2023年ドバイWCデー 真夜中に衝撃を与えた日本馬たち
ウシュバテソーロ 写真:AP/アフロ
メインレースであるドバイWCを含めたGI4戦、日本馬は18頭が挑み2勝を挙げるという大活躍。
GI以外のレースではUAEダービーでデルマソトカゲが圧勝し、日本馬が上位を独占するなど、まさに大活躍の1日になったのは間違いない。そんなドバイWCデーを振り返りたい。
まずはゴールデンシャヒーン。
これまで日本馬が勝ったことがないレースだけに、このレースに出走した4頭の日本馬たちには大きな注目が集まったが、スタートダッシュでそのうちの1頭、リメイクが出負けしてしまうなど、日本馬たちには不利な状況になってしまった。
ホプキンスやガナイトといったアメリカ勢が先行する中で、日本馬たちは中団やや後方からのレースとなってしまい、最後の直線は文字通りスピード勝負に。
人気を背負ったレモンポップらは懸命に脚を伸ばすが、前を行くアメリカ勢の馬たちがなかなか止まらず結果的に前に行ったスウィッツァランド、ガナイト、ホプキンス、そしてシベリウスらの4頭で決着。
日本馬では後方から追い込む形になったリメイクの5着が再先着という消化不良な結果に終わった。
少々物足りなさの残る結果に終わったとはいえ、日本馬再先着となったリメイクの鞍上、武豊は「世界のトップレベルで戦える、いい馬だ」と、パートナーへの賛辞を惜しまなかった。
リメイク 写真:AP_アフロ
続いて迎えたのはドバイターフ。
このレースでの大本命となるはずだったドウデュースが直前で出走を回避する形になり、混沌とした雰囲気が漂っていたが......結果的に日本馬は世界の壁に跳ね返される形になった。
イギリスのエルドラマが逃げの手を打ち、ネーションズプライドらの地元ゴドルフィン勢が追いかける展開となった中で日本馬はというと、セリフォスが中団に付けて流れに乗ったのを筆頭に軒並み後方からレースを進め、姉妹の末脚に賭ける展開となった。
そうして迎えた最後の直線、先に先頭に立ったネーションズプライドにこのレースを2連覇しているロードノースが迫るという展開になり、日本馬たちは後方で置いて行かれる形に。
残り100mのところでロードノースが先頭に立つが、日本馬たちは先行して踏ん張るセリフォスを後方からの脚に賭けたダノンベルーガが猛然と追い込むのが精いっぱい。
結果的にダノンベルーガは前を行くロードノースを捕らえることができずに2着に惜敗。ロードノースはこの勝利で前人未到のこのレース3連覇という快挙を成し遂げてみせた。
ちなみに先に動いて行ったセリフォスは最後の1ハロンが堪えたのか、直線で失速して5着に惜敗。図らずとも斤量の差、対古馬戦での成績が現れたようにも思える結果となった。
ダノンベルーガ 写真:ロイター/アフロ
3頭のGⅠホースが出走したドバイシーマクラシックではイクイノックスが逃げるという意外な展開に。
これまで日本では一度も逃げの手を打っていない馬だっただけにどうなるかと思われたが、スローな流れを作って先頭に立ったまま直線に入ると、持ったままで後続を突き放すという圧倒的なパフォーマンスを披露。
気が付けば、追ってくる馬たちを1馬身、2馬身......と見る見るうちに差をつけていき最終的には2着のウエストオーバーに3馬身半もの差をつけて楽々と逃げ切り勝ち。
勝ち時計の2分25秒65は従来の記録を1秒も縮めるスーパーレコード。これまでのレースの中で最も強い勝ち方を見せたと言っても過言ではない。
天才と称された日本のトップホースが世界の舞台でその才能を改めて見せつける形となり、鞍上のクリストフ・ルメールは「自分の馬が一番強いと思っていた」とパートナーの健闘を心から称え、2006年にこのレースを制し、2週間前に亡くなった相棒ハーツクライへの思いを口に。
先行して圧勝したイクイノックスの姿に17年前のハーツクライの姿を思い浮かべた方も多いことだろう。
イクイノックスがスーパーレコード勝利 写真:AP_アフロ
最後は日本馬が8頭もエントリーしたドバイワールドカップ。
スタート直後から大外枠に入ったパンサラッサと地元ドバイのリモースがハナを争い、その他の日本馬は軒並み後方からのレース。4連勝中だったウシュバテソーロは最後方に位置するほどだった。
1000mの通過タイムが1分を切るという速いペースの中、4コーナーを迎えるところでパンサラッサが失速。
直線では2番手に付けていたベンドゥーグ、アルジールスらが先に抜け出し先頭を争うことになったが、そこに飛んで来たのが道中は最後方で追走していたウシュバテソーロだった。
ウシュバテソーロ 写真:AP/アフロ
今回が初コンビとなる鞍上、川田将雅の鞭に応える形でグングンと伸びていったウシュバテソーロは前を行くアルジールスを残り200mの辺りでとらえて先頭に立つと、そのまま突き抜けて差を広げ、結果的に2馬身3/4のもの差をつける快勝。
日本馬としては2011年のヴィクトワールピサ以来となる快挙を成し遂げた。
昨年の4月にダートに転向してから破竹の5連勝で世界の頂点に立ったウシュバテソーロ。
8頭もの日本馬が参戦した中で、日本人の騎手とタッグを組んだのはこの馬とパンサラッサのみだったため、鞍上の川田は「日本人ジョッキーが世界で戦えることを示せて誇りに思う」と日本人騎手として史上初となるドバイワールドC制覇を心から喜んでいる様子だった。
真夜中に世界を震撼させた日本馬たち。異国の地で奮闘した彼らに今はただ、心からのエールを送りたい。
■文/福嶌弘