張本智和 PHOTO:World Table Tennis
「僕は(サーブが)下手だと思っている」
意外な言葉だった。
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8月5日に行われた「WTTチャンピオンズ横浜」男子シングルス1回戦。オーストラリアの21歳、ラム(世界ランク44位)にストレート勝ちした直後、張本智和(トヨタ自動車/世界ランク5位)は自身のサーブ力をそう評した。
世界のトップ5に入る張本が、サーブが下手―――。もちろん、そんなわけはない。
「このレベルになれば、サーブがうまいのは当たり前なので」
本人がそう付け加えているように、あくまでも世界トップレベルの話。
実際、張本のサーブは完成度が高く、中でも、真下に鋭く切れる強烈な下回転サーブは持ち味の一つだ。相手のミスを誘い、甘く浮けば3球目攻撃で仕留める。
バリエーションは決して多くないかもしれないが、それには理由がある。
サーブ1本で得点を狙うのではなく、相手のレシーブの回転やコースを限定し、3球目攻撃、さらには得意のラリーにつなげるためだ。
卓球のサーブは強い変化をつければ、その影響が相手のレシーブに残る。それを読み切れなければ自分の3球目攻撃が難しくなる。いわば諸刃の剣でもある。
張本は、サーブの得点力が高い松島輝空(個人)や戸上隼輔(井村屋グループ)を引き合いに出し、こう語る。
「松島選手や戸上選手はサービスエースも取れれば、3球目でチャンスボールを生かすこともできる。僕はまだサーブが台から出るのが怖くて、回転をかけられないところがある」
しかし、ラム戦では違った。張本のサーブが台から出ることはなかったし、最終の第3ゲームは4-3の絶妙な場面でYGサーブに切り替えた。
「そこから一気に5点ぐらい取れた。1、2ゲーム目は横回転のサービスが効いていたけど、3ゲーム目は慣れられたので、YGに変えたことで一気に突き放すことができました」
さらに張本は「ラリーには絶対的な自信がある。ラリーだけで点を取ってきた自負があるので、そこに少しでもサーブ力が加われば、楽に勝てる試合が増えると思う」と続ける。
そこでこの1カ月、サーブ練習に重点を置いて取り組んできた。
きっかけとなったのは、6月から7月にかけて行われたWTT USスマッシュ。3回戦でロシアのシドレンコ(世界ランク16位)と初対戦しストレートで敗れた一戦だ。
「実力で負けたというより、(自分の)サーブで崩れてしまった。特に5ゲームマッチで2ゲームを先取されたら、ラリーでもどうしようもできない。自分に足りないところを一つ挙げるとすれば、サーブ力なのかなと思います」
とはいえ、近年ではバックサーブを取り入れるなどバリエーションも増えている。一つ一つの技術の精度も高い。
ならば必要なのは、どのサーブを、いつ使うのか。そして勝負どころで、それまでとは違うサーブを選択する勇気なのだろう。
ラム戦で見せたYGサーブへの切り替えは、サーブ強化の成果の一端と言える。
2回戦では、シドレンコとのリベンジマッチも期待されたが、シドレンコを下した向鵬(中国)との対戦が決まった。昨年の同大会でも準々決勝で対戦し、張本がゲームカウント4-2で勝利した相手だ。
試合は7日(金)午後5時30分に開始予定。横浜で2連覇を目指す張本智和のサーブの進化に注目したい。
文=高樹ミナ
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