日経スペシャル「ガイアの夜明け」 12月1日放送 第394回 シリーズ「進化するリサイクル」第2弾 くず鉄が世界を駆ける
資源ごみとして古くから扱われてきた「くず鉄」。実は日本で生産される年間1億トンの鉄のうち、4分の1は“くず鉄リサイクル”によって作られている。日本国内には建物や橋、機械など、高度成長期から溜め込まれた“鉄の資産”が存在するためだ。それが今、くず鉄となって日本から海外へ次々に輸出されている。向かう先は、中国や韓国。資源のない国ニッポンが生んだくず鉄という資源が、海を越えリサイクルされているのだ。 一方、巨大な“くず鉄”が世界中から集まる場所があった。バングラデシュのチッタゴン。そこではおびただしい数の大型船が海岸に乗り上げ、解体されていく異様な光景が広がっていた。まさに船の墓場…。海外メディアの立ち入りが規制されているこの解体現場に、ガイアのカメラが入った。実は解体されている巨大船舶は、日本が、造船業華やかなりし1970年代に造った船も少なくない。そのくず鉄が、貧しい労働者の生活の糧となり、リサイクルされ都市部の急成長を支えているのである。 くず鉄の再生技術は進歩を続け、新たな鉄を生み続けている――。進化するリサイクル第2弾は、鉄リサイクルの最前線を追う。
今年4月から実施された、景気対策のエコカー減税。これによって、車歴13年以上の中古車をエコカーに買い換えた場合、一定の補助金が出るようになった。買い換え需要が喚起された結果、自動車ディーラーには今、中古車が次々と持ち込まれている。 だが引き取られたこうした中古車の行方は――?実はそれらは粉々に砕かれ、徹底的に選別された上で海を渡り、中国や韓国で再利用されていたのだ。 静岡県富士宮市のリサイクル会社エコネコルを訪ねると、オフィスでは英語、韓国語、中国語が飛び交っていた。日本国内には、自動車以外にも様々な「くず鉄」が眠っており、この会社ではそれらを直接海外に輸出しているのだ。いまや「くず鉄」は世界中で取引される国際商品。価格は刻々と変動する。一方、国内に眠るくず鉄の“発掘”もする。そこには「くず鉄」が世界中を行き来する、現代の資源リサイクルの姿があった。
「産業のコメ」といわれる鉄。世界を見渡すと今や鉄は、鉄鉱石よりも「くず鉄」から作り出されるものが主流となりつつある。「くず鉄」から鉄を作る日本最大の東京製鐵は、もともと小さなくず鉄回収業者。それが今では大手製鉄会社を相手に値下げ合戦を繰り広げるまでに業績を伸ばしてきた。 そして今、新たな挑戦を始めている。くず鉄から作った鉄は従来、不純物などの影響で高性能な薄板は作れないとされてきた。建物に使う厚い鉄骨は作れても、自動車や家電に使われる薄い板は作れない…。この壁を乗り越えるべく11月下旬、愛知県に最新鋭の新工場を建設、「薄い板」の本格生産を始めるのだ。 景気の影響をもろに受けているくず鉄市場だが、そこには追い風も。鉄鉱石から鉄を作るよりも、くず鉄から鉄を作る方が、排出するCO2は4分の1。CO2削減に躍起になっているメーカーが、くず鉄を原料とした鉄に注目し始めた。果たして時代の風に乗ることができるのか?異端児の挑戦が始まった。
リサイクルされる鉄の中でも“鉄の塊”とも言える大型船舶は、役目を終えてどこに行くのか?その終着点はバングラデシュの第2の都市、チッタゴンにあった。 海岸には、何十隻もの巨大な船が浅瀬に乗り上げていた。よく見ると、そこにたくさんの人が群がって作業している。彼らは、世界中から集まってきた巨大廃船を手で解体していた。ここはまさに船の墓場――。 海外メディアの立ち入りが規制されている現場に、ガイアのカメラが入った。実は、そこで解体されている大型船舶は、かつて日本が造ったものが少なくない。船には純度の高い鉄が使われており、廃船はそれこそ“宝の山”。だが、労働者の賃金は1日わずか200円程度で、安全が考慮されていない危険な作業だ。解体作業によって垂れ流される残油と汚泥は、人体を蝕み、海洋に与える影響も懸念されている。それでも家族を養うため働く人たち。この船舶解体で5万人が働いているという。 彼らが解体した「くず鉄」はどこへ行くのか…。行き着いた場所は首都ダッカ。ダッカではここ数年建設ラッシュが続いており、解体された船は鉄鋼に生まれ変わって建設資材として再利用されていたのだ。世界を駆けるくず鉄…その光と影をバングラデシュで追った。