キーワードで読むガイアの夜明け 日経紙面連動企画

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2016年12月12日 サバ、国民的食材

今回のキーワード
海外需要の急膨張で争奪戦

日本の食生活は本当に大きく変わった。日本経済の高度成長初期の昭和40年代に大学生活を過ごした筆者の心深くからの実感である。同時代の人は同じ感想を抱くはずだ。

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中島洋の深読み 紙面を監修している中島洋・MM総研所長が、各回のテーマに対してコメント

かつて大学の学生食堂の定食の最も豪華な(価格が高い)メニューは「牛肉ハンバーグ定食」だった。他のメニューが50円から60円だったのに、牛肉ハンバーグ定食は100円だった。消費税がない当時だから、発行間もない100円硬貨をにぎってハンバーグ定食の提供窓口に並んだ記憶がある。他の窓口の列は短かったが、ハンバーグ定食のところは長い列である。

ハンバーグ定食の長い列とは対照的な短い列の先にあったのは「サバ塩焼き定食」「サバ味噌煮定食」の配膳口である。後方の調理スペースではサバの調理が主体で、サバの定食は次から次へと調理を終えた定食セットが窓口まで運ばれた。列が短いのは、調理の担当者が豊富に配置されていたのではないだろうか。価格が高い「ハンバーグ定食」の需要がこんなに大きいとは学生食堂側では予想していなかった。

長い列の後ろでいらいらしながら前方を視察してみたところ、ハンバーグ定食の調理担当では、鉄板に生のハンバーグを載せて焼くのに手間取っていた。長い列ができたのは、こういうロジスティック上の不備があったのではないか。もっと適切な準備があれば、もっと効率よく定食が提供されたのではないか。列が長いことがそのまま人気のバロメーターにならないのは、この食堂の事例でもよくわかる。

サバは大量に水揚げするだけでなく、劣化するのが速い(アシがはやい)魚なので、売り手には厳しい魚である。低価格での取引しか成立しない。その分、お金のないサラリーマンや学生にとっては安くて栄養価の高い食材として人気を博した。

特に脂ののった秋サバの味覚は絶品である。劣化の早いサバは、その扱い方を知らない国では価値のない魚として省みられなかったかもしれない。それが、日本で巧みに扱って価値のある食材に加工していることがアジアの新興国に伝わったのだろう。ここに来て、アジアの新興国のサバの需要が高まっている。

日本の食生活が牛豚鶏などの家畜系の動物性タンパクに偏っている中で、アジア新興国は魚に注目し始めた。日本の食糧戦略も見直すべきポイントはいくつもある。

取材データ テーマの背景をもっと深く知るためのデータを掲載
中島洋=MM総研代表取締役所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。
73年日本経済新聞社入社。
産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。
97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。
02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。
現在、 MM総研所長、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。


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企画・制作・・日本経済新聞社 クロスメディア営業局
監修:中島洋MM総研所長
取材:木原香菜恵、小島眞司、中村幸嗣、由谷咲、岩田愛未、土肥謙司、渡邊俊太、薄井慧、平山紘太郎、安井瑛男