早稲田大学相撲部 たった一人の4年生キャプテン、大学最後の土俵
そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない
ここは早稲田大学相撲部の道場。
部の存続はOBでもある室伏監督の何よりの願い。
7人しかいない相撲部を苦労しながらも束ねるのは相撲愛と母校愛に背中を押されているからに他ならない。
チームを支えるマネージャーとキャプテン
部にはマネージャーもいる。
偏差値70の法学部に通う吉村千華はスマホの待ち受け画面はBTSでもSixTONESでもなく豊昇龍という相撲好き。
彼女の戦いは土俵の外にあった。コロナ禍前は稽古を見守る支援者たちが活動資金の拠り所だった。早稲田OBの相撲ファン、デーモン閣下とやくみつるさんがトップに名を連ね、ちゃんこ会などを開催して寄付を募ってきた。
だがコロナ禍の中ではそれもできない。そこでマネージャーはクラウドファンディングに目をつけ、自ら動いているのだ。
コロナに奪われた青春がどれだけあるのか。
2年前から取材させてもらっている二見颯騎は、今やキャプテンとなり気づけば4年生。卒業まで残り時間はもうわずか。せめて最後の花道を。
しかし今年は狙っていた大会が次々中止に。二見には最後の花道の舞台がなかった。
そうした中、7月の大会がようやく開催される運びに。ところが、大会前日、稽古でできた傷が化膿してしまった。熱は引いたが満足に歩けない状態。結果、痛みが引かず、出場を見送った。
大学最後の土俵
9月。二見は焦っていた。大学生活は残り半年、このまま終わるは嫌だ。
だがそこで恐れていた事態が。部員3人と室伏監督が新型コロナウイルスに感染。相撲部は12日間の活動停止となり、目指していた団体戦2試合も、出場を辞退することが決まった。
最大限の対策はしてきた中での出来事。誰のせいでもない。
けれど・・・二見のタイムリミットは刻々と近づいてきている。
早稲田大学相撲部、たった一人の4年生・二見に残された試合はインカレだけになってしまった。なんとか勝って卒業したい。
大学日本一を決める大会、インカレ。二見の大学最後の大会に彼らの気持ちは一つだった。
団体戦、まずは予選。早稲田は明治に敗れもう1試合も落として予選の最終戦を迎える。そう。これが二見の大学最後の土俵。
思い届かず、無念の黒星。4年生になって出た唯一の大会は一勝もできず、チームも予選敗退に終わった。
改めて知った土俵の厳しさ。早稲田大学相撲部の歴史を繋いだ一人。後輩たちに思いを託して、今後も相撲を続けるという。
二見の相撲道はまだ終わらない。