CMアワード グランプリ決定!
絵本というフォーマットを使って見せた本作は、懐かしさ、暖かさを感じさせつつも、新しさがしっかり存在するオリジナリティある作品でした。卓球やCMに対するアプローチも他の作品とは全く異なり、多くの審査員から高い評価を得ました。CMという短い尺の中に描かれた、お父さんと娘のほのぼのとしたやりとり。派手さはありませんが、じんわりと心に残る作品でした。途中がカットが短すぎてわかりづらい部分もありましたが、それを補って余りある魅力がありました。お父さんと娘の会話(かわいらしい声)、最後の親子のセリフがまた素敵です。作者の卓球愛を感じたすばらしい作品でした。
地球が開催地の国旗が描かれた球を打っていき、世界卓球の歴史を見せるというCG作品。派手な動きはなく、一見単調ですが、卓球の音に合った細かいアニメーションがとても気持ちよく、飽きることなく最後まで見せてくれます。とにかくテンポが良く、作者の力量を感じた作品でした。もう1捻り何かアイデアやダイナミックな演出があれば、さらに光る作品になったと思います。ずば抜けてインパクトのある作品ではありませんが、誠実な作りに、総合的に高い評価を得た作品でした。
卓球というスポーツを文字のみで上手く表現したところがすばらしいです。極めてシンプルな作品ですが、卓球のスピード感、選手の研ぎすまされた感覚を最も上手く表現できていた作品かもしれません。文字の動きや、最後のロゴを使った細かい演出まで、作者のセンスが光ります。欲を言えば、文字の動きにもう少しバリエーションや、更なるスピード感が欲しかったところ。それこそ実際のTVCMとして流してもおかしくない、見応えある作品になったかもしれません。
ラケットを使った一発ネタの作品ですが、これはなかなか予想できない意表をつくアイデアでした。くだらないネタを、あえてサラリとさりげなく見せるところが上手いですね。こういうものは、やりすぎると、逆に笑えなくなったりしてしまうもの。この狙いすぎないバランス感覚がすばらしい。「その頭どうなん?」「まあ、いいけど。。。」台詞も極めて自然でいいですね。
ネット動画を象徴するような、力の抜けた、たわいもない会話劇の作品。でもこのユルさが、何より面白い。ノリと勢いだけで笑わせるような作品ですが、それを実際に作るにはとびきりのセンスと細かいテクニックが必要だったりします。今回、賛否が分かれる評価だったため、グランプリとはなりませんでしたが、 個人的には一番好きな作品でした。実際のTVCMとしてそのまま流しても何の遜色もない、むしろ、そのへんのCMよりよっぽどインパクトのあるすばらしいクオリティの作品だと勝手に思っています。
今回の作品の中で、最もアイデアが面白く、その表現もくだらなくて、多くの審査員から高い評価を得た作品でした。バイラル的な要素もあり、ネットCMとしては最も効果的な作品かもしれません。「選手を痛めつける」という表現がちょっとNGという意見もあり、惜しくもグランプリ候補からは漏れましたが、(逆に、バイラルCM目指すなら、もっと本気でボコボコにやりきって欲しかったという意見も。)この"球のストライキ”というアイデアはやはり秀逸で、何か賞をあげるべきだということで、審査委員長特別賞とさせていただきました。
真島理一郎
映像作家・アニメーション監督・映画監督
IDIOTS代表
今回、賞から漏れた作品の中にも、技術力のある、手間隙かけた作品や、素敵なアイデアの作品も数多く存在し、正直、賞を選ぶのが非常に難しかったところです。ちょっと手を加えれば実際のCMとしても使えそうな質の高い作品もいくつか見られました。ただ、今回は、webならではの、今までにない新しいCM作品を評価しようということで、クオリティではなく、オリジナリティを重視しました。
結果的に質の高い力作が賞から漏れてしまったことは申し訳ないところですが、しかし、「本物のCMっぽいね」「こういう作品あるよね」と思わせるような作品は、やはりインパクトとしては弱くならざるを得ません。それは“CM”としては大きなマイナス点となります。
全体的に感じたことですが、どの作品もそれなりにクオリティが高く、“CM作品” としてしっかりとまとまっているものが予想以上に多かったです。その頑張りに驚かされ、感心する一方で、既存のCMをぶちこわすような荒々しいパワーのある作品、唖然とするようなぶっ飛んだ作品が予想より少なかったのが少し残念でした。そういう中で、今回受賞した作品は、どれもオリジナリティのあるフレッシュな作品でした。クオリティではもちろんプロの作品にはかないませんが、そのアイデアや表現方法は既存CMに負けない力を秘めていると思います。
と、いろいろと言いつつも、どの作品からも、“とびきりの卓球愛” が感じられたことが何よりもうれしかったです。