『用務員さんのお仕事』
2016年3月2日
用務員として、ある小学校に赴任してきた男のお話。
11月という何とも中途半端な時期に赴任されて一ヵ月。
慣れない環境に戸惑いながらも、生徒や教師とも打ち解け、すぐに馴染む事が出来た。
用務員の仕事は、主に学校全体のメンテナンス。
教室や廊下の電気や、機器に不備があれば取替えや修理を行う。
また、各行事のサポートや備品の管理から、生徒や教師の話し相手まで…
言わば、何でも屋と言っても過言ではない。
ある日、理科室の蛍光灯が切れそうだ、と報告を受けた。
脚立と蛍光灯を持って理科室へ入ると、報告通り、一箇所だけ明かりのついていない箇所がある。しかし、部屋は全体的に薄暗かった。
ついでに他の蛍光灯も確認し、新しいものと交換する事にした。
理科室全体が明るくなると、用務員は何だか清々しい気持ちになった。
ふと目をやると、教室の奥には理科準備室の扉があった。
あそこも見ておくか…
男は理科準備室の扉を開けた。
部屋は真っ暗でカビ臭いが漂っていた。
スイッチを入れるが電気がつかない。
既に玉切れしているようだ。
あまり使われていない部屋のようだが、念のため、蛍光灯だけ交換しておく事にした。
理科室から漏れる明かりを頼りに、蛍光灯の場所を確認し、その下に脚立を立てる。
手探りでソケットに蛍光灯を取り付けると、部屋はすぐに明るくなった。
任務を終え、脚立から降りようとしたその時である。
ふと下を見ると、大人程のサイズの人体模型が5体。
脚立を囲んでこちらを見上げていたのである。
「な…なんだコレ…」
5体の人体模型は、それぞれゆっくりと動き出し、ぎこちない動きで脚立に手を伸ばす。
男は目を疑った。
「ワタシノ…シゴトダ…」
「オレノ…シゴトダ…」
「ボクノ…シゴトダ…」
「ワタシノ…シゴト…」
「オレノ…シゴトダ…」
口々に呟いている。
人体模型は、脚立を掴むと、今度はそれによじ上ろうと動き出す。
しかし5体の動きがぶつかり合い、それらの行動を阻み合っている。
その度に掴まれた脚立が揺れ動く。
「やめろ!なにするんだ!やめろ!」
男は、先ほど取り付けた蛍光灯を握り、なんとか落下しないようバランスを保ちながら、その光景に怯えていた。
「ワタシノ…シゴトダ…」「オレノ…シゴトダ…」「ボクノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴト…」「オレノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴトダ…」「オレノ…シゴトダ…」「ボクノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴト…」「オレノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴトダ…」「オレノ…シゴトダ…」「ボクノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴト…」「オレノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴトダ…」「オレノ…シゴトダ…」「ボクノ…シゴトダ…」「ワタシノ…シゴト…」「オレノ…シゴトダ…」
人体模型たちの動きは更にエスカレートし、ついに脚立は大きく揺さぶられ、倒される。
「うわああああああああああ!!!」
男はかすかに熱を持った蛍光灯にぶら下がる形になり、そして蛍光灯が割れ、男は落下していく。
そして、あたりは暗くなる。
理科準備室は静まり返り、そこから男が出てくることはなかった。
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