【高校野球】部員はたったの7人。伊豆大島・都立大島高校野球部の暑い夏

野球

2019.8.5

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そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない。

野球は9人でするもの。しかし大島高校野球部は、たったの7人。取材を始めた今年3月、それが大島高校の悩みだった。目指す夏の大会。このままでは単独での出場ができない。   

70年の歴史を持つ離島の都立高校野球部。その伝統をつなぐため、7人の暑い夏が始まった。

7600人の島民が暮らす東京都伊豆大島。大島高校は島で唯一の普通高校で"島高"の愛称で親しまれており、中でも野球部の人気はダントツで試合に勝つと島内放送が流れる。だが、かつて20人以上を数えた部員も今は大幅に減ってしまった。7人しかいないので試合形式の実践練習はできない。そればかりかバッティング練習もピッチャーはエースの荒田ひとりで代わりのピッチャーがいないため、荒田はバッティング練習ができない。 エースの荒田一人が頼みの綱。

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それが後に大ピンチを招くことに。
エースでキャプテン、大島高校の大黒柱・荒田にはある異名が付いている。「伊豆大島の怪腕」独特すぎるフォームから放たれるストレートは最速138キロ。         

他に3年生は3人。ショートの山住は、攻守の要。
センターの里見はムードメーカー。グラウンドに歌声を響かせる。
佐藤は大島高校の野球に惚れ込み杉並区から移住してきた。

残る3人は2年生だ。選手は少ないが、3年生の女子マネージャーは2人いる。今江さんと山内さん。みんな小学校から一緒で家族同然だという。

遂に春季大会が始まる。試合がある時は必ず前日に移動する。まずは海の旅を2時間弱。東京、竹芝桟橋から浜松町駅まで荷物を担いで歩き、そこから電車を乗り継いで立川の宿へほぼ4時間をかけての大移動だ。       

ところで皆さんも疑問だろう。7人しかいない野球部がどうやって試合をするのか。そこには2011年の震災を機に拡充されたある制度が関わっている。それが「派遣制度」部員不足の学校は他校から部員を借り入れて大会に出場できる。大島高校は、監督同士が知り合いの文京高校から補欠の選手3人を借り、人数を揃えたのだ。加わった3人とは数回一緒に練習しただけで、大島高校の春季大会が幕を開けた。試合は、伊豆大島の怪腕・エース荒田が打ち込まれる。実戦経験の不足からか連打を浴び反撃はしたが4対6で惜しくも敗れた。

4月、大島高校野球部に待望の新入部員が。新入部員は平野と山口の2人。ついに単独出場への希望が見えた。しかし夏の大会を目前にチームには異変が起きていた。そこには平野の姿がなく代わりに文京高校の選手が。実はルーキーの平野は足を怪我し1ヶ月休みをとっていたのだった。夏の大会は、70年間ずっと単独出場を続けてきた。でも今回は、派遣制度に頼るしかない。島だから負けた。そんな言い訳だけはしたくない。だが夏の大会初戦、大島高校の相手は、強豪・明大中野高校だった。頼みの綱はエースの荒田。しかし5回裏、打席に立った荒田の足がつってしまった。交代要員はいない。もし荒田が戻れなければ、棄権するしかない...。

7分後、荒田くんは戻って来た。満身創痍。痛みに耐えてプレーを続けるエースを、打線は援護する。そしてエースはそれに応える。離島の都立高校が強豪私立を5安打完封と圧倒した。

続く試合、荒田は打たれ、大島高校の夏は終わった。培った絆は、島に育った彼らの宝物だ。たとえ島を離れてもその宝はきっと色あせない。

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