日経スペシャル「ガイアの夜明け」 12月14日放送 第447回 時代は“コンパクト”~小ぶりな店舗に商機あり~
今まで、国内では、夫婦と子供2人の世帯を「標準世帯」と呼び、それを念頭においたマーケティングが行われてきた。 しかし、今や子供がいる世帯は全体の28%にすぎない。2006年を境に、それを上回ったのが単身世帯である。 高齢者、おひとりさま、離婚した中年男性…事情は様々あれ、いまや単身世帯こそが、「標準」となったのである。 まさに時代の変わり目、流通の最前線では、個に向けたマーケティングが必須となってきたのだ。大型店から、売り場面積がコンパクトな小型店へ。大手も、この業態に舵を切り始めた。限られた売り場面積の中で、どれだけワクワクするような店を展開できるか…。 スーパー、ホームセンター…新たな潮流を追った。
10月1日。JR阿佐ヶ谷駅前に、イトーヨーカ堂の新しい店舗がオープンした。しかし、売り場面積は、地下1階のワンフロアのみで、わずか500㎡。実は、これはイトーヨーカ堂初めての小型スーパーだったのだ。今年五月、東急ストアが閉店。その後に、居抜きで入った。狙いは、単身者。周辺では、高齢者、若者問わず、単身世帯が急増している。これをメインターゲットに、徹底したマーケティングを敢行。わずかな面積に、脅威の品揃えを実現した。青果、総菜、鮮魚すべてに小分けを徹底。一方で、他では手に入らない高級食材も充実させた。狙いは、現在のところ成功している。同業他社も毎日のように偵察に訪れている。イトーヨーカ堂では、同業態を、中野区、新宿区、杉並区など、今まで出店していなかった地域に、1年以内には10店舗のオープンを目指すという。将来的には、この業態での売り上げが、大型店を抜くと予想しているという。
11月7日、九州のある商業施設の催事場に、トラックから日用品など様々な商品が運び込まれた。実はこれ、「東急ハンズ トラックマーケット」と呼ばれる移動型小型店なのだ。3ヶ月の期間限定。その目的は、来春、博多に大型店を出店する前に、九州で「東急ハンズ」というブランドを認知してもらうのだ。もともと大型店、大都市という店舗展開をしてきたハンズだが、近年、数千坪規模の大型店を出店する場所の確保が難しくなった。 そこで「今後も出店し、成長し続けるため」に打ち出した戦略は、ターゲットをしぼった小型店だという。実はハンズは2年前、小型店での事業拡大をねらい新たな部署を立ち上げ、小型店「ハンズビー」(140坪〜200坪)を札幌に出店。今秋本格的に都内にも進出する。出店場所は基本的に駅ビル。目的をもって来店する大型店とは違い、つねに不特定多数、大勢の人がいる場所を狙った。そして、狭い面積にあわせて、ターゲットは女性に絞り込んだ。ヘルス&ビューティー、化粧品や雑貨を主に扱い、専用じゅう器を135㎝にし、女性が商品を見やすい高さに設定するなど、徹底した。11月中旬の秋葉原店のオープンに向け、店長に選ばれたのが、藤田洋一さん(49歳)。今まで、本社勤務で売り場に立ったことが無かったが、今回、初めて店長に抜擢された。しかし、メインターゲットとなる、女性向け商品の知識は今ひとつ心許ない。
巨大流通が、小型スーパーに舵を切る中で、危機感を強めているグループがあった。1800店の“町のスーパー”が加盟する、全日食チェーンだ。加盟する多くは、古くから地域密着型の小型スーパー。大手にお株を奪われてはいられない。そこで、全日食が選んだ戦略は、過疎地や団地の高齢者など「買い物弱者」向けスーパーの展開だ。クルマの運転が困難になったりして、行動範囲が狭まった、買い物弱者は全国に約600万人。それらの人々のために、全日食が直営で、年内に6店舗程度、オープンさせるという。全日食では、高度成長期に作られた団地や、住宅街などで、潰れてしまったスーパーの跡地を物色している。そして、12月1日には、埼玉県浦和地区にオープンする。しかし、半径1キロ、3000人程度の商圏で採算はとれるのか? 「買い物弱者」を救う事は出来るのか?