は力強く話す。


「見てください、このテラス席からの景色を。目の前にはかつての東横線から眺めた壁。遠くに踏切の音が聞こえ、地下を走る電車の振動を感じます。ここは東横線を楽しむにはもってこいですよ」


sanpo_shibuya_20181029_16.jpg


このアスファルトの壁を眺めながらビールをいただくのが通らしい。...エクストリームすぎる。


「東横線を楽しむ」のレベルが高すぎないかと心配になるが、確かにビールはおいしい。N氏は「JAZZBERRY」というフルーツビールを筆者は「ON THE CROWD」という白ビールに付け合せにはフィッシュアンドチップスを頼んだ。東横線を楽しむかはさておき、散歩のあとのビールは格別だ、ということだけわかった。


sanpo_shibuya_20181029_17.jpg


渋谷駅では地下4階を走る線路が、一駅隣の代官山では地上階に現れる。というわけで、散歩は終了。


今回、Googleマップを片手に歩いてみたところ、見事に東横線の線路の上を歩いていた。かつて2階にあった線路が地下にそのまま移って、地上部は商業施設になっているのがわかる。いや、知ってはいたけど、実際に歩くと本当に線路そのままって感じで驚いてしまった。


地味な散歩ルートかもしれないが、騙されたと思って、ぜひ実際に体験してみてほしい。

sanpo_shibuya_20181029_18.jpg


商業施設に目もくれず、ひたすら地味な道を渋谷の歴史に思いを馳せてみることではじめてわかる感慨があるかもしれない。たしかに"都会の隅で涸(か)れることなく流れ続ける"川はそこにあったのだから。

※このページの掲載内容は、更新当時の情報です。

一緒に読まれています!

この記事を共有する

人気の記事POPULAR ARTICLE

    おすすめコンテンツRECOMMEND CONTENTS

    カテゴリ一覧