日経スペシャル「ガイアの夜明け」 2月1日放送 第453回 JAL 再建の真実 ~破綻から1年…社内は今~
JAL=日本航空が、経営破綻して1年が経つ。会社更生法の適用を受け、2兆3221億円という巨額の負債を整理してもらい、いま再浮上を目指している。ガイアの夜明けが3年前から継続して取材を続けてきた“JALの行方”、今回は、経営破綻してから1年、会社再建の現場を密着取材した。 JAL再建の現場では、去年末にかけてリストラの嵐が吹き荒れた。従業員の削減計画を達成するため、ついに165人の整理解雇を断行。しかし解雇対象者や労組は反発、東京地裁に提訴し徹底抗戦の構えだ。 この2月1日にJAL会長就任1年となるのが、京セラから迎えられた稲盛和夫氏。この1年は「航空業界では素人」と話し、さほど表立った活動を見せていなかったが、ここへきて独自の経営手法をJALに注入するなど、じわじわと影響力を発揮し始めている。果たして、JALは、カリスマと呼ばれた経営者の下、再建を果たすことが出来るのか。
1月19日、JALの新たな経営理念とフィロソフィと呼ばれる経営哲学の発表が行われた。それは「全社員の物心両面の幸福があってこそ、安全も経営も確立できるのだ」という考え方で、稲盛会長が主導した意識改革のなかから生み出されたものだった。この一年、社内では稲盛会長の命で設立された「意識改革推進本部」が中心となって、「稲盛塾」と言われる幹部社員に向けたリーダー研修を推し進めてきた。独特の親方日の丸的体質がはびこったJAL社内に、京セラで実践してきた企業哲学やアメーバ経営と言われる小集団活動など稲盛改革は根付くのか?JAL社内で続くリーダー研修の現場にガイアのカメラが入った。
意識改革は、これまで“聖域”とされていたパイロットたちも対象となった。 高額の給与は30%カット、深夜早朝を除いて、ハイヤーの送り迎えも全廃され、電車通勤となった。今まで“安全運航”のことだけを考えていればよかったパイロットたちにも“採算”意識が求められている。パイロットが出来る事は何なのか?客にまた次もJALに乗ってもうらえるようにするための地道な取り組みがはじまった。全廃されるジャンボジェットのある機長の葛藤と変革への気づきを追った。
破綻時、お客様サポート室には様々な厳しい意見が寄せられていた。「JALに裏切られた」「税金使って、高い給料をとって」…。入社4年目の女性社員は、厳しい声を前に落胆していたが、とにかく全社員にお客の声を直接届けようと動き出した。そして、最近少しずつ、変化が見られるようになったという。パイロットたちが自分の言葉で機内アナウンスをするようになったことがきっかけだ。
再建に向け社内の意識改革が進められる中、人員整理はどのように行われていたのか。「これまで一度も人員整理をしたことがない」と語る稲盛氏にとっても苦渋の決断が迫られたのだった。大リストラは昨年3月から始まった特別早期退職、さらに9月以降3度にわたって希望退職の募集が行われていた。しかし年末、遂に予定の人員削減数に及ばなかったとして、整理解雇が断行されたのだった。