タイ、バンコク。眠りにつかないこの街の片隅に、ひとりの少年がいた。生まれつき耳が聞こえないコンは、身よりもなく、友人もなく、この大都会をたった一人で生きている。ある日、コンの働く射撃場にひとりの男が現れる。鋭い目で標的に狙いを定め、つぎつぎと的を射抜いていく。殺し屋のジョーだった。じっと見つめるコンの視線に気づいたジョーは彼に銃を差し出す。コンがかまえた銃は一発でターゲットを撃ち抜いた。ジョーは、コンを殺し屋に育て上げ、いっしょに仕事をするようになる。ボスからの仕事を持ってくるのはジョーの彼女のオームの役目。人気のないビルの屋上でターゲットを狙うコンは、耳が聞こえない彼をいじめた少年たちに復讐するかのように、引き金を引きつづける…。数年がたった。コンは凄腕の殺し屋になっていたが、ジョーは利き手を負傷しリタイアしていた。最愛のオームすら遠ざけ、すさんだ生活を送るジョー。「俺は終わりだ」とつぶやく彼は「恩を受けたらそれに報いろ。煮え湯を飲まされたら復讐だ」とコンに言い聞かせる。そのコンは、熱を出して訪れた薬局で、美しい少女フォンと出逢う。自分の症状を説明することのできないコンの額にすっと当てられた手。それは初めて経験する女性のぬくもりだった。障害などないかのように接してくれるフォンに、コンは今まで誰にも感じたことのなかった気持ちを抱く。フォンもまた、どこか謎めいたこの青年に惹かれていた。休日に遊園地に行き、ごく普通のカップルのようにゲームをしたり、映画を観たりする二人。しかし、夜の 公園で悲劇が訪れる。「金を出せ」とフォンをはがいじめにした強盗をコンが撃ち殺してしまったのだ。人を冷酷に殺すコンにショックを受けたフォンはそのまま走り去ってしまう。ジョーとオームにも悲劇が襲っていた。オームがボスの客のギャングにレイプされたのだ。それを知ったジョーはオームの復讐のため、ギャングを殺す。「また仕事ができる───」仕事に復帰できて喜ぶジョー。しかし喜びはつかの間だった。金づるを殺されたボスは巧妙に細工した空砲入りの銃でジョーをだまして惨殺する。ジョーの死を知ったコンは、生まれてはじめて、人を失う悲しみを経験していた。ジョーの復讐のためボスを殺す──コンはオームにそう誓うが、その時テレビに彼が殺した人物が大写しになる。コンがボスの依頼で殺したのは、立派な人柄で知られるテレビ局経営者だった。悲しみにくれる遺族を目の当たりにしたコンはショックを受けるが、そこにボスの手下が襲いかかる。事件の追及を恐れ、殺し屋の口を封じようとするボスの差し金だった。必死で逃げるコンとオームだったが、オームを殺され、コンはとうとう独りぼっちになってしまう。公園の事件以来、ふさぎこんでいるフォンのところにコンがやってきた。手紙を渡し、バイクに乗って去っていく。その手紙には「僕が何をしているか、君は知ってしまった。でも君に会えてよかった。僕のことを気にかけ、互いに愛を感じた人がいた…」と残されていた。降りしきる雨の中、コンを追ったフォンがたどりついたのはボスのアジトだった…。



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