社運をかけたバーゲンセールの真っ最中、勤務先のデパートで脳溢血のため突然死した椿山課長。目覚めるとそこは、天国と地獄の中間点にある“中陰役所”と呼ばれる場所だった。中陰役所の担当者・マヤによれば、死者は皆死後四日目にこの中陰役所にたどり着くのだという。この役所で「天国行き」か「地獄行き」かの審判が下されるのだが、審査基準は昔に比べるとかなりゆるくなっており、自己申告で永遠絶対の“消滅”に至ることも出来るし、よほどの悪人でなければ天国行きもほぼ保証されているらしい。ただし自分の死に納得いかず、かつ戻るべき事情が十分ある者は、厳正な審査のもと現世への“逆送”が特別に許可される。逆送期間は初七日まで。つまりすでに死後四日が経っているので、残された時間はあと三日間のみ。禁止事項は「正体の暴露」と「復讐」。これを破れば“怖いこと”になるという。
妻と小学生の息子、施設で暮らす認知症の父、21年分残っている家のローン、自分が抜けて困っているはずの職場……。現世に未練たっぷりの椿山は「冗談じゃない。俺はまだ死にたくない!」と、逆送を申請する。希望通り逆送は認可されたが、それは彼が生前に“重大な事実”を知らされていなかったことが、あまりにも気の毒だという役所のお情けからだった。
椿山の他に、逆送されるメンバーは二人。一人は、射殺されたヤクザの親分・武田。彼が戻らなければ、無益に人が殺し殺されるため、それを事前に阻止すべく逆送が許された。もう一人は雄一という小学生。理由は「生みの親にひと目会いたい」という切実なもの。椿山は、自分の息子と同じ年頃の雄一を哀れに思い、逆送期間中の保護者役を買って出る。
かくして三人はこの世に逆送される。都内のホテルの一室で目覚めた椿山は驚く。生前の姿とは似ても似つかない絶世の美女・椿となってよみがえっていたのだ! 雄一は可憐な美少女・蓮子へと変身していた。
一方、ヤクザの武田は美貌のヘアスタイリスト・竹内となってよみがえった。自分が殺された原因を探りに、弟分のヤクザ組長・市川大介を訪ねる竹内。突然の訪問をいぶかる市川に、竹内は武田の息子だとウソをつく。
蓮子の生みの親探しの手がかりを求め、椿と蓮子は育ての親の家を訪ねるが、そっけない母親の態度にがっかりする二人。泣き出す蓮子を励ましながら、椿は蓮子とともに父親・昭三がいる施設へと向かう。その道すがら、椿はベンチに座りノートパソコンを巧みに操る昭三の姿を見てびっくり。息子夫婦の家庭の平和を守るために認知症に罹ったフリをしているという昭三の告白にさらに驚く。衝撃を受けながらも椿は、かつて福祉の仕事に従事していた昭三に、蓮子の実の親を探してくれるよう頼み、昭三はそれを快諾した。
“重大な事実”とは父の秘密のことだと思った椿はマヤに電話するが、マヤが言うにはまだまだ意外な“事実”が待っているという。家族のことが気がかりな椿は蓮子とともに自宅へ。
死んだ夫に線香をあげにやって来た、見知らぬ女・椿を、妻・由紀は疑惑のまなざしで迎える。自分の遺影と位牌を見て、思わず号泣する椿。その姿を見て「もしや夫の愛人!?」と怪しんだ由紀は追い返そうとし、二人はもみあいになる。そこに湯上がりバスローブ姿の男が仲裁に入る。
それはなんと椿山課長の部下・嶋田だった! 知りたくなかった事実。まさか妻と部下がデキていたなんて……。一方、大人たちの痴話喧嘩がけたたましく繰り広げられる椿山家の片隅では、蓮子と椿山の息子・陽介が語り合い、いつしか仲良しになっていた。
妻の不倫を知り、むしゃくしゃした椿はホテルのバーでやけ酒をあおる。そこに竹内がふらりと現れ、椿を口説く。竹内の部屋に誘われ、甘い雰囲気が漂いはじめたところで、お互いの手首にマヤから渡されたものと同じ時計を発見する。「あの時の中年男ですよ!」 正体が分かり、ベッドの上で爆笑する二人。
二日目。蓮子の記憶に従い、かつて蓮子がいた孤児院は羽田空港の近くにある養護施設だと特定した昭三。しかしその条件に当てはまるのは目の前にいる蓮子ではなく、雄一という男の子であることを蓮子と陽介に告げ、「いくら親しい友だちであったとしても、本人以外に知る権利はない」と優しく諭す。雄一は自分なのだと、正体を明かすことが出来ない蓮子はうなだれる。
一方、椿は自分のかつていた職場に出向き、嶋田を呼び出す。行きつけの喫茶店で嶋田と向かい合った椿は、椿山と結婚する前に妻・由紀と嶋田が付き合っていたこと、結婚後に再会し関係を続けていたことを聞かされる。しかし、嶋田が上司だった椿山を心から尊敬していたことも分かり、フクザツな思いを抱くのだった。そこに椿山と同期入社の親友・知子が入ってくる。知子は椿山との思い出を語り、意気投合した二人はデパートの閉店後にまた会おうと約束する。
竹内はかつての自分の事務所・武田組に赴き、居残っていた若い子分・純一にカタギになれと説得する。初めはいぶかりながらも、徐々に説得に応じる純一。しかし別の若い衆・卓人が親分の仇を討とうとしている事を知る。卓人を止めなければ、無益な血が流れてしまう!
昭三の言葉を頼りに、施設を訪ねた蓮子と陽介。女先生に、雄一が死んだことを告げ、彼から頼まれていたと情に訴え、生みの親の名前を聞き出す。父は市川大介、母は静子。さらに女先生は、その親は怖い職業の人だったと教える。ピンと来る蓮子。
子分の卓人を探すため市川事務所を訪れた竹内の携帯電話に、蓮子から連絡が入った。「市川大介という人を知っている? 私のお父さんなの……」意外な事実に驚きながらも、必ず明日会わせると約束する竹内。その夜、竹内は市川夫妻からヤクザものゆえ、子供を捨てざるを得なかった悲しい物語を聞かされる。
椿は、知子の部屋でビールを飲みながら思い出話を聞かされる。知子は、いかに椿山を愛していたか、そしてどれほど結婚したかったかを吐露する。初めて知った知子の秘めた想いに、胸を熱くする椿。
三日目。椿は蓮子と陽介を連れて、蓮子の親=市川夫妻に会うためタクシーに乗り込む。雄一の代役を依頼する蓮子に、陽介は快諾し、意外な告白をする。自分も実の親ではない人に育てられた。父の通夜の時、母が嶋田を紹介し、この人が本当の父親だと教えられたと。告白のあまりの衝撃度にふらつく椿。重大すぎる……!
市川邸に到着した椿一行。市川夫妻と対面した陽介は、雄一のフリをして、「生んでくれてありがとう、それが言いたくて来ました」と告げる。大粒の涙を流しながら、陽介を抱きしめる市川夫妻。
そこに突然、特攻服に身を包んだ男がガラス窓を割り飛び込んでくる。武田の子分・卓人だ。市川に拳銃を向ける卓人。竹内は市川をかばおうと自ら銃弾に向かって行く。弾は竹内に命中。息も絶え絶えに卓人に遺書を渡すと、竹内はほほ笑みながら “消滅”した。
目の前で起こった超常現象に一同は大混乱。そのさなか、市川夫人は蓮子に何かを感じ、じっと見つめる。蓮子はただ一言、ありがとうとつぶやく。蓮子を抱きしめる市川夫人。その腕のなかで、蓮子が静かに消滅する。
伝えたかった想い、好きな人に会えた喜び、誰かをいとおしいと思う気持ち……。この3日間のうちに、いろんな形の“愛”を知った椿こと椿山は、残された現世でのわずかな時間を精一杯過ごそうと、ある決意をする――。