日経スペシャル「ガイアの夜明け」 7月27日放送 第427回 骨肉の争いを避ける術 ~いま知っておきたい“相続”~
相続をめぐるトラブルが増えている。家庭裁判所に持ち込まれる相続の相談は年間16万件。この10年で2倍になった。なぜ今、“相続争い”なのか?長引く不況でサラリーマンの所得が厳しい中、親の遺産に期待する人が増えている。分割しづらい自宅(不動産)をどう扱い、現金化するかで兄弟姉妹間の意見が対立する場合や、親の介護で苦労した人が遺産相続の場面になって「もっと多くもらえるのでは?」と憤るケースが多いという。一方で「会社の相続」にも問題が…。全国の中小企業で、「後継者不足」を理由に廃業した会社が、約7万社。一番の原因は、会社を引き継ぐ際のリスクだ。中小企業は、銀行からお金を借り入れる際、社長個人が連帯保証人になり、自宅を担保にするよう求められる。つまり、会社の経営が悪化すると、社長がその責任を個人的に背負わされる。そうした自己破産のリスクを負って社長になる気概は、後継者は持てないというわけだ。個人も、企業も決して他人事ではない“相続”。その実態を取材し、相続にビジネスチャンスを見出す企業の新たな取り組みを追う。
高まる相続への関心を収益に繋げたい企業の動きが活発だ。毎週のように「相続セミナー」を開催しているのは、野村証券。狙いは、円満な相続に繋がる様々な金融商品の販売促進。例えば、特定の人にお金を残すのに有効な生命保険を、生命保険会社と連携して売り込む。また、資産を受け継いだ人と繋がりを持ち続けることで、株式投資を含めた資産運用を継続提案できるといった相乗効果にも期待している。いっぽう、相続争いが増えるに連れ、注目されているのが、「遺言」。実際、遺言を残す人の数は年々増加、意外なヒット商品も生まれている。文具メーカー・コクヨの「遺言書キット」(定価2415円)だ。30歳の若手女性社員が開発したというこの商品、去年6月に発売するや、4ヶ月で2万冊を売り上げ、現在も好調な売れ行きだ。また、購入者から1000通を超える手紙が寄せられるなど反響も大きく、意外にも20~40代の比較的若い年齢層の購入者も多いという。
高度経済成長期に起業した経営者の多くがいま、世代交代を迎えている。しかし、その多くが、スムーズに会社を次の世代に継承できていない事態に直面している。そこに目をつけ、ビジネスとしても本格的に取り組んでいこうとしているのが、大手銀行・三井住友銀行だ。本社に所属スタッフ70人の事業承継専門の事業部を立ち上げた。全国200カ所ある法人営業部(支店)に直接、本店スタッフが赴き、事業承継について指導をしている。去年の実績では、全国で約1200件の事業承継に関する相談に乗ったというが、実はコンサルティング料はとっていない。銀行側の狙いとしては、三井住友銀行をメインバンクにしている企業がスムーズに次世代に継承されていくことで、融資先を確保し続ける事を一番の目的にしているからだ。 担当者に密着すると、中小企業の社長が抱える苦悩が見えてきた…。
東京・品川区にある、歯ブラシの製造・販売会社「ファイン」。従業員は現在25人。うち17人は、三重の製造工場で働いている。社長は清水和恵さん(69歳)。昭和48年に夫と二人で会社を設立。15年前に夫が亡くなって以降、社長として会社を切り盛りしてきた。しかし4年前、病気で体調を崩したことをきっかけに、70歳を機に社長の座を譲りたいと考えるようになった。新社長候補は、3人娘の末っ子・直子さん(43歳)。短大卒業後、一旦は貿易会社に勤めるも2年で退社、両親の会社を手伝う道を選んでいる。2年前に正式に社長就任の依頼を母から受けた直子さん。当初はかなり悩んだという。理由は、社員が自分についてきてくれるのか自信を持てなかったから。20年近く社員として会社を支えてきたとはいえ、社員と経営者との間には大きな壁を感じていた。また、中国製など安価な商品が溢れる中、どう差別化を図り歯ブラシの会社として経営し、従業員を養っていくのか?さらに、直子さんはこれまで製品開発を主に担当していたこともあり、財務は苦手だ。社員、取引先、銀行は、新社長を受け入れてくれるのか…。会社を守るために奔走する、2代目の女性社長の奮闘を追う。