【柔道】ウルフ・アロン 地獄を見た男の復活劇

柔道

2019.9.17

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そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない

肉の塊を捌く、今回の主人公。

「タンの中の部分と、タン下とタン先に分ける・・・」

肉の部位を熱心に説明するこの男、焼肉屋さんの店長ではない。柔道男子100キロ級日本代表、ウルフ・アロン。いまの日本柔道界で最強の男だ。
 
一昨年の世界選手権を圧倒的な強さで制し金メダルを獲得。一躍、男子100キロ級のエースとなったウルフ。さらに今年、柔道家なら誰しもが憧れる「全日本選手権」でも優勝。日本最強の称号を手にした。全日本男子・井上康生監督も現役時代の自分と同じ道を進むウルフに期待を寄せる。

井上監督「全日本のチャンピオンになったイコール日本柔道界の核となる選手だという意識を彼自身は持っているんじゃないかと思う。彼自身の目標を達成できていけるように後押ししていきたい。」

ウルフを最強たらしめるのが「大内刈」相手の重心が後ろに下がった刹那、一気に刈り上げる「大内刈」を武器に東京オリンピック代表、その先の「金メダル」を目指す。

ウルフは葛飾区生まれ。お父さんがアメリカ人、お母さんが日本人。柔道を始めたのは祖父の何気ない一言がきっかけだった。

ウルフ「僕、子供の頃から体が大きかったので、柔道してみたらどうだって言われて始めたのがきっかけですね」

早くから頭角を現したウルフは、高校時代に、史上初の3冠を達成。東海大学に進むと、初出場した国際大会で優勝。選抜体重別を連覇し、押しも押されぬ日本代表となった。

休日は、もっぱら自宅で過ごすと言うウルフ。部屋にカメラを入れさせてもらうとそこにいたのは妻の良美さん。2人が出会ったのはウルフが世界選手権を初制覇した2017年。何を隠そう良美さんは元柔道家で、ウルフが試合会場で一目惚れし交際がスタート。今年の4月に、めでたく結ばれた。愛犬オレオも入れて2人と1匹、幸せな新婚生活。

この日の夕食は、焼き肉ということでウルフが台所に。肉料理の日は、ウルフが料理をするのがこの夫婦の決め事なんだとか。

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この日、愛する妻とお腹を空かせた後輩たちにウルフが振る舞ったのが味噌漬けホルモン、豚バラの塩こうじ漬け、ステーキの赤ワイン漬け、そして、牛タン。焼き方まで徹底的にこだわる見事な焼き肉奉行ぶりだ。

美人の奥様と、休日に焼き肉。絵に書いたような幸せな日常だが、遡ること、およそ1年半。ウルフは奈落の底にいた。練習中の事故で「左膝半月板損傷」。人生で初めての大怪我だった。東京オリンピックに向けて順調に動いていた時計の針が止まった。柔道をできない初めての日々に焦りだけが募る。

リハビリを乗り越え、実践に復帰したのは、5ヶ月後。実績を認められ、世界選手権の代表に選ばれはしたものの結果は5位に終わった。ウルフは、人生初の大怪我で自分を見失っていた。そんな彼に対して良美さんは敢えて、いつも通りを心がけた。いつもと同じ日常でウルフを影で支え続けた。

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妻の献身は男を蘇らせる。去年11月の「グランドスラム大阪」で、ウルフは攻守に鋭い柔道で勝ち上がり、復活を告げる優勝。さらに、今年の4月。日本で一番強い柔道家を決める「全日本選手権」も制し、地獄を見た男は見事な復活劇を果たした。

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そして日本最強の称号を持って臨んだ「世界選手権」。妻、良美さんが見守る中、1回戦から我慢の柔道で泥臭く勝ちを拾うウルフ。共に地獄を味わった妻のためにも、金メダルを。しかし、準々決勝で現世界王者に敗れてしまった。

ウルフは負けを知り、また強くなる。一度、地獄を見た男はそう簡単には折れないのだ。

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