現在79歳。50年以上、第一線で活躍し続ける詩人。国語の教科書などで、その作品に触れた人も多いだろう。詩だけではなく、作詞、絵本なども手がけるほか、あの「スヌーピー」の翻訳者としても知られている。日本で”最も幅広い読者層”を持つ人物だ。
■谷川さんが薦める本
「ちんろろきしし」/元永定正(福音間書店)
著者はモダンアートの第一人者、元永定正。目を奪われるような真っ赤な表紙をめくると、描かれているのは不思議な絵と文字の組み合わせ・・・。抽象画ならぬ、抽象絵本といった感じの一冊。そして何よりも驚くのは「この本の絵や言葉には全く意味がない」ということ。
【人を解き放つ本】
「こういうナンセンスなものって人をちょっと解き放つところがあるんですね。世界を見る次元がちょっと一段上がるっていうのか」と語る谷川さん。そして「書評なんかができないような本っていうのが、面白い。これ書評する人はアホじゃないかと思うんだけど・・・」とも。
そんな谷川さんは、実はこの本に書評を寄せています。
意味の前に無意味がありました。
自然はたぶんそういうふうに生まれてきたのです。
無意味が怖いから・・・、
人間は自然を意味付け・・・、秩序を確立しようとします。
でもどんなに意味を求めても意味からこぼれおちるものがある…
【無意味の"意味"】
「意味の世界に生きているからね。こういう意味のない世界っていうものは、全然ピンと来ないんじゃないかな」
現代人は、常に物事に意味を求めすぎていると谷川さんは言います。意味が与えられているとそれに縛られてしまう・・・。無意味な中から自分なりの価値を見つけられれば、自由な発想や新しい発見が生まれるのかもしれません。
【今再び注目を集める谷川作品】
今、谷川さんのある作品が、ネット上で注目を集めています。
それが40年前に書いた詩「生きる」
被災者に向けて俳優の佐藤浩市さんが朗読、「kizuna311」のサイトで公開して大きな反響を呼びました。
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ・・・
「人間だから、やっぱり他人との付き合いから常に言葉っていうのは出てくるんですよ。人間誰でもそうでしょ。実際自分が経てきた体験といろんな本、映画、芝居、音楽とか、いろんなものが心の中で交り合ってますよね。詩もやっぱりそういうものから生まれてくる」
【本の"たすき"を渡す人を】
「親ばかですが、谷川賢作(作曲家・ピアニスト)を。
彼から薦められる本を時々読んでいるので、どんな本を選ぶのか・・・」
※谷川賢作さんは5/18(水)の登場です。お楽しみに!
【森本智子の取材後記】