2019.01.21
V10達成の水谷隼 全日本選手権引退を表明した真意とは
水谷隼 Photo:Itaru Chiba
7日間にわたる熱戦を繰り広げてきた「天皇杯・皇后杯 平成30年度全日本卓球選手権大会」(以下、全日本選手権)が1月20日、全ての日程を終え閉幕した。
昨年、張本に阻まれた全日本選手権通算10回目の優勝を果たした水谷は勝利の瞬間、アリーナ席に向かい観客の中に飛び込むパフォーマンスで喜びをあらわにした。聞けばその場所に熱烈な水谷ファンが陣取っていたとのこと。「その方々のおかげで、リオ2016オリンピックでメダルを取った後も燃え尽きずに頑張ってこられた。『ありがとう』という意味であそこに飛び込みたくなった」と支えになっているファンに感謝を気持ちを表した。
全日本卓球選手権大会 試合結果一覧
だが、その直後の優勝インタビューで会場は騒然とする。水谷が「今年で最後の全日本選手権にしたい」と宣言したからだ。本人の真意はこうだ。
「決勝で勝つことももちろん大変だが、決勝の舞台に立つのも本当に苦しい。苦しすぎて耐えられなくて、全日本選手権が始まった初日から『早く終わらないかな』って、毎日思っちゃうんですよね」
「去年、(通算V10を)達成していたら、今年は出場していなかったと思う。10回優勝でキリがいいし、勝って終わりたいという気持ちは強かったので以前から決めていた。自分がこれから伸びていく選手だったらいいが、自分の中で少しずつ限界を感じていく中で、ボロボロになって戦って、周りの人を悲しませるのは僕の中では許せない。自分が負けて悲しむ人がすごくたくさんいるので。それよりは勝って気持ちよく終わった方が自分にとってもファンにとっても、いい選択かなと思う」
水谷が全日本選手権の舞台から去るのは寂しいことだが、その一方では「これからも若手選手の壁になりたい」とも。
「男女ともに若手の選手が力をつけてきていて、卓球のスタイルも前人速攻でないと勝てないと言われている。僕らの世代はそれに対応できていなくて、年齢を重ねれば重ねるほどパフォーマンスも落ちてくる。ただ、僕らの世代が海外のプロリーグで学んできたことや経験を伝える意味はあると思う」と話し、たとえ全日本選手権に出場しなくても、ワールドツアーや世界卓球をはじめとする国際大会、ナショナルチームの合宿などで存在感を表すことで、「まだ水谷には叶わない、水谷を超えたいと後輩たちに思わせる存在でありたいし、僕自身、もっと強くなりたいと思っている」と現役続行の意欲を強調した。
いよいよレギュラーシーズンが佳境を迎える2月のTリーグにも、自身が所属する木下マイスター東京の8試合全てに出場予定という水谷。これからも卓球と水谷を愛してやまないファンを楽しませてくれることだろう。
(文=高樹ミナ)