日経スペシャル「ガイアの夜明け」 7月24日放送 第273回

いま、そこにある危険 「~エレベーターと遊園地の安全は?~」
エレベーターに挟まれて男子高校生が亡くなり、ジェットコースターが脱線して19歳の女性が犠牲になった。最近、私たちの身近な乗り物の安全性が揺らいでいる。
そして事故後、2つの業界では次々にメンテナンス不備の実態が明るみに出てきた。果たして私たちの身近にある乗り物は安全なのか…?シンドラー事故とエキスポランド事故の関係者を取材し、事故を徹底検証。さらに業界が抱える問題を追っていくと、そこには、競争が激しくなる中、“安全とコスト”の狭間で揺れ動く企業の姿があった。 |

去年6月東京・港区で、高校生の市川大輔さんがエレベーターに挟まれて死亡した事故。遺族は今もなお、エレベーターに乗ることができない。日常生活に欠かせないエレベーターで、事故はなぜ起きたのか・・・。製造メーカーの問題なのか、メンテナンス会社の責任なのか…、1年以上経っても原因は究明されず、遺族は問い続ける日々を過ごしている。
その後もエレベーターを巡っては、ワイヤーの破断など様々なトラブルが続出し、メンテナンスの不備を問う声が高まっている。エレベーター業界ではバブル崩壊以降、熾烈なコスト競争が繰り広げられてきた。そして、全国に60万台以上あるとされるエレベーターは、今もなお増え続けている。コストを削って果たして安全は約束できるのか?メーカー、メンテナンス会社、国、さらには安全対策の先進国といわれるドイツの取り組みまで取材し、日常の安全を問う。
|

5月5日子どもの日、大阪吹田市のエキスポランドで起きた立ち乗りコースター「風神雷神Ⅱ」の脱線事故。19歳の女性客が亡くなった。原因は、車輪を支える車軸が金属疲労によって折れたことと見られている。なぜ、金属疲労が起きたのか。取材を進める中、日々のメンテナンスや定期点検のありかたに、重大な疑問が浮き上がってきた。いま、事故機を熟知する関係者が初めて重い口を開く。 |
磁力や超音波を使い金属などの傷を見つける「探傷試験」は、問題の「風神雷神Ⅱ」では1年3カ月行われていなかった。事態を重く見た国交省は緊急に全国調査。すると全国139個所中89箇所の遊園地などで1年以内に試験していなかったことが判明、直ちに名前を公表し緊急の探傷試験を求めた。これによって打撃を受けたのが地方の小さな遊園地。公表による信頼の揺らぎと、一回数十万から数百万円もする探傷試験は、ただでさえ客の減少に苦しむ遊園地の経営を揺さぶった。鹿児島にある社員7人の遊園地遊具メーカー・谷口製作所は、運営していた二基のコースターを自ら廃止。両県からはコースターが全く無くなってしまった。同社は、より安全性の高いコースターを再建しようと動き出したが、先行きはまだ見えていない。
|

東京の下町、浅草にある老舗の遊園地「花やしき」。一番の人気は、現存するものでは日本で一番古いジェットコースター。レトロな雰囲気と今にも壊れそうなスリルが売りだ。
しかし、花やしきも、国交省の全国調査でジェットコースターの車輪に亀裂があると発表され、動揺が走った。
エキスポランドの事故を教訓にもう一度メンテナンス体制を見直し、安全対策システムを構築する…取締役の金田宏さん(54歳)は、「安全対策プロジェクト」を立ち上げた。そこで掲げられたのは「攻めのメンテナンス」。これまでは、なにか問題が発生してから対処してきた。しかし、これからは、日常点検をより慎重に行い、わずかな異変にまで気を配り何かことが起きる前に対応しようというのだ。
夏休みシーズン到来…花やしきは、安全体制を確立し、客の信頼を回復することが出来るか。
|
|