K-1絶対王者「武尊」が背負う宿命 どんな場面でも絶対にカメラを拒まない

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2019.6.5

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そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない

K-1史上初の3階級制覇を成し遂げた絶対王者「武尊」。まずは自宅のキッチンへ。プロの減量メニューを見せてもらった。

本当はパンが大好きなのだがグルテンフリーを心がけているので我慢している。代わりに疲労回復にもいい玄米を毎日自ら炊く。ここまでは他の格闘家でやっている選手も多いだろう。

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武尊はその手料理を撮影しSNSにアップする。自分のこと、自分が戦う世界のことを、もっと知ってもらいたい。苦労人で知られる武尊のそれが今のテーマだ。武尊にはトレードマークが二つある。試合後の宙返りと試合中のこの笑顔。

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3階級を制覇し、さらにこのルックス。女性や子供の人気も高い。だが冷静な目で見ればそれはまだ格闘技という狭い世界での人気に過ぎない。お茶の間の誰もが知っていたK-1黄金時代をもう一度。武尊は今、一身にその重責を担っている。

K-1は、空手やキックボクシングの要素も含む寝技のない格闘技。今回の取材について武尊はどんな場面でも絶対にカメラを拒まないと約束してくれた。

その言葉に嘘はなく大事な一戦を前に練習に専念したい時期でもファンのため、ファン拡大のためなら、どんなことでも一肌脱ぐと決めている。

鳥取の生まれ。武尊は本名。歴史好きの両親が日本書紀の英雄にちなんで付けた。小学2年の時、K-1ブームに触発されて、格闘技を始めた。

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人生を壊しかけたこともある。やんちゃが過ぎた十代半ば、警察の厄介にもなり、高校はわずか2ヶ月で退学した。

その後、プロを目指して単身上京。食事は毎日もやしという貧乏生活を味わいながらも、武尊はK-1という世界に居場所を見つけたのだ。どん底に耐えながら歯を食いしばって練習に打ち込み、手にした三階級制覇という栄光。

しかし武尊はまだ満足していない。だから再びリングに立つ。

試合前日、計量に臨む。三日前はリミットを4キロオーバーしていたがもう心配ないという。三日で4キロは計画通り。59キロちょうどを目指してやってきた。

唾液も出ないほど干上がった体。控え室には、経口補水液や甘酒が準備されていた。電解質やアミノ酸を手早く補給するためだ。

減量から来る苛立ちを我慢しての密着取材。有言実行で、誠実で、会えばファンになるという人柄が付き合うほどに伝わってきた。

試合当日、さいたまスーパーアリーナを1万6千人が埋め尽くした。全19試合の大トリが武尊だ。ラッキーカラーの勝ち赤をまとって、リングへ。ムエタイ王者相手に、狙うはKO勝ちのみ。

迎えた第2ラウンドにその瞬間は訪れる。思い通りのKO勝利。

しかしそのあと、予想外の展開を目の当たりにすることに。なんと戦いに勝利した武尊が向かったのは打ち上げ会場ではなく病院。激闘の代償は右こぶし、腱の断裂。手術が必要と宣告された。

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ただ勝つのではなく勝って会場を沸かせる。たとえ肉を切らせて骨を断つようなことになっても。それがK-1を背負う武尊の宿命なのだ。

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