灼熱の夏、シネスイッチ銀座・
関内アカデミーにてロードショー

<全国順次公開予定>
大阪 :パラダイスシネマ
名古屋 :シネプラザ
札幌 :三越名画劇場
福岡 :KBCシネマ






 独自の掟によって生き続ける誇り高き民族ジプシー。固い絆で結ばれた彼らは、なによりも男の名誉を重んじ、それを守るためには死をも辞さない。魅惑的なフラメンコのパーカッショニスト、アンドレは、その熱い血を受け継いだがゆえに、ファミリーの悲劇的な抗争の渦に呑み込まれ、ふたりの女の激しい愛と裏切りに揺れ動く……。『ジターノ』は、脈々と受け継がれてきたジプシーの血を引く魅惑的な男が愛と復讐の狭間で苦悩するせつない物語。いま、そんな男が似合うラテン系の俳優といったら、誰だろう? もちろん、アントニオ・バンデラスをはじめ、『夜になるまえに』でアカデミー賞候補になったスペインの演技派ハビエル・バルデムや、『トラフィック』でアカデミー賞助演男優賞を獲得したプエルトリコ生まれのベニチオ・デル・トロ。そして、『オープン・ユア・アイズ』をヒットさせたスペイン産美形のエドゥアルド・ノリエガも新作『パズル』に主演し、ラテンの男は大活躍。しかし、華麗なるミュージシャンの風情をそなえつつトライアングルな愛の罠に惑わされる男となると、彼らでも演じるのは難しい。となれば、真打ちの登場である。93年、スペインの鬼才ペドロ・アルモドヴァル監督の『私の秘密の花』で、その美しき姿をスクリーンに焼き付けたホアキン・コルテス。決して多くはなかった登場シーンにも関わらず、世界中の女性たちの目を釘付けにし、熱い視線を浴びたフラメンコ界のスーパースターだ。『ジターノ』は、その絶大な人気を誇るホアキンの待望の初主演作である。

 もちろん、本格的な演技は本作が初めてのホアキン。しかし、95年の初演以来、世界中で熱狂的な人気を獲得し、98年には日本公演でも5万人の観客を動員したショウ『ジ プシー・パッション』を見れば一目瞭然。フラメンコとバレエを融合させたその舞台は、チャプターごとに愛のドラマが綴られる仕掛けだ。躍動する肉体、哀愁をおびたまなざし、乱れる黒髪さえもがエモーショナルに揺れ動き、全身で物語を語り尽くしていた。
 そんなホアキンだけに、激しいフラメンコのリズムに身をゆだね、ひたむきに真実の愛を追い求めるジプシーの男アンドレという、まさに等身大の自分を反映させたハマリ役を得たとなれば、演技力もさく裂。因襲から抜け出すことの出来ない焦燥感、見えない糸に操られる不安感、裏切りに脅える絶望感など、多くの感情の機微をちょっとした仕草や視線で繊細に体現していく。そしてなにより、愛に燃える濡れたまなざしの激しくも美しいこと! もちろん、カホン(パーカッションの一種)を打ち鳴らしリズムと一体になった恍惚の風情も素顔を彷彿とさせ、まさに触れれば火傷しそう。
 
 ホアキンと恋のトライアングルを織りなす女優たちにも、注目だ。
 セクシーでミステリアスな妻ルシアを演じたのは、レティシア・カルタ。スーパーモデルとして活躍し、フランスの超大作「Asterix and Obelix take on Caesar」(99)で編映画のデビューを果たした彼女は、“カトリーヌ・ドヌーヴ以来の女神の誕生”ともっぱらの評判。その肉感的な美しさとは裏腹に、時おり見せるあどけない表情は、まさに小悪魔の魅力。男なら誰だって虜になる。そして、彼女とは対照的な魅力を発散するのが、姉ロラを演じたマルタ・ベラウステギ。穏やかで慈愛に満ちた表情ながら、内には愛を貫強い意志がある。その凛とした美しさには誰もが癒されること請け合いだ。そして、このふたりのまったくタイプの違った女性ふたりの好演があればこそ、アンドレをめぐる愛の三角関係がいっそう味わい深く、ロマンチックに心に響いてくるのはいうまでもない。


 監督は、マヌエル・パラシオス。これまで、TVや広告業界で活躍しつつ、多くの 舞台やドキュメンタリ−を手がけた才人。それだけに、スペイン版『ゴッド・ファーザー』ともいうべきジプシーの複雑にしてスリリングな抗争を背景にしながらも、運命に翻弄される愛を際立たせ、重層的な演出をみごとにクリアしている。もちろん、躍動感あふれるホアキン・コルテスの魅力を余すところなく、スクリーンに花開かせているのが、最大の功績ではあるのだが。
 舞台となったグラナダの風景も見逃せない。太陽のきらめく昼と月明かりに照らされた夜ではまったく表情を異にする古い町並み。この美しさには、歴史の重みとロマンチックな香りが漂いとにかく目を見張る。とくに、アルハンブラ宮殿でロケされたクライマックスのシーンは、光と影を駆使したミステリアスな映像で、味わいは格別だ。そして、その町並みに漂うように流れるのが、魅惑のスペイン・ミュージック。フラメンコの激しいリズム、哀切をおびた歌声、陽気なスパニッシュ・ギターの響き……。いずれもがエキゾチックな愛の世界へと誘ってくれる。
 
 
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