長﨑美柚 PHOTO:World Table Tennis
8月8〜16日、スウェーデン南部の都市マルメで開催された「WTTヨーロッパスマッシュ」。
WTTシリーズ最高カテゴリーのこの大会で、女子シングルス2回戦で世界屈指のカットマン・橋本帆乃香(デンソー/世界ランク14位)が、3回戦で長﨑美柚(木下グループ/世界ランク19位)が台湾の新鋭に立て続けに敗れた。
日本代表の2人を破ったのは、彭郁涵(ポン・ユーハン)。2008年生まれの18歳だ。
目を引くのは、その独特なプレースタイルである。
フォア面に表ソフトラバー(以下、表ソフト)、バック面にアンチスピンラバー(以下、アンチ)を貼ったラケットをくるくると反転させ、異なる回転のボールを繰り出す。
反転術を使う選手は他にもいるが、彭郁涵ほど目まぐるしく反転させる選手は珍しい。
では、実際に対戦した選手には、彼女の卓球がどう映ったのか?
奇しくも長﨑は、2回戦でバックアンチの使い手であるウィンター(ドイツ/世界ランク8位)にストレート勝ちした翌日、初対戦の彭郁涵に1-3で敗れた。
そこで長﨑に、ウィンターとの違いを含めた彭郁涵のプレースタイルを分析してもらった。
異質が得意な長﨑でさえ「表ソフトとアンチの球質の落差がすごい」
―― 長﨑選手はもともと異質ラバーの選手に強いイメージがあります。今回、2回戦で勝ったウィンター選手にも4戦全勝と負けなしですね。
私の同級生に異質ラバーを使う強い選手が大勢いて、その選手たちに勝たないと1番になれない年代だったので、小学生のときからたくさん練習してきたことが今につながっていると思います。
例えば、出澤杏佳選手や相馬夢乃選手、森愛美選手など、他の年代に比べて異質の選手が強かったです。
―― 3回戦では異質ラバーの彭郁涵選手に敗れてしまいました。彭郁涵選手のラバーは組み合わせが特徴的ですが、やはりやりにくかったですか?
そうですね。彭郁涵選手は上回転のラリーに対する表ソフトの使い方は回転量が少なく、しっかり溜めて打つタイプではないため、早いタイミングでポンポン打ってくる感覚でした。唯一無二と言っていい、特徴的な選手だと思います。
―― 国内選考会などでジュニアの選手と対戦すると、球質の違いから調整しにくいことがありますが、それに近い感じでしょうか?
特定のボールの表ソフトとアンチの球質の落差が大きいので、調整できなかった部分があります。
通常、表ソフトで打つ上回転のボールは、私のボールの回転が半分になって返ってくる感覚がありますが、彼女の場合は上回転で飛んでくるようなイメージでした。
あと、ツッツキが本当に切れていて、「表なのに、なんでこんなに切れているのだろう?」と、少し衝撃的でした。
同じアンチでも「ウィンター選手とは全然違う」
―― アンチラバーのボールはどんな印象でしたか?
ウィンター選手のアンチは、すごく回転量の多い使い方をしますが、彭郁涵選手の場合はその真逆でナックルでした。
コースもツーバウンドするくらいの浅い返球が多かったです。なので、ウィンター選手と対戦した後だからこそ余計に対応が難しかった部分がありました。
―― ウィンター選手のアンチラバーはドイツ製のドクトル・ノイバウアーですが、彭郁涵選手は何を使っいるのでしょう?
私は相手選手のラバーを詳しく確認するタイプじゃないので、メーカーとかはよく分からないのですが、ウィンター選手のラバーとは全然違いますね。
両面を使っているように見える反転術。実は...
―― 彭郁涵選手はラケットをくるくる反転させるのがとても印象的ですが、あれも対戦する側にはやりにくそうですね。
どっちの面で打ってくるか、1球1球見極めなきゃいけないので、自分の動きが少し止まってしまいました。
ただ、ラケットをくるくる回してどっちの面も使っているように見えますが、表ソフトを使うパターン化された攻撃中心の戦術があると思いました。
―― 今回は5ゲームマッチでしたが、7ゲームあればまた展開は違ったと思いますか?
あと1ゲーム欲しかったなと思います。相手の攻撃パターンに気づいたのも試合が終わった後だったので、あと1ゲームあれば調整できたように思います。そう思うほど、初めてのタイプの選手でした。
ただ、反省点としては、自分の状態がすごく良かったので「こういうドライブで決めたい」とムキになって打ちすぎたところがあります。
もう少しゆるいボールも入れて、ラリーをしても良かったかもしれない。今回は、回転を操るのが上手な選手の手のひらで、コロコロ転がされたような感覚でした。これも今も自分の実力だと思います。
―― 次に対戦したら攻略できそうですか?
まだこれという方法は見つかっていませんが、試合前の準備は変えたいです。試合では攻めるばかりではなくつないで、自分の両ハンドドライブの威力を生かせる攻撃パターンに持っていきたいです。
文=高樹ミナ