日経スペシャル「ガイアの夜明け」 1月20日放送 第349回

ベンチャーがニッポンを救う ~それでも負けない技術力~
新興企業向け市場で、新規の上場数が大幅に減っている。今年は去年に比べて6割も減少。世界同時不況による株価の低迷や上場審査の厳格化が原因だ。市場が低迷する中、ベンチャー企業や中小企業の倒産件数も増加。有望なベンチャー・中小企業が苦境に追い込まれている。
こうした中、画期的な技術で新産業を生み出すベンチャーがあった。高齢者や障害者などの自立歩行を支援するロボットスーツを開発した筑波大発のベンチャー企業だ。介護福祉施設に向けた製品は、果たして受け入れられるのか。新たな産業の可能性を追う。
一方、ベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタルも厳しい経営状態に陥っていた。投資先の企業が上場しないため収益を上げられないのだ。そんな中、「不況こそチャンス」と積極的に投資活動を行う企業もある。株価の安い今だからこそ「買い」という。投資のポイントは世界でも通用する「売れる技術」。地元に埋もれる「金の卵」発掘に挑む。果たして不況に覆われた日本経済を救う起爆剤となるのか。明日の経済をけん引するベンチャー界の可能性を追う。
|

【経営難に陥るベンチャー…技術はあるが資金がない】 |
資金繰りで行き詰るベンチャーがいる。一昨年、社員7人をリストラ。現在は家族3人で経営している。会社は、キャッシュカードの偽造防止技術を開発。某メーカーと製品化までこぎつけたが、価格交渉で決裂。導入先が決まらないまま2年以上が過ぎた。ベンチャーキャピタルからも「投資は厳しい」と、資金提供を受けられずにいる。技術があっても資金がない。日本経済の未来を担うベンチャーが瀕死の状態に追い込まれている・・・。
|

【大学発ベンチャー、ロボット技術を介護福祉市場へ】 |
筑波大学の大学発ベンチャーとして新産業の育成に取り組む企業がある。ロボット技術を手がけるサイバーダインだ。大学院の教授でもある社長の山海嘉之さんは、自立歩行の支援をする装着用ロボット「HAL」を約18年かけて研究開発。去年10月遂に製品化にこぎつけた。まずは「介護福祉」分野での普及を目指し、筋力の低下した障害者や高齢者などを抱える施設を対象に、月額約20万円のリース販売に乗り出す。販売に先駆け、山海さんはつくば市内の大型ショッピングセンターにロボットの展示施設をオープン。一般客に向けHALのデモンストレーションを行うなど果敢にPR。反応は上々だ。
しかし介護福祉施設の現場からは「どういった症状に使えるか分からない」「ロボットは患者に馴染まない」などの意見が。製品導入へのハードルは高かった。販売を担当するのは大手住宅メーカーの大和ハウス工業。ベンチャー企業の新技術に新たな事業の可能性を賭けて営業活動に乗り出すが、果たして製品は売れるのか。大学業と社長業の二足の草鞋でほとんど睡眠をとらずに挑戦を続ける山海さんの思いは届くのか。
|

【地元に眠る金の卵を探せ! ベンチャーキャピタルが狙う「売れる技術」】 |
一方、資金の出し手であるベンチャーキャピタル(VC)も株価の低迷で厳しい経営状態に陥っていた。新興市場の新規上場数の激減は、投資先のベンチャー企業の上場益で収益を上げるVCにとっては大きな痛手。投資家からも資金を集めにくくなっており、「いまは投資をしない」というVCが大半だ。しかし、「不況こそチャンス」と積極的に投資活動を行っているVCがあった。名古屋のVC・シンクパートナーズの社長、高村徳康さんだ。投資競争が少なく、株価の安い今だからこそ投資のチャンスだという。投資のポイントはずばり、「売れる技術」。最先端や話題性の技術ではなく、役に立つ技術を持つ「金の卵」の発掘に励んでいる。
高村さんの注目する企業の一つが、地元名古屋のベンチャー企業「シフト」だ。非接触型の画像解析技術・カラーバーコード(製品名・カメレオンコード)を開発。市販のウェブカメラにコードをかざすと2メートル程離れたところからでも認識。塾の入退室などに利用されている。ICタグと比べてコストも安いという。電磁波を発生しないため利用範囲は広い。しかし「まだまだ技術を生かしきれていない」と、投資を検討する会議では議論が紛糾。そこで高村さんは「技術の用途をVCが考える」と、企業の倉庫などで在庫管理に使えないか提案。自ら「売れる技術」にしていく。「地元のベンチャーの育成は日本の経済発展につながるはず」と高村さん、果たして投資はどこに決まるのか!?
|
|