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第7回:「2人のルーキー」

 
「アイツより僕のほうが融通が利いていいと思ってたけど、
今は何投げても打たれそうな気がする」。

これは読売ジャイアンツのルーキー久保裕也投手の言葉だ。
そしてもちろん「アイツ」とは、同期入団木佐貫洋投手のこと。
この2人は私にとって、そのプロ野球人生をスタートさせた時から取材している
数少ない選手だ。

だからなのか、私はどうしてもそれぞれに強い思い入れを抱いてしまう。
木佐貫投手のプロ初先発は胸が張り裂けそうだった。
開幕3戦目、彼にとっては晴れ舞台になるはずだったのに わずか2回ともたず5失点。
マウンドから引きずりおろされた。
常日頃から「自分不器用なんで」と語る木佐貫投手。
ベンチでうかべる彼の表情はこぼれ落ちそうになる涙をまばたきと汗で
必死にごまかそうとしているように、私には見えた。
ルーキー木佐貫投手は、苦いスタートをきった。

対照的に、久保投手は中継ぎとして華々しいデビューを飾った。
1点差で登場し、3人でぴしゃり。彼の評価は大物だったり、強心臓だったり。
「僕、世渡りがうまいんです」と得意げに語る彼は自分を超ポジティブシンキングと分析し、 女性記者を見つけては「今日もお綺麗ですね」。
先発にまわっても「中継ぎの経験が生きてるんじゃないですかね」と頼もしい。
彼のプロ野球人生は今まで生きてきたのと同様、順風満帆にすべりだした。
--かに見えた。しかし
6月21日、いつものように8回から堂々とマウンドに上がり
いつもでは想像もつかない乱打を浴びた。 3失点降板。
私が知ってる久保投手じゃなかった。
6月27日、あれから日が浅い。引きずってなければいいがと懸念していた矢先だった。
7連続奪三振という素晴らしい球団タイ記録をつくった後、
突如連打され四球を出して逆転された。 繊細なガラスみたいだった。

後日、普段なら愛嬌のある笑みを浮かべて寄ってくる久保投手の目は
力なく言葉少なげに感情を吐いた。
「自信がない・・・・。プロに入った当初は木佐貫より僕のほうが、
先発でも中継ぎでもいろんな場面で使ってもらって得だなと思ってた。
でも今は何投げても打たれるような気がする。こんなの初めてです。
もうマイナス思考になってしまって・・」
彼はおそらく、人生でも野球でも初めての大きな壁にぶちあたっていたんだと思う。
今まで順風満帆できたばかりに、起き上がり方をなかなか見つけ出せないでいたんだと思う。

その頃、不器用な男木佐貫洋は、失敗からちゃんと起き上がっていた。
いつも彼がそうしてきたように。
彼は試合を重ねる度に目に見えて良くなっていった。
そして現在も活躍を続けている。

2人を見ててよく頭に浮かんでくる言葉がある。
- 好対照 -
外車に乗って遊びも少し覚え始めた久保投手。
そして 国産車をたまに降りて趣味の散歩を楽しむ木佐貫投手。
何から何まで違う2人だけど、ただ2人はよく笑いながらこう言う。
「あいつはあ〜いうやつですからね〜」
その一言だけでお互いを認め合ってることが手に取るようにわかる。
私はというと、その言葉を微笑ましく聞きながら、
同期の倉野の顔なんかをぼんやり思い浮かべている。



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