伊藤美誠 今季国際大会初V「野生の本能で戦っていた自分を取り戻したい」ベンチコーチ不在の理由

2023.02.17
SHARE
記事をシェア

伊藤美誠 PHOTO:World Table Tennis

伊藤美誠(スターツ)がヨルダンの首都アンマンで開かれたWTTコンテンダー(2月6〜12日)女子シングルスで優勝し、世界ランク6位から5位に浮上。

前週まで5位だった早田ひな(日本生命)と入れ替わる形で女子日本のトップに返り咲いた。

 日本の女子選手で唯一、同大会に出場した伊藤は第1シードから優勝を狙い1回戦でアクラ(インド/世界ランク79位)を破ると、2回戦は4日のTリーグ・ビクトリーマッチで惜敗した鄭怡静(台湾/同31位)にフルゲームで勝利。

 リベンジを果たした勢いで準々決勝はタカハシ(ブラジル/同28位)、準決勝はポルカノバ(オーストリア/同13位)を下して決勝へ駒を進めた。

 そして迎えた決勝では、香港のエース杜凱琹(同9位)と対戦。

 過去の対戦成績は6勝4敗と伊藤に分のある勝負ではあったが、第1ゲームで右肘の痛みを訴えた杜凱琹が途中棄権という予想外の結末となった。

 1月の全日本選手権では優勝候補に挙げられながら、女子シングルスベスト16に終わり涙を飲んだ伊藤。その直後とあってコンディションが心配されたが、得意の海外ツアーとなれば話は別。優勝トロフィーを手にして微笑む伊藤に復調の兆しも見えてきた。

しかし、その一方で気になったのは専属の松﨑太佑コーチがベンチにいなかったことだ。現地で体調でも崩したのだろうか? 

だが、真相は違った。伊藤本人の希望で松﨑コーチはあえてベンチから外れたというのだ。

 伊藤の考えはこうだ。「小さい頃、野生の本能で戦っていた自分を取り戻したい」

 周知の通り、伊藤は自身の直感やひらめきを大事にするタイプの選手。だからこそ相手の予想だにしない独創的なプレーが可能で、ゲームが進むに連れて慣れられてしまうバック表(ラケットのバック面に表ソフトラバーを貼っている)でも次々に独自の技術を編み出してきた。

 ところが、それらの武器をパリ五輪代表選考レースで発揮しきれず精彩を欠く最近の伊藤は精神的にキツそうだった。代表選考ポイントも現在4位と不本意な位置にいる。

そんな悶々とした現状を打破しようと思い立ったのが、自分で考え判断し、もっと自由にプレーして試合に勝つスタイルだ。
 
 もちろん、分析と戦術に長けた松﨑コーチがベンチにいないことのリスクもある。しかし、それを承知の上で伊藤は新たな方法にトライ。松﨑コーチは会場で動画撮影と分析に集中し、試合の前後に伊藤にアドバイスをしている。

伊藤美誠 写真:T.LEAGUE/アフロスポーツ

 そんな彼女が新たに掲げたテーマは「restart MIMA(リスタート美誠)」

 思えば東京五輪を目指すにあたっても「無敗の女」というテーマを掲げ、どんなに苦しい試合も凌いで勝てるようになった。その伊藤がパリ五輪で念願の女子シングルス金メダルを取るため、また新たなスタートを切った。

「これが自分で選んだ道です」と話す伊藤は、鹿児島市で17日に開催されるTリーグ・日本生命レッドエルフvs九州アスティーダ(あいハウジングアリーナ松元)でベンチ入り。

所属する日本生命レッドエルフのプレーオフ・ファイナル進出をかけ本領を発揮しようと気迫に満ちている。


(文=高樹ミナ)