日経スペシャル「ガイアの夜明け」 11月30日放送 第445回 電気自動車 元年~“ガソリン不要”…期待と実力~
近い将来のエコカーの主役として注目を集めはじめた電気自動車。三菱「アイミーブ」は今年4月から個人ユーザーへの販売を開始。さらに12月には、カルロス・コーンCEO肝いりの日産「リーフ」が発売になる。すでに初年度分の国内販売台数6000台は予約で埋まっているという人気ぶりだ。まさに、今年は電気自動車の本格的な普及元年とも言われている。その登場は、我々の生活を変える可能性を秘め、自動車業界の存在、そして日本のモノづくりそのものにも変革をもたらし始めている。 番組では、日産の内部を独占取材した。量産型電気自動車の発売に向けて、壁となったものとは?また、大手メーカーの一方で、古い車を電気自動車に手軽に改造するという中小企業のビジネスも広がり始めた。果たして、電気自動車の実力と可能性は、どれほどのものなのか…。
神奈川県に住む20代の主婦は今年、三菱の電気自動車「アイミーブ」をリースで購入した。子供の送り迎えや買い物、ちょっとした遠出などにも利用している。家にはハイブリッドカーもあるが、ほとんど乗っていないという。 「日常の生活をする分には電気自動車で十分」と話す主婦。そしてもう一つのメリットが、電気代の安さだ。深夜料金を使えば、1キロ1円も可能。「ガソリンの価格が高くなる一方だし、家計も助かっています。」 電気自動車のある生活は徐々に広がりを見せている。
ガイアのカメラは去年11月、日産の電気自動車「リーフ」の開発現場に足を踏み入れた。そこで開発陣が取り組んでいたのは、電費のさらなる向上。電費とは、電気を効率的に使い、走行距離を延ばすこと。発売まで1年となった段階でさらに「電費10%改善」を出来ないか。開発陣の奮闘が続いていた。 現場リーダー吉田正樹さん(41歳)に密着。これまで主にアメリカ向けのガソリン車を担当してきたが、3年前、電気自動車プロジェクトに抜擢された。「これまでのガソリン車の常識は全く通じない。しかしこの車は世の中を変える可能性のある車。エンジニアとしては本望」 しかし、今までのガソリン車では考えられなかった壁が次々と立ちはだかる。新しい電気自動車をどう作り上げていくか、さらに、年間数万台という世界初の規模となる量産態勢をどう作り上げるか、乗り越えなければならない壁はたくさんある。 そんな中、日産は7月に小型車「マーチ」の生産を国内から完全に海外に切り替えた。世界で勝てる付加価値のある商品を優先して国内で作る…。正に電気自動車「リーフ」は明日の日本のものづくりを占う車でもあるのだ。 「日本の技術者の意地を見せる」と意気込む吉田さんの奮闘を描く。
電気自動車のネックのひとつは価格。これでは普及は望めないと、数十万円から100万円強の改造費で既存のガソリン車を電気自動車へ改造する事業が勃興している。その改造ビジネスを全国に根付かそうとしているのが東大・総長アドバイザーの村沢義久さん。「スモールハンドレッド」という言葉(自動車業界が大企業中心から、中小企業中心の産業構造になるとの意味)の生みの親でもある。基本的なビジネスモデルは、国内外の様々なメーカーの部品を集めてセットを販売し、組み立てまで請け負うというもの。正に“プラモデル感覚”だ。これなら地方の小さな企業でも参入できる。「地球温暖化防止の面から見ても、電気自動車の加速度的な普及が必要。そのためには改造ビジネスしかない」。 そんな中、県を挙げて改造EVビジネスに取り組み始めたのが愛媛県。県の産業は農業が中心で自動車関連企業はほとんどないが、改造EVを県の新しい産業として根付かせたいと意気込む。村沢さんもアドバイザーとしてバックアップ。9月には試験車両が完成した。何とその実力は最高時速190キロ! その実力を示すべく11月に電気自動車レースに出場。地方発の電気自動車は新しい産業の可能性を拓けるのか…。