【宝塚記念 みどころ】一瞬たりとも見逃せない、上半期の締めくくり 夏の始まりを告げるグランプリ

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2022.6.25

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タイトルホルダー 写真:東京スポーツ/アフロ

 夏がはじまる合図―― 競馬ファンにとってそれは、宝塚記念のゲートが開く瞬間だろう。

 激闘続きだった今年の春のGⅠ戦線。1番人気馬が1つも勝てなかったことが大きな話題となったが、その一方で実力馬が復活を果たしたり、あと一歩届かなかった馬たちが悲願の勝利を挙げたりするなど、この春は新しいヒーローが毎週のように生まれた。

 そんな2022年の上半期を締めくくり、夏に向かう合図となるのがこの宝塚記念である。

激闘続きだった春のGI戦線を彩った馬たちが今年は5頭のGIホースを含む18頭がエントリー。夏のグランプリにふさわしい豪華な顔ぶれとなった印象すらある。

 新しいヒーローが続出したこの春、その中でも大将格に挙がるのは春の天皇賞を制したタイトルホルダーだろうか。

 昨年の菊花賞で23年ぶりとなる逃げ切り勝ちを収めて、文字通りGIタイトルをゲットした彼はその後、本物のステイヤーとしての道を歩み始めた。

鞍上が横山武史から兄である和生に乗り替わった有馬記念で5着に敗れると、今年の年明け緒戦に選んだ日経賞ではリベンジとばかりの逃げ切り勝ち。菊花賞の勝利がフロックでなかったことを自らの走りで証明した。

そして主役不在、混戦模様という下馬評で迎えた天皇賞(春)では菊花賞の再現とばかりに再び逃げの手を敢行。

無尽蔵のスタミナを武器にした逃げは誰一人寄せ付けることなく、直線ではディープボンド以下に7馬身もの大差をつけての逃げ切り勝ち。逃げたにもかかわらず、上がり3ハロンの時計もメンバー最速という離れ業をやってのけた。

 ここまで阪神の芝では2戦無敗、そのいずれもGIだったタイトルホルダーにとって、今回の条件はまさに願ってもいないほどの得意条件。

力の要る馬場を苦手とする様子もなく、普段通りのレースさえ見せてくれれば、勝ち負けは間違いないはず。3つ目のGIタイトルはもう目前に迫っていると言ってもいいだろう。

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エフフォーリア 写真:日刊スポーツ/アフロ

 そんなタイトルホルダーを誰よりも負かしたいと思っているのは、昨年の年度代表馬であるエフフォーリアではないだろうか。

 若武者・横山武史を背に圧倒的なスピードと瞬発力を武器にして皐月賞を制して世代の王に君臨すると、初古馬相手となった天皇賞(秋)では三冠馬コントレイル、短距離女王グランアレグリアを完封。

その勢いのまま臨んだ有馬記念でも中団から突き抜けて勝利。年間でGI 3勝を挙げ、文句なしで2021年の年度代表馬に輝いた。

 現役最強馬として迎えた2022年の春。エフフォーリアの始動戦は大阪杯だった。

皐月賞と同じ芝2000mの舞台はこの馬にとってベスト条件で出走馬のほとんどは格下の馬ばかり。まさに確勝を期したレースで、1番人気に推されるのはもちろん、単勝オッズは1.5倍という圧倒的な支持を得たが結果は9着。

久々の影響からか、勝負所で動けないまま直線でも伸びを欠いてしまった。

 この中間も陣営からは「本調子にはまだほど遠い」「いい頃のデキではない」と辛口なコメントばかりが目立ったが、新兵器であるブリンカーを装着して臨んだ最終追い切りでは抜群の動きを披露。

ようやく本来のエフフォーリアの姿が戻ってきたという声が聞かれるように。昨年の年度代表馬としての意地を仁川の地で見せることはできるだろうか。

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デアリングタクト 写真:日刊スポーツ/アフロ

 エフフォーリア以上に、この舞台での復活にかけているのが三冠牝馬デアリングタクトだろう。

 史上初となる無敗での牝馬三冠クラシック制覇を達成した才女はその後、先輩三冠牝馬アーモンドアイ、同期の牡馬クラシック三冠馬のコントレイルとジャパンCで真っ向からぶつかり初黒星となる3着に。

敗れはしたが、勝ったアーモンドアイとはたったの0.2秒差だったことから今後の競馬界を担う存在として注目されていた。

 しかし、明け4歳になっての緒戦である金鯱賞では伏兵のギベオンに逃げ切られての2着に敗れると、初の海外遠征となった香港のクイーンエリザベス2世Sでは3着とまさかの3連敗。そうこうしているうちに脚に故障を発症してしまい、およそ1年もの休養を余儀なくされた。

 そんなデアリングタクトが帰ってきたのが今年5月のヴィクトリアマイル。

プラス22キロという馬体重からもわかる通り、およそ1年ぶりの実戦は勝負にならないと誰もが思ったが、直線では最内を突いて伸びてくるなど、往年の走りを見せてくれた。この時は6着止まりだったが、一度使ってからの伸びしろは十分にある。

宝塚記念はここ2年、クロノジェネシスが制しているのをはじめ、牝馬が激走しやすい舞台でもある。天国も地獄も味わった三冠牝馬がもう一度輝くのにはふさわしい舞台と言えるだろう。

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ポタジェ 写真:東京スポーツ/アフロ

 デアリングタクトがまさかの完敗を喫した金鯱賞で光を見出したのが当時、上り馬としてエントリーしていたポタジェだった。

 重賞への出走とは無縁なものの、鋭い末脚を武器にデビュー以来一度も連対を外していないという安定感ある走りを見せたポタジェ。

初の重賞挑戦となった昨年の金鯱賞で3着に敗れてその記録は途絶えたが、それでも三冠牝馬にあと一歩と迫った脚は素晴らしいものがあり、近いうちに重賞制覇を果たすのはほぼ確実かと思われた。

しかし、そこからポタジェは伸び悩み。GⅠ初挑戦となった天皇賞(秋)で6着に敗れると、その後2戦は勝ち星どころか掲示板に入るのが精いっぱいという有様に。そうして迎えたのが今年の大阪杯だった。

もう勝負付けは済んだだろうと思われていた中でポタジェは中団を追走しながらレースの流れに乗ると、直線では猛然と伸びてきて勝利。念願の重賞タイトルはまさかのGⅠ初制覇と重なり、大波乱の主役となった。

あれから2ヵ月。ポタジェはその実力を証明するためにこの夏のグランプリへとエントリー。大外枠を引いてしまったが、このレースにおける大外枠はむしろ縁起のいいもの。勢いに乗った今だからこそ、再び大物喰いを果たしたい。

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パンサラッサとロードノースが1着同着 Photo by Horsephotos/Getty Images

 最後に紹介したいのはパンサラッサ。

この春、最も勢いに乗った馬といっても過言ではない新鋭である。

 昨年の夏までしがない2勝馬でしかなかった彼が変わったのは秋の東京開催から。オクトーバーSを逃げ切り、返す刀で臨んだ福島記念でも勝利して重賞初制覇。

急遽臨んだ有馬記念は距離の壁もあったかさすがに13着に敗れてしまったが、年明け緒戦に挑んだ中山記念では見違えるような走りで楽勝。

スピードの絶対値が違うと言わんばかりの逃げはかつての名馬、サイレンススズカと比較されるほどにまで成長した。

 そんなパンサラッサが次に挑んだのは世界の舞台。

ドバイターフへの遠征だった。世界各国の強豪馬が揃った大舞台でパンサラッサは一歩も引かないレースを見せ、直線では前年の覇者であるロードノース、そしてヴァンドギャルドと激しく競り合ってゴール。3頭横並びに見えた大激戦はロードノースと同着という形で勝利し、GⅠ初制覇を飾った。

 それ以来のレースとなる今回の宝塚記念。距離はギリギリ、同じ逃げ馬であるタイトルホルダーの存在が気掛かりではあるが、体調は調教師の矢作芳人が「光り輝いている」というほど、今がピークの仕上がりを見せている。

誰よりも勢いに乗った彼が、圧倒的なスピードを武器に押し切るだろうか。

夏競馬のはじまりを告げるグランプリ、宝塚記念。日差しよりも熱い2分10秒の競演がもう間もなくに迫っている。


■文/福嶌弘