【配信】伊藤美誠 第二章|https://youtu.be/M39bbkE8vao
東京オリンピック金メダリストの姿は、そこにはなかった。
パリオリンピック、卓球女子。同い年の"エース"早田ひなは故障を抱えながら奮闘し、もう一人の同世代・平野美宇もラケットを振り続ける。そして16歳の張本美和が躍動している時、伊藤美誠(24)の姿は長野にあった。
「赤しそ、おいしそう。あっ、あかシソ、おいシソ。ははは。めっちゃ、いいわ」
ラケットを持たずに、どこかへ出かける。24歳にして初めての経験。パリオリンピックはテレビで見ていた。
「夏休みは初めてです。行きたいところに行ったりとか、やりたいことをやったりとか。人生で初めてなんで。これだけゆっくりすることはないですね。ラケットを持たずに旅行できたことが一番のうれしさです」
それから2カ月後、初めての夏休みを終えた伊藤の姿はまたもや意外な場所にあった。フランスのある卓球場。再出発の第一歩は、"いい時の自分を蘇らせてくれるかもしれない"と考え、自ら踏み出した。
伊藤の強さの理由は、実にわかりやすい。自由奔放で型破り。わくわくするような、ひらめき卓球。
伊藤の代名詞でもある必殺技「美誠パンチ」はノーモーションのカウンターだが、これをここぞの場面で決めきる思い切りと度胸も伊藤のストロングポイントだ。大舞台が好きで、東京オリンピックでも笑顔の花を咲かせた。
しかし......。そこから運命は暗転する。苦しんだパリへの道。過密スケジュールの影響もあり、自分らしさを出すことができない。
ひらめきに満ちたプレーは影をひそめ、台頭する若手にも手を焼いた。第1回パリ五輪選考会では、当時15歳の張本美和に力負けした。
「どんどんボロボロになっていく自分がすごくあるので、卓球は好きなまま試合がしたい」と異例の策に出たこともあった。
通常、卓球の大会ではコーチがベンチに入りアドバイスを送ることができる。何かを変えたい伊藤は、2023シンガポールスマッシュで一人きりで試合に臨んだが、それでもかつての自分を取り戻すことはできなかった。
そしてそのままパリオリンピック代表の座には手が届かないままで終わった。
「大きな目標にしていたオリンピックは閉ざされてしまったんですけど、最後まで戦えたことはよかったと思います。これで終われないという気持ちはすごくあるんですけど、終わりたいという気持ちもあります」と伊藤は揺れ動く気持ちを吐露した。
一方、選考レースを独走したのは黄金世代の同い年、早田ひなだった。
無二の親友と公言する伊藤と早田。ダブルスも組み、"みまひな"は世界を席巻した。東京オリンピックでは早田が代表から落選。リザーブメンバーとなり練習相手を務めるなど、伊藤をサポートする役割に徹した。
そして、パリオリンピック。伊藤のいない舞台で早田は、左手を負傷しながらシングルスで銅メダルを獲得。
その姿ほど、伊藤を勇気づけたものはなかった。そして、自分が目指すところを決め、公言した。
「世界ランク1位になるのが目標です。世界の方で1位になるのが目標です。このままじゃ終われないし、終わりたくないし」
第一歩を踏み出したフランスには、会いたい人がいた。"その人に会えたら新しい自分にも会える"と伊藤は感じていた。自費で賄う武者修行。住所を頼りに目的地へたどり着くと、お目当ての選手はほどなく現れた。
フェリックス・ルブラン。
パリオリンピック男子団体3位決定戦で日本の前に立ちはだかり、シングルスでも銅メダルを獲得。
二つのメダルをフランスにもたらした英雄は、何とまだ18歳だ。持ち味は意外性で、ひらめきと創造が信条。つまり伊藤と同じタイプで、「美誠パンチ」に似たカウンターも得意にしている。
合同練習は和気あいあいとしたバレーボールから始まった。
「練習は楽しくなきゃ」と笑うルブラン。伊藤にとってはすべてが新鮮な環境だ。そして念願のルブランとの打ち合いが始まった。
フランスまで足を運んだのはこのため。「強い選手が自分を変えてくれると思ったから」である。伊藤の汗が止まらない。「1枚じゃ足りないな、タオル」。それほど夢中に打ち続けた。
相手は6歳も年下、18歳の高校生。やり取りしたボールは言葉の代わりであり、それは何よりも雄弁な会話となった。
「(卓球スタイルが)型にはまっていない、それがいいなと思って。自分は小さい頃からそういうタイプだったし、今でもそういう部分が欲しいと思うことがたくさんある。自分の良さを引き出せるチャンスになるんじゃないか、と思います。吸収するものが多くて、すごく楽しかったんですけど、すごくおなか一杯になりました」と伊藤は手ごたえを感じている。
"師匠"ルブランも「僕はそういうプレーが得意だからね。彼女もそれが上手だよ。彼女が良ければ、これからも国際試合の練習相手になりたいね。僕にとってはためになる」とこちらも収穫があった様子だ。
自ら踏み出した小さな一歩は大切な一歩であり、自分で築いた未来への懸け橋でもある。直後の大会では勝利を飾り、伊藤美誠の第二章はこれからが本番に入る。
手始めは20日から始まるWTTファイナルズ福岡。世界のトップ16が集まり、世界ランキング10位の伊藤も当然エントリーを済ませている。初戦は世界ランキング8位の大藤沙月との日本人対決となる。
「何かを変えたい。挑戦するきっかけが今年はたくさんあった。ヨーロッパでやってきたことがよかったと思えるようにしたいし、一戦一戦勝ち上がっていきたい。なるべく上に行きたいです」。自分を取り戻した伊藤のプレーから目が離せない。
テレ東リアライブ編集部
WTTファイナルズ福岡202
11月20日(水)〜24日(日)開催!<
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