水球日本代表「ポセイドンジャパン」監督と選手たちの並々ならぬ決意と努力

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2019.9.27

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そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない

水球日本代表、ポセイドンジャパン。来年、東京オリンピックでのメダル獲得を目指している。ヨーロッパでは各国にプロリーグもある水球。だが、日本では練習場所を探すことさえ簡単ではない。そんな恵まれない環境下で、彼らはここ数年大躍進を遂げている。

4年前、32年ぶりのオリンピック出場を皮切りに、去年は、世界一を決める水球ワールドリーグで4位。今、水球界で飛ぶ鳥を落とす勢いなのだ。

水球日本代表「ポセイドンジャパン」に密着!/#Humanウォッチャー

水球日本代表はいま、来年の東京オリンピックを見据え、1年のうち200日を強化合宿に費やしている。7人で8分4ピリオドを戦う水球。ファウルなどで時計が止まっている時間を入れれば1時間以上、ひたすら立ち泳ぎ。泳ぐ距離は、代表クラスだと1試合で10キロにもなるという。しかも、水中の格闘技と呼ばれるほど、ボディコンタクトが激しい。試合での怪我は、日常茶飯事。彼らの鍛え上げられた肉体が、過酷な競技に打ち込んだ日々を物語る。

7月、新潟で行われた合宿では、来日中の強豪国との親善試合が組まれていた。相手はリオオリンピックで金メダルに輝いたセルビア。2メートル近い選手を揃え、パワーで相手を圧倒するチームだ。だが試合は序盤から日本がリードを奪う驚きの展開。平均身長で10センチ以上勝る相手から次々とゴールを奪っていき、強豪セルビアからあげた史上初の勝利。

この大金星をもたらしたのは、8年前から取り組んできた独自の戦術だった。それが世界を席巻する日本オリジナル、通称「パスライン・ディフェンス」通常、水球のディフェンスは相手とゴールの間に入り、シュートコースを防ぐポジションをとる。しかし、パスライン・ディフェンスはゴールを守らずに、全員が前に出てパスを封じるポジションをとる。いったんパスを裏に通されれば、簡単にシュートに持ち込まれてしまうためリスクは大きい。だが、前に出ているぶん、ボールを奪うと一気に相手陣地へと攻め込み相手の守備陣形が整う前に攻め込むことで体格差のハンデを埋めているのだ。

常識を否定すること。革命的な戦術が誕生した裏には監督と選手たちの並々ならぬ決意と努力があった。

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タレント揃いのポセイドンジャパンの中で、テーピングだらけの男が気になった。志水祐介、31歳。笑顔の優しい最年長選手だ。代表に入ったのは11年前。日本が勝てなかった冬の時代を、身をもって知っている。東京オリンピックのメダルを目指す上で、欠くことのできない存在。だが、31歳の体は、満身創痍だった。2年前、肩をつなぐ筋肉・腱板を断裂。長いリハビリを経て今年の3月に復帰したばかり。しかし志水は傷だらけの身体をさらに追い込みながらこう言った。「あと1年、東京五輪までさえもってくれたらそれでいい」

中学時代の夢はJリーガー。ケガでプレーできなくなったとき友達から水球に誘われた。水球のオリンピック選手が新しい夢になった。

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8月、志水の住む新潟 柏崎を訪ねた。柏崎は水球の盛んな町。子どもから大人まで150人が所属する水球クラブがある。志水はここで、地元企業のサポートを受け少年チームの指導を仕事にしている。

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実は志水には、意外な過去がある。大学卒業後に1年だけ、中学校で先生をしていたのだ。2011年、ロンドン五輪出場の夢が破れた時、引退して教師として生きていくつもりだった。1年生の副担任をしながら体育を教え、陸上部の顧問も担当していた。夢を持ち、努力することの大切さを教え子たちに語るうちに、夢を叶えないまま教師となった自分に矛盾を感じたのだ。

「もう夢を諦めない」

そう生徒に宣言して学校をやめた。アルバイトで生活を支えながら、リオオリンピック出場を果たした。いまは、東京でのメダルが新しい夢。

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そんな志水に、嬉しい誘いがかかった。かつての教え子たち。もう20歳になっていた。最初で最後の教え子たち。この子たちと出会ったから、今も夢を追っている自分がいる。そんな中、教え子たちから大きな宿題を出された。

「先生、金メダルが欲しい」

夢を追う自分を支えてくれる人の存在こそが志水の原動力。翌日から再び過酷なリハビリに打ち込む日々が始まった。それでもあと1年、歩みを止めるつもりはない。宿題をやらないと教え子に顔向けできないから。

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