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張本智和が被災地に届けた国際大会V「苦しい試合でよく粘れた」

2021.03.15
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2021.03.15

この大会に懸ける張本智和(木下グループ)の思いが静かに爆発した。

カタール・ドーハを舞台に2週連続で初開催された卓球新シリーズ「WTT」の中東シリーズ。その2戦目にあたる「WTTスターコンテンダー」<3月5~13日>の最終日、男子シングルス決勝に臨んだ張本はエッジ気味になったマッチポイントのスマッシュを対戦相手に詫びるジェスチャーをした後、ウェアの胸元をそっとつまみ上げ「WASURENAI 3.11」(忘れない3.11)の文字をアピールした。

国際映像の画面に大映しになったわけではない。だが、日本人なら誰もが認識できる黒地に白抜きの文字。とりわけ東日本大震災の被災地の人々には胸が熱くなるシーンだっただろう。

2011年3月11日、7歳のとき宮城県仙台市で被災した張本は大会期間中に東日本大震災から10年の節目を迎えた。大会に臨むにあたっては今シーズン初の国際大会で必ずや優勝し、被災地に朗報を届けたいといつも以上に闘志を燃やしていた。

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張本智和 写真:新華社/アフロ


勝利への執念は如実に試合に表れた。自身の初戦となった2回戦のグナナセカラン(インド)、3回戦のアルナ(ナイジェリア)、準々決勝のチョンヨンシク(韓国)まで全て怒涛のストレート勝ち。

そして迎えた準決勝のオフチャロフ(ドイツ)戦は、前週の「WTTコンテンダー」男子シングルス準決勝で逆転負けした雪辱と決勝進出をかけた大一番となった。

第1ゲームを奪われた張本は中盤まで追いかける展開に。しかし、パワーで勝るオフチャロフに対し高い守備力を発揮してゲームカウント2-2 に並ぶと、第5ゲームでは形勢逆転。続く第6ゲームも盛り返しを図ろうとするオフチャロフの勢いを止めて、ゲームカウント4-2で勝負を決めた。

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張本智和 PHOTO:World Table Tennis


さらにドイツのカットマン、フィルスとの決勝では、対戦機会の少ないカットマンを相手に中盤、我慢を強いられる展開。球筋が読みきれないバックカットの回転変化と攻撃マン顔負けの両ハンドドライブに翻弄された張本は特にフォア側に揺さぶられたときにミスが出て、第5ゲームでゲームカウント3-2に追い上げられた。

こうなると焦って打ち急ぎが目立つ従来の張本。しかし、今回は違った。落ち着いて球筋を見極め攻撃を仕掛ける粘り強いプレーを見せ、逆にフィルスのほうに焦りが見え打ち急ぎのミスが出た。

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張本智和 PHOTO:World Table Tennis


こうして徐々にフィルスを追い詰めていった張本がゲームカウント4-2で勝利。冒頭の「WASURENAI 3.11」をアピールするパフォーマンスに至った。

 試合後、張本は自身のSNSで、「苦しい試合ばかりでしたが最後までよく粘れた大会でした! 3.11から10年というタイミングで行われた今大会はどうしても優勝してみなさんに勝利を届けたいと思っていました」と熱い胸の内を伝えた。

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「WASURENAI 3.11」をアピールする倉嶋洋介監督(左)張本智和 (右)


東京2020オリンピックが約4カ月後に迫った。日本のメダル獲得の鍵を握るシード争いにおいても今回、張本と女子シングルス2大会連続優勝の伊藤美誠(スターツ)は大きな勝利を日本に持ち帰った。

(文=高樹ミナ)

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