楽天 松井裕樹と右肘手術 則本昂大を繋ぐキーホルダー
昨季と同じ開幕カードとなったロッテ戦を勝ち越し、良いスタートを切った楽天。
第2戦、第3戦の9回のマウンドにいたのは若き守護神・松井裕樹(23)。セーブこそ付かなかったが、2試合計 2回 奪三振5失点0と相手を圧倒し試合を締めた。
抑えのポジションを言い渡されたのは開幕3日前、伊藤智仁投手コーチから。「スタートラインに立っただけなので、そこで嬉しいという感情はそんなになかったですね」と、松井の表情は緩まなかった。
昨季も開幕は"抑え"。しかしその後待っていたのは中継ぎへの配置転換、二軍降格...思えば歯車が狂ったのは開幕戦からだった。
先発の則本昂大が7回1失点と好投し、迎えた楽天1点リードの9回。ロッテ鈴木大地にタイムリーを浴び救援失敗。この開幕戦から結果を欲しがってフォームを崩してしまったと、松井は振り返る。
プロ5年目にして初めての経験。それでもシーズン中、自信を失いかけた松井を救ったのはあの人だった。開幕戦で松井が勝ち星を消してしまった、則本だ。
「何回も助けてもらったから、誰でも失敗することはあるから、次も繋ぐから今度は頼むぞって言ってもらいました。この先輩のために頑張ろうとその瞬間、強く思いました」
松井にとって則本は、ルーキーイヤー春季キャンプの宿舎が同室だったことをきっかけにプロでのイロハを教わってきた先輩。プライベートでも仲の良い則本からの"揺るがぬ信頼"を示す言葉に、松井は救われた。
再起を期す今シーズン。救ってくれた先輩は右肘手術で戦線離脱。"抑え"の定位置を掴み直した松井のそばに、則本はいない。
しかし、彼らは繋がっている。
「これ俺やと思って持っていけ」と、ロッカーの整理をしていた則本から冗談交じりに渡されたキーホルダー。開幕戦千葉への遠征で持ってきた松井の鞄に、しっかりと付けられていた。
見事リベンジを果たした開幕カード直後、松井が口にした決意。
「チームが高い順位で戦っていることで、則本さんはリハビリなどを頑張ることができると思う。帰ってくるモチベーションになるように、頑張っている姿を則本さんに見せたい」
今度は自分が力になる番...
若き守護神・松井が、先輩から預かった可愛らしい分身と共に則本の帰りを待つ。