テクノロジーを入り口にさまざまなことを企画する
2022年に、新しく『テックラボ』という部署が立ち上がりました。テレビ局の中では、技術やテクノロジーというのは基本的にはオペレーションや何かをやる「手段」だったんですね。でもテックラボは、逆にテクノロジーを入り口にして、コンテンツ制作や事業、収益、そして業務の効率化と言った出口まで、それぞれを最適化して誘導していく……“テクノロジーでテレ東にイノベーションを起こす”そんな部署なんです。わかりやすい例でいうと、XR(クロスリアリティ)という技術を使い、実際のセットがなくてもリアルなCGの中で出演者が歌ったり、踊ったりできるようにしたり。テレ東の一大スポーツイベントである『世界卓球』では、テレ東が運営するメタバース「池袋ミラーワールド」の仮想空間でユーザがいろいろ体験できる場を作り、そこから番組やWEBサイトへ誘導する仕掛けを作ったりしています。また番組を放送するには映像編集をパソコンで行うのですが、例えば何かキーワードを入れたらその話題の場面をAIが自動で探して簡単に編集できるよう効率的なシステムが実現できないかなど。テレ東に係るいろんなことを社内だけでなく社外の方々と相談しながら手掛けています。
XRを取り入れた番組作りが 現場での活用へ繋がった
テックラボのメンバーは、現在ラボ長含めて7人。全員、元々所属していた部署との兼任です。メンバーは「送出」という放送技術部の部門から来ている人や、技術開発系から来ている人、私のように制作技術から来ている人間と、それぞれ部署はバラバラですね。ただ基本的にみんな技術セクションの人間なので話はしやすいです。私自身、もともと放送でXR技術を使った経験がありました。2021年に行われた日本民間放送連盟(民放連)70周年を記念した民間放送全国大会でのことだったのですが、この年は、式典のオープニング映像を作るのがテレビ東京の担当でした。その少し前にアメリカでケイティ・ペリーというアーティストがテレビ番組の中でXRを使ったパフォーマンスを行い、それが話題になっていて、面白そうだなとは思っていました。「でもテレ東だと予算的に難しそうだな」と思っていたところ、この民間放送全国大会の話がやってきて、いつもの番組制作より予算も大きい。「これはXRが試せるかもしれない」と思い、ゲストの空手・女子形の清水希容選手がXRで作り出した空間の中で演舞する……というオープニング映像を実現することができました。このときの経験が、実際の番組での利用につながっています。
テックラボができたことで社内のマインドが変化
日々の業務の中では、社外の人と会って話をする機会がすごく多いです。放送に関する技術は、おそらく学生の皆さんが思うよりも日々すごいスピードで進化しています。だから私たちもそういったものに対してアンテナを張っていなくてはいけないのですが、そういう技術を「実際に使いたい」と思ったとき、判断材料になるような深い情報はインターネットには転がっていないんですね。となると、実際にそれらの技術を使っていたり、経験したことがある人と話をするのが一番ということになります。先進技術の展示会に行くこともあれば、人伝いで紹介してもらうことも多いです。
今実感しているのは、テレビ東京という会社の中で「ビジネスと直接関係ないかもしれないけど、本当はこういう風になれば便利なのに」と思っていた人達が意外と多いということ。テックラボがそういう人たちの相談窓口になってきましたし、社内の「実はこういう知識や人脈があるよ」という人たちをつなぐ役割になっていければいいなと思っています。これまで、何か新しいものに関して「すごいね、こんなの見たことないね」で感想が止まっていたことが、テックラボができたことで「こんなことができるかも」と意識が変わる……社内全体にそういうマインドが伝播していけばいいなと思いますね。
大切なのは知識の量ではなく
「アンテナを張っているか」
今就職活動をしている学生さんたちに伝えたいのは、新しい技術……例えばメタバースやAR、XRに関する知識に関しては、変な言い方ですが、「あってもいいし、なくてもいい。」重要なのは「アンテナを張ろうとすること」だと思います。なぜなら、実際に就職してからそのアンテナはむしろどんどん活用できるし、さっき言ったように「本当に役立つ情報」というのは実際に業務を始めてからのほうがどんどん入ってくるんですね。テレビという媒体とテクノロジーを使って何か面白いことをやってみたいという人はとても多いですし、まだまだテレビにはそういう力がある。だから何か「新しいことを知りたい」という人、知的好奇心が旺盛な人には、すごくいい環境だと思いますよ。ただ重要なのは、知識を得ることだけでなく、実際の業務とその知識をどうマッチングしていくかということ。働く上ではこの能力が必要になってくると思います。あと、業務をする上で必要な能力としては、コミュニケーション能力はとても大事ですね。単純にいろいろな人と仲良くなれたほうが「得」なんです。専門家は会社の外にいるわけで、私達テレビ局の人間はそういう人たちをいかにつないでいくか……ということが重要になりますから。
求められるのは、変化に柔軟に対応する能力
理系分野やIT技術を学んでいる学生さんの場合、主な就職先としてメーカーやシステム会社を志望する人が多いと思います。そういう業界に比べると、テレビ業界はDXや技術革新がまだ行き届いていない部分が多くありますし、はっきり言ってしまえば「遅れている」業界です。しかしそれは逆に言えば、理系人材が活躍できる場が多く残されているということですし、テレビ東京も例外ではありません。テレビ東京という会社の良いところは、気持ちさえあれば思いっきり動くことができるということ。コンテンツの制作技術にしろ、システムの開発にしろ、やりたいことがたくさん見つけられるはずです。放送に関する技術は、これからもどんどん変わっていくと思います。実際、僕がテレビ東京に入社した20年ほど前は、テレビ番組の予算で使えるCGなんてとてもチープなもので、「映画じゃないとCGなんて使えないねー」と話していたものでした。それが今では、XRのようなことが通常の番組制作でも利用できている。そういう変化に対し、柔軟に対応できる人にぜひ活躍してほしいですね。
プロフィール
2000年入社
2022年より始動した新組織テックラボではAI,メタバース、XR、NFTなど様々な新技術の調査・研究を進め、テクノロジーを活かしたコンテンツ開発を⾏う新組織のテクニカル・プロデューサーとして活動を⾏う。また、コンテンツ技術センターでは、スタジオ番組、中継番組制作の技術責任者を主に担当している。
※現在は、テック戦略局テック戦略部所属。
思い出の一枚
東京五輪の開催前に、準備で国立競技場を訪れたときの写真です。
この瞬間だけマスクをとってこっそり記念撮影しました。
(あごマスクですみません)
コロナ禍での意味深い大会になり記憶に残りました。