戦況はもはや、決定的だった。
そこには、勝利を確信した将軍が、
いまや水を得た魚のごとき独壇場を展開している姿があった。
将軍の名は「モト冬樹」。「ヘビメタさん」完全制圧。
かつて、幾多のゲストがこの番組にやってきては、
緊急企画と称し「彼らの名を記す」新コーナーを
披露してきた。しかし、思い出して欲しい。
あの!武藤先生のポージング講座でさえ、
そこには「メタルに役立つ」の文字が躍っていた。
・・・モト冬樹のCOMIC GUITAR道場・・
・・モト冬樹のCOMIC GUITAR道場・・・
何度繰り返しても、
そこにはメタルの文字は・・ない。
「マーティ!ちょっと弾いてみて」
「う〜ん、無表情すぎるな、人に訴えると言うのが大事だからサァ〜」
我が目を疑う。あのマーティ・フリードマンがギターでダメだしされる姿。
「こうだよ!」冬樹のギターが咆哮する。奏でられた哀しみの旋律にあわせた冬樹の顔芸!!
「わかる?セクシーな感じ!イッちゃう感じ!」目は空を泳ぎ、眉毛は八の字をかく。鼻腔を膨らませ
恍惚の表情を作り出す。
これは!これは!まさに・・
顔・で・弾・い・て・る。
「イッてる顔想像したくなかったんですけど」そう告げるマーティに、世界的ギタリストの姿はもはやなかった。
コミックバンドに弟子入りしたギターの弾ける「おもしろい」外人が、そこには存在した。
果たして、笑いの師匠は、弟子にその極意を披露し始めたのだった。
「ライトハンド奏法できる?」
もはや、私も驚くまい。しかし・・だ。恐らくマーティの人生史上、初めて問われた質問に、なんの迷いすらなく、
「はい」と、行儀よい返事とともに披露するマーティ。衝撃だ。衝撃的すぎる。
「おもしろくない。おもしろくないなぁ」どこまでも、非情な師匠は、世界最高峰のテクニックと言ってもよい
プレイを、完全否定するや、自ら右手をネックに近づける・・・
モト冬樹の奏でるライトハンド奏法・・・魅惑のタッピング・・隠されし爪が、今襲い掛かった。
「あいててててて、痛いなぁ〜」離れた右手の指先を無理やり痛がる冬樹!・・これぞ笑いの奥義。
「これ、このぐらいやらなきゃ」
徹頭徹尾、冬樹ペースでコーナーは進んでいった。
「コミックバンドで一番大事なこと、基本わかる? それはね・・・こけ方」
そう、まさに、これこそコミックバンドがその存在を証明する究極奥義。
かつて、
クレイジーキャッツの時代から、
ドリフ、
ドンキー、
ビジーフォーetc
幾多のバンドが、こけてきた。何度となく、繰り返される「こけ」の系譜。「こけ」に身を捧げ、全身全霊で「こける」笑いのミュージシャン達。
音楽と言う一ジャンルの歴史上、私が愛するメタル同様、そこにはコミックバンドの歴史が確かに存在する。
それがメタルであれ、コミックバンドであれ、
わが身を捧げる愛に変わりはない。
偉大なる音の魔術師たちよ。かくも私を虜にするものはなんなのだ!それは、
「愛」だ・・まぎれもない真実だ。
「曜子ちゃん、ちょっと、こけれるようにふってみて」
こけ方一つに愛を捧げる音の魔術師は、私の目の前にも存在した。
「あっ、はい・・じゃぁ 『ギターを持った冬樹さん、輝いてますよ・・・頭が』」・・・
・・ファンタジスタ!流れるように崩れ落ちるモト冬樹。髪の・・いや、神の御業の如き寸分の狂いなく
笑いに転化される、
完全無欠の様式美!
メタルの魅力のひとつに様式美があるとすれば、今、目の前に繰り広げられた様式美と
なんの違いがあるというのか(違うけど)
冬樹は言う
「いい?・・・しかも。弦が狂わないようにこけるんだぜ」
プロフェッショナルな笑いの職人は、どこまでもシビアだった。
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↑いつしか『Walk don't run』を奏でる二人! |
「コミックバンドの教則DVD出せるんじゃない?」
「いいねぇ・・ヘビネタくん」
常に笑いを忘れない・・それこそが奥義。
・・・と、突然番組はその趣を変えた。
『コミックだけじゃない! モト冬樹&マーティ 緊急スペシャル
Guitar Live』と名打たれた二人のプレイ。
対極に位置する二人のギタリストが奏でるのは、
WALK DON’T RUN
モト冬樹・・あなたは、まぎれもなく、偉大なるミュージシャンだった。