俺たちの現在、過去そして未来 ~阿部慎之助×上原浩治~

野球

2020.1.5

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平成の巨人を支えた阿部慎之助と上原浩治。ともに球界の盟主・読売ジャイアンツにドラフト1位で入団し、エース、正捕手として長年チームを支えてきた2人の名選手がくしくも今季、ともにユニフォームを脱いだ――

2人のレジェンドが若手に伝えたい想いとは?~上原浩治×阿部慎之助インタビュー~

「今日はよろしく! 監督」

――対談前、上原浩治は2020年シーズンから二軍監督に就任した阿部慎之助にこう挨拶した。4歳年上の上原にとって阿部は「何でも言い合える後輩」、阿部にとっては「リスペクトする存在」という関係性。大学時代からともに日本代表に選出され、チームメイトとしてプレーしてきた2人だが、今も記憶にあるのは2001年の開幕戦だという。

前年に日本一に輝き、連覇を目指して迎えた巨人。21世紀最初のゲーム、伝統の一戦といわれる阪神戦の先発を任されたのはもちろんエースの上原だった。投球を受ける捕手は昨年までならベテランの村田真一だったが、この日の開幕マスクを任されたのはルーキーだった阿部。原辰徳ヘッドコーチ(当時)の推薦を受け、開幕戦からスターティングメンバー入り。新人の捕手が選ばれたのは球団としては1978年の山倉和博以来、23年ぶりの快挙となった。

プロ入りしてすぐに正捕手に抜擢された阿部は当時、その重圧に押しつぶされそうになったと言うが、上原のこの言葉で救われたという。

「僕の場合は打つ時ですけど、『ここで打てなくても、死ぬわけじゃない。なるようにしかならない』って考えるようになりました」――この言葉がなかったら、もしかすると後に通算2000本安打、400号本塁打を記録するスラッガーは生まれなかったかもしれない。


再びチームメイトになった2人が引退を決断したキッカケは

やがて上原は海外FA権を行使してボルティモア・オリオールズへと移籍。長年バッテリーを組んだ2人はここで離れ離れになってしまった。前年の2007年からキャプテンに就任した阿部はチームを引っ張り続け、上原はメジャーの舞台でチームを転々としながら活躍。ボストン・レッドソックスに在籍していた2013年にはワールドシリーズの大舞台で登板し、見事胴上げ投手にもなっている。

巨人に残り続けた阿部と、巨人を去って活路を見出した上原。そんな2人が再び同じユニフォームを着たのは2018年。シカゴ・カブスからFAとなっていた上原が10年ぶりに巨人に復帰することになったのだ。

「(高橋)由伸監督や鹿取義隆GMのために『優勝したい』という気持ちで投げていた」という上原だったが、復帰1年目は36試合に登板して0勝5敗14ホールド、防御率3.63を記録。左ひざのクリーニング手術を受けて臨んだ2019年は一軍で登板することなく、シーズン途中の5月20日に突如引退を表明。異例の引退宣言に驚いたのは、他でもなく阿部だったという。

「ビックリするくらい早いんだもん。発表したのは5月の終わりでしょ? 発表の2日前くらいに連絡をいただいたときには『えっ!?』ってなりましたよ。それで『メシ行こうな』って言ってくれたから、連絡したら『もうアメリカに帰ってる』って(笑)」

二軍での調整中「周りから気を使われているのが丸わかりで、それが嫌やった」という上原が現役を去ってから4ヵ月後、今度は阿部がバットを置く決意をした。

「自分の中で『もう、いいかな』って思えた」という阿部に対し、「もう1年できると思ったんやけど」と語った上原。これこそユニフォームを脱いだ今だからこそ、言える言葉なのかもしれない。


未来の巨人を支える若手への2人の思い

2人が現役を引退して数ヶ月が経過。2020年シーズンからは阿部は二軍監督として指導者のキャリアをスタートさせ、上原は巨人から離れることになった。再び違う道を歩むことになったが、阿部は上原に対し、将来的には指導者に戻ってきてほしいと心情を吐露した。

「僕は上原さんみたいにメジャーリーグを経験した選手は、『指導者として日本の定義を変えてくれる』と思っているから、将来的にはぜひ戻ってきてほしいです。僕にはアメリカの野球のいいところというのはわからないので、それをチームに吹き込んでもらえるのはとてもいいことだし、ジャイアンツにはもちろん日本の野球のためになりますから」

確かに近年、石井一久が東北楽天ゴールデンイーグルスのGMに就任しロッテも井口資仁が監督を務めるなど、かつての日本人メジャーリーガーが指導者や球団経営に携わるケースが増えてきている。アメリカ球界では常識となっていることを日本のチームに取り入れるようになってきた。

後輩から突然のラブコールを受けた上原も「日本の野球とアメリカの野球のいいところをそれぞれ取り入れていけばいいのかな?って思う。確かに伝統は大事だけど、いいものだけを残して、悪いものは省いていけばいい」と、指導者として復帰した際は旧態依然とした慣習にメスを入れることを考えているという。

そして話は来季から阿部が監督を務める二軍の話へ。未来の巨人を背負って立つ選手として2人から名前が挙がったのは弱冠19歳の戸郷翔征だった。阿部は戸郷の一軍初登板となった9月21日の対DeNA戦を思い出し、こう語った。

「この試合でソトに死球をぶつけているんだけど、一切、動じていなくてね。それで攻守交替のときに僕、戸郷に『お前、スゲーな!』って言いました。そうしたら戸郷は『ハイッ!』って(笑)。あれは大物になるかもしれないですね」

将来性豊かな19歳の投手の登場に笑みがこぼれた2人だが、上原は戸郷をはじめとした若手選手に対し「野球を第一に考えて生活して欲しい」と警告を鳴らした。

「二軍の選手はどこで化けるかわからないし、まだまだいい選手が出てくると思う。でも、野球を第一に考えて生活して欲しいよね。若いから、遊びたくなるのはわかるけど、野球は10年、長くても15年くらいしかプレーできない。でも、遊びはいつだってできるから。だからこそ真剣に野球に打ち込んでほしい」

5月まで二軍にいて、若手とともに汗を流した上原だからこそ感じるところがあったのだろう。指導する側に回る阿部も来季の指導方針を明かしてくれた。

「今の若い選手って、遠慮がちというかうまくなるために貪欲にならない。その中で僕は「野球選手は個人事業主」ということを教えていかないとなと思っています。単にチームについて行くだけでなくて、自分で考えて行動して殻を破るって、自分を出す。特にあとちょっとのことで開花する選手も多いから、しっかり教えていきたい」