【秋華賞】牝馬最後の一冠は、いつもと同じようで違うモノ

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2021.10.17

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ソダシ 写真:日刊スポーツ/アフロ

 いつものようでいつもと違う――

それが今年の秋華賞である。京都競馬場の改修工事の影響とは言え、創設26年目にして初めて舞台を京都から阪神に移し、それに伴いフルゲートも16頭に。図らずして今年の秋華賞はいつもとは違う大きな変化を迎えている。

 近年こそ、実力馬がいつも通りに走って順当な結果を収めてきたが、秋華賞の歴史を紐解けば波乱の連続だった。

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 例えば第1回。外国産馬ファビラスラフインが鮮やかに突き抜けた中、単勝1番人気に支持されたエアグルーヴが10着に負けた。

その3年後はトゥザヴィクトリーらの人気馬が総崩れした中で12番人気の超伏兵、ブゼンキャンドルが差し切って馬連は9万円台の大万馬券決着。

2008年には11番人気のブラックエンブレムが抜け出しただけでなく、8番人気のムードインディゴ、16番人気のプロヴィナージュが馬券に絡んだことで3連単はGI史上初の1000万円オーバー......。

これまでの25回を振り返れば秋華賞はいつも通りに収まったときといつも通りにいかなかったときの差が激しいことがよくわかる。

 そんな中で行われる今年の秋華賞。順当に考えれば純白の桜花賞馬、ソダシの独壇場となることだろう。

 走れば走るたび、その馬体に引き寄せられるかのように人々の注目を集めてきた彼女。無敗のまま2歳女王に輝いた彼女は年明け緒戦となった桜花賞すら難なく制し、桜の女王に。

しかし、二冠制覇を目指したオークスは距離の壁に泣かされ、いつものように伸びず8着完敗。生涯初の黒星を喫するという結果になった。

 秋華賞でのリベンジを期すため、ソダシ陣営が復帰緒戦に選んだのは札幌記念。デビュー戦、札幌2歳Sを制した北海道での復帰戦は一見、この馬にマッチしているようにも映ったが、同世代の牝馬だけでなく、初めて年長の馬たちともぶつかる。

しかも相手は2年前のオークスを制し、海外でも実績を挙げているラヴズオンリーユーら骨っぽいメンバーが揃った。前走で初黒星を喫したばかりのか弱い3歳牝馬には少々分の悪い一戦に見えた。

しかし、ソダシは屈しなかった。大外枠からのスタートながら積極的に前に行き、逃げるトーラスジェミニを見ながらの追走。その姿は古馬へ挑むというよりも、古馬に対して「一歩も引かない」という意思表示にも感じられた。

迎えた直線。ソダシは早めに先頭に立ってラヴズオンリーユーらの追撃を受ける形に。3歳牝馬らしからぬ思わぬ仕掛けに古馬たちも猛然と追い上げていったが、誰もソダシを捕まえることができずにそのままゴール。斤量の差があったとはいえ、ソダシにとっては収穫の多い一戦となった。

いつも通りに走れば、今回の秋華賞はソダシに適した舞台となるはず。というのも今年の秋華賞の舞台は先述した通り、阪神芝2000m。

例年の京都と比べると小回りで先行力が要求されるコースで、過去10年のオープン以上のレースで4角先頭馬の成績を見ると、京都芝2000mが[3・5・3・28]で勝率7.7%しかないのに対し、阪神芝2000mでは[9・9・4・41]で勝率はおよそ倍の14.3%。

3番人気以内の馬に絞れば勝率26.7%にまで跳ね上がる。いつもの走りをすれば、ソダシがそのまま押し切るのはほぼ間違いない。

だが、いつものように走れないこともあるのが秋華賞の怖さ。

今回のソダシに限って言えば死角はないように映るが、秋華賞と言えばソダシの伯母であるユキチャンが白毛馬初のGI出走を飾った舞台。どんなレースにも出れば「白毛馬初」というキャッチフレーズがついていたソダシにとって「白毛馬として2度目の出走」というのは初の体験である。

自らの走りで白毛馬にとっての初体験を経験し尽くしてきたソダシにとって、初めての体験。

未知の世界を切り拓くことを尊しとしてきた彼女の競走馬としてのキャリアを考えてきたとき、いつものようでいつもと違うことが起こっている。果たしてソダシは屈することなく二冠牝馬になることができるだろうか。

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秋に行われるレースである以上、秋華賞は上がり馬の台頭が期待される舞台でもある。夏競馬で飛躍した馬は多くいるが、その中でも狙うはローズSを制したアンドヴァラナウトだろう。

ダイナカールから連なる日本競馬史上屈指の牝系から誕生した彼女は体質の弱さも相まって、春は桜花賞の2週後に初勝利を挙げるなど、クラシックとは無縁の生活。

そんな彼女が変わったのが夏の条件戦でのこと。出雲崎特別では3番手から抜けだして勝利すると、返す刀で重賞初出走となるローズSでは上がり33秒8という豪脚で全馬を撫で切ってみせた。

前にソダシがいる以上、マークすべき相手と認識すれば、必然的に展開は前掛かりになる。後ろからレースを進めたいアンドヴァラナウトにとってはピッタリの流れとなるはず。祖母エアグルーヴが馬群に沈んだ大一番で孫がリベンジを期しても不思議はない。

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ファインルージュ 写真:日刊現代/アフロ

 春の既存勢力だって負けていない。

桜花賞3着馬ファインルージュは紫苑Sで中団から早めに動いて勝利して本番・秋華賞へ。

春のクラシック戦線をともに戦った福永祐一に寂しいものがあるが、クリストフ・ルメールとのコンビが復活。久々に跨ったルメールは、成長した彼女にどんなレースをするか注目したい。

そして最後に挙げたいのがオークス馬ユーバーレーベン。

オークスで念願とも言えるソダシ越えを果たした彼女はレース後に故障が見つかったが幸い軽傷で済み、秋華賞に駒を進めることが出来た。不屈の闘志を持つ彼女が思わぬアップセットを起こしてもおかしくない。

 いつもと同じように見えて、少し異なる今年の秋華賞。そのスタートが今から楽しみだ。

■文/福嶌弘

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第26回秋華賞(GI)
2021年10月17日(日)4回阪神4日 発走時刻:15時40分

枠順 馬名(性齢)騎手
1-1 スルーセブンシーズ(牝3)大野拓弥
1-2 ステラリア(牝3)武豊
2-3 クールキャット(牝3)和田竜二
2-4 ソダシ(牝3)吉田隼人
3-5 エイシンヒテン(牝3)松若風馬
3-6 スライリー(牝3)石川裕紀人
4-7 サルファーコスモス(牝3)川田将雅
4-8 エンスージアズム(牝3)岩田望来
5-9 アンドヴァラナウト(牝3)福永祐一
5-10 アールドヴィーヴル(牝3)松山弘平
6-11 ユーバーレーベン(牝3)M.デムーロ
6-12 アカイトリノムスメ(牝3)戸崎圭太
7-13 ホウオウイクセル(牝3)丸田恭介
7-14 ファインルージュ(牝3)C.ルメール
8-15 アナザーリリック(牝3)津村明秀
8-16 ミスフィガロ(牝3)藤岡康太

※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。