【公式】卓球ジャパン!2022年6月11日OA
6月11日放送の「卓球ジャパン!」は、9月30日に開幕予定の世界卓球2022団体戦攻略のカギを握るべく、過去の名勝負を徹底分析。
2018年2月のワールドカップ男子団体戦(ロンドン)について、自身も活躍した上田仁(T.T彩たま)をゲストに迎えてDEEPに解説した。
この大会は、絶対的エース、水谷隼がロシアリーグとの兼ね合いで不在だったのに加え、14歳の張本智和の世界団体戦デビュー戦でもあり、日本男子のターニングポイントとなった大会。
大きなプレッシャーを感じながらも日本男子はグループリーグ第1戦でエジプト、第2戦でイングランドを破り、決勝トーナメントにコマを進めた。
メダルをかけた準々決勝で対戦したのは強敵・香港。
日本は上田/丹羽孝希がダブルス、張本が2点使いのオーダー。張本はイングランド戦でピッチフォードに敗れていたが、東京五輪に向けてなんとしても張本を育てたい倉嶋洋介監督(当時)は「いくら負けても使い続ける」と語っていたと上田は明かす。倉嶋監督の覚悟が伺える貴重な証言だ。
第1試合から第4試合まで日本、香港と交互に取り、勝負の行方はその張本の第5試合に託された。
張本が世界ランク11位に対して相手の林兆恒は世界ランク58位と格下。しかし張本は第2試合で黄鎮廷に敗れていた。ピッチフォード戦を含めると2試合連続で0-3で敗れており、まだ14歳の張本にとって精神的にかなりキツイ状況。
黄鎮廷に負けた後、落ち込む張本に上田は「絶対にラストに回ってくるから準備しよう。そこで勝てばいいんだ」と声をかけていたという。
「その一言は大きかったと思います」と団体戦での心理を知るMC平野早矢香は語る。
張本不調の原因は、全日本チャンピオンとしてのプレッシャーが、気持ちの面で守りに入り、思い切ったプレーができないことに見えたと上田。それは責任感の裏返しでもある。
「実力は僕より張本選手の方が圧倒的に上でしたけど、経験は自分の方があったので、その部分を伝えようとしていました」と上田。
試合を決定づけたのは、1-1からの第3ゲーム、3-8と追い込まれた場面だった。迷いが吹っ切れたのか、バックハンドで思い切って相手のフォア側に振り抜いたプレー。
「張本のギアが上がったのがわかりました」(上田)
なんと張本はここから怒涛の8ポイント連取。11-8と大逆転でこのゲームを取ると第4ゲームは圧勝して、銅メダル以上を確定させた。
数々の逆転劇を見てきたMC武井壮も、途中からの張本のあまりの変わりように驚きを隠せない。
「試合後に"あそこで負けたら日本に帰れないと思いました"と14歳が言ってまして、エースとしての自覚に感心しました。そういった要素もあったんじゃないかなと思います」と上田。
そして迎えた準決勝、ワールドカップ男子団体史上初の決勝進出かかったこの大一番で、日本を待っていたのは、更なる強敵・韓国だった。これまで何度も苦杯をなめさせられてきた相手だ。
第1試合の上田/丹羽のダブルスと第2試合の張本が取り、日本は2-0と王手をかけたが、なんとそこから2連敗。最悪の流れでラストの上田vsチョン・サンウンを迎えた。
そして、この一戦が日本卓球史に残る名勝負となった。
香港戦で張本に語り聞かせたように「必ずラストに回って来る」と今度は自分自身に言い聞かせて心身の準備をしていた上田だったが、ほとんど同じ世界ランクのチョン・サンウンだけあって競りに競り、試合は最終ゲームに突入した。
上田が覚えているのは、5-6のスコアからフォアドライブ2連打で決めた会心のプレー。これで6-6としたが、なぜかそこで「落ち着いてしまった」と上田。直後からイージーミスが続き、気がつけば6-10。勝負の恐ろしいところだ。
「この4ポイントは見たくなかったですね本当に」と、この試合を覚えている武井が思わずつぶやく。
絶体絶命の状況になったとき、上田は、今度は相手のチョン・サンウンが数本前の自分と同じような心理にあることがわかり「チャンスがある」と思ったという。
そこから上田には、観客の歓声も拍手も聞こえなくなった。打球音と相手の息遣いだけが聞こえた。いわゆる"ゾーン"に入ったのだ。
「責任とか、負けたらどうするとか、全部消えた」(上田)
そこから10-10に追いつき、ジュースになった後も競り合いは続いたが、とうとう16-14で日本男子初の決勝進出を決めた。
上田が追い上げる途中、普段はクールな丹羽さえもが立ち上がってガッツポーズをした。 「僕の試合よりそれの方が話題になりましたね」とユーモアを交えて語る上田。
決勝では中国の壁を崩すことはできなかったが、水谷不在での決勝進出が、日本男子の自信になり、東京五輪でのメダル獲得につながったのだろう。
2022年世界卓球団体戦でも、新チームによる新しい歴史が作られるはずだ。
「卓球ジャパン!」 BSテレ東で毎週土曜夜10時放送