清水エスパルス退任のヨンソン前監督「冬の移籍でうまくいかなかった」今季苦戦の背景を語る

サッカー

2019.5.19

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ヤン・ヨンソン 写真:フォトレイド/アフロ

 先日、今季の成績不振でシーズン途中に清水エスパルスを去ることになったヤン・ヨンソン前監督が、離日前に単独取材に応じた。

サンフレッチェ広島やヴィッセル神戸でもプレーし、古巣の広島では2017年に指揮も執ったスウェーデン出身58歳の前監督は、就任1年目だった昨季は14勝7分13敗で8位に入り、2013年シーズン以来6年ぶりの一桁順位を記録。優勝した川崎フロンターレにあと1ゴールで並ぶという総得点56の攻撃力を見せるチームに導いた。

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しかし今季は5月12日第11節にホームで川崎に0-4と大敗を喫し、11戦を終えて2勝2分け7敗でJ2降格圏の17位に低迷。総得点は11でリーグ12位タイ、総失点26はリーグワーストと振るわず、降格圏からの脱出を図りたいクラブは川崎戦終了から数時間後に指揮官交代を決め、事実上の解任となる同監督の退任を発表した。

昨シーズンから今シーズンへ何がどう変わり、チームにどう影響したのか。清水での最後の試合となった川崎戦から数日後、ヨンソン前監督に話を訊いた。


―残念な形でクラブを去りますが、今季は何がうまく行かず、難しかったのでしょうか?

 昨季チームは本当に良いシーズンを過ごすことができたので、今季同じようにならなかったのは残念です。昨年は8位でしたが、上位に近づきましたし、バランスのとれた良いアタッキングフットボールを展開して、多くの人が評価してくれましたし、私自身もハッピーに思っていました。

 そのシーズンを受けて、今季はさらに目標を上げてクラブは5位以内を目指し、そのためにはチーム強化が必要でした。しかし、ここまでうまくいかず、特に冬の移籍のところでうまくいきませんでした。


―それはどういうことですか?

 昨年よい成長を見せて、私が是非とも今季も手元においてチーム力アップの柱にしたいと考えていた選手が2人いました。彼らは性格も良く、守備の面でも大きな貢献をしていました。1人は鹿島へ行ったMF白崎(凌兵)選手です。

私は彼の昨季の成長ぶりに、オフシーズンになったら、より大きなクラブへの移籍もあり得ると感じていました。クラブに彼と早目に契約更新を済ませるように話していたのですが、そうなりませんでした。

 もう一人はDFフレイレ選手(現・湘南)です。練習でも試合でも性格の強さを発揮して、最終ラインを締めてくれていました。

 そのほか、これはどうしようもないところがあったのですが、FWドウグラス選手が心臓やフィジカルに問題を抱えて、プレシーズンから今季序盤に出遅れることになりました。それは不運だったとしか言いようがありません。彼は昨シーズン活躍して、FW北川航也選手のレベルアップを押し上げてくれました。彼らのコンビネーションが戻ることを願っていましたし、実際にドウグラス選手は試合に復帰して、その兆しがあると感じていました。

 私がクラブから言われたのは、「強化を進められず、そうできない状況にあったことは分かっているので、そこは少し気の毒に思う。しかし最初の10試合で勝点9ポイントを得て夏に強化を図りたかったが、獲得できたのは8ポイントだった」ということでした。

その勝点の基準をどの段階で決めたのか分かりませんが、私は事前に言われていなかったので、これは少しきついと言えると思います。「この目標を達成できなければ、手を打たなければならない」と言っておいてくれたらよかったと思います。


―クラブは守備が改善されない点を問題視していたようですが、その点については?

 昨季は優勝した川崎の総得点に1ゴール少ない、リーグ2位の得点を挙げていましたが、バランスは取れていました。昨季から守備に多くの時間を割いて取り組んできて、今季いくつかの部分で改善も見られました。ただ、クロスへの対応は依然として問題で、たくさんではなくても、相手が良いチームになると直接失点につながることもありました。

フレイレ選手が抜けた影響は、誰もが見てとれたと思います。彼はトレーニングでも試合でも強い性格を出す、強いDFです。白崎選手も優れたサッカー頭脳の持ち主で、良い攻撃をする一方で、バックラインを保護するためのバランスをチームに与えてくれていました。

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 選手によっては、どれだけ言っても、練習で良くても試合で相手を捕まえられずにボールを見る癖が出てしまう選手もいます。守備というのは、ほとんどが良くても5%、いえ、1%でも足りなければ、相手につけ入られてしまいます。今季は守備のリーダーも不在で、私は良い守備をした時の良いイメージを選手たちに持たせて、自信を取り戻すような精神面での働きかけも試みていました。

昨シーズンの主力で戦術理解の高いMF石毛(秀樹)選手が、今季もフルにプレーできればよかったのですが、彼は靭帯を痛めて離脱を強いられました。その点も不運だったと思います。怪我人がかなり多くなったことも、昨年とは大きく違う点です。昨年はその点でラッキーだったと思います。これは決して言い訳ではなく、状況説明なのですが。


―チームを率いた間に成長した選手もいました。昨年日本代表に選ばれた北川選手はその1人ですが、彼のステップアップには何があったのでしょうか?

 北川選手は昨年シーズンを通して良かったと思いますが、特にドウグラス選手が入ってからの後半はさらに良くなって、彼らのコンビネーションは対戦相手への脅威になっていました。その結果、北川選手は日本代表としてアジアカップで決勝まで行ったのですが、清水で見せているような、素早いコンビネーションを使ったプレーを代表でも見せていました。

今季はドウグラス選手不在が続いた影響もあって、まだ昨季ほどのプレーは見せていませんが、彼自身のレベルは高いですし、ハードワークを厭わずに良く走ります。まだ若く、吸収するのが早い。昨季はドウグラス選手のほか、白崎選手、MF金子(翔太)選手らとともに攻撃だけでなく、前線からの守備でも高い戦術的理解を見せていました。

ドウグラス選手は現在試合ごとに良くなっていて、それに呼応するように北川選手とのコンビネーションもプレーごとに良くなっています。このままの調子でドウグラス選手が完全に復調すれば、また昨シーズンのような活躍を見せてくれると思います。


―選手たちにはどんなメッセージを残しましたか?

 クラブを離れる前に選手たちに話をする機会があったのですが、「ここ2試合の結果は悪くて、いつもできているように得点できていない。だがこの2試合だけを見て、自信を失わないでほしい」と伝えました。

実際に、それ以前の浦和戦でも静岡ダービーの磐田戦でも、我々は相手より良い試合をしました。FC東京とのアウェイ戦ではリードを奪って、相手の長谷川(健太)監督に「自分たちより良い試合をした」と言わしめた。彼らと同じかそのレベルに近づいているということです。

選手たちには「怪我人も戻ってくる。他の試合でも、良いところをたくさん見せてきている。堅い守備とアタッキングフットボールを見せた昨年のマインドに戻ろう」と話しました。

 私は、クラブに対する忠誠心も高くてハードワークする選手たちが、昨年のあのレベルに戻ってほしいと願っていますし、自信を取り戻して気持ちを強くするには結果が一番なので、結果が出てほしいと思っています。


―熱い声援を送ってくれていたファンに伝えたいことはありますか?

 彼らは本当にすばらしい存在で、広島でもそうでしたが(私の出身の)スウェーデンの旗を掲げて応援してくれました。清水での1年半、とても楽しく仕事ができました。良い気質の選手たちとクラブ愛の強いファンに囲まれて、自分が関わることができて本当に良かった。今季は昨年のような良い結果を出せず、残念ですし、申し訳なく思います。

 ですが、エスパルスとあの地域のサッカー文化、そしてユース育成を考えると、清水は前途有望だと思います。リーグで若いチームの1つで、地域から選手が育ってきているのは喜ばしいことですし、昨季我々が見せたパフォーマンスは、エスパルスの未来を示すことができるものだったと思います。

そういうパフォーマンスを見せることができたのは、ファンのみなさんのおかげでもあります。ホームでもアウェイでもいつも変わらずに熱い応援を送ってくれたことに、心からたくさんの感謝の気持ちを送りたい。オツカレサマデシタ。そして本当にありがとうございました。

取材・文:スポーツジャーナリスト 木ノ原句望