激戦の女子78超級の国内選考を制し、リオデジャネイロ五輪を勝ち取った山部佳苗。五輪は本人も悔しいと語る銅メダルだったが、それ以上の何かを得た。休息の2カ月も大きなプラス。成長を遂げた山部が再び戦いの舞台に立つ。
「グランドスラム東京」は柔道を純粋に楽しみながら戦える
──8月のリオデジャネイロ五輪が終わって、11月から練習を開始されたそうですが、それまではどんな生活をされていたんですか?
この2ヵ月間、毎日が祭日みたいでした。柔道とはまったく関係ないことをして楽しんで過ごしていました。ここまで道衣に袖を通さなかったのは、柔道をはじめてから初めてでした。
──リオ五輪を振り返ってみて。五輪前にはご自身の柔道を表現したい、とお話されていましたが、その目標は達成できましたか?
一本をとって勝つ柔道が自分の柔道なので、初戦は苦しい状況の中で投げ切って一本勝ちで勝てたのはよかったです。今までだったらダメだと思うところを『まだ1分あるから…』と前向きになれたのは大きかったですね。大舞台で力を発揮できたのは、『グランドスラムパリ2016』で負けてから。嫌なことでも自分と向き合うことを意識してきたからだと思います。
──結果的に銅メダルを獲得しましたが、試合が終わった後、どんな気持ちだったのでしょうか?
悔しかったですね。表彰台に上れるか上がれないかで大きな差もありますけど、表彰台を上がって横を見たら、優勝した選手が喜んでいる。優勝と3位にも大きな差があると感じました。
──五輪後、休まれていたところ、なぜもう一度、道衣に袖を通そうと思ったのですか?
休養中に、バレーボールの荒木(絵里香)さんの試合を見に行ったんです。荒木さんは、リオ五輪に出場したのに休みもなく違うチームに移籍して中心選手として活躍していました。そんな荒木さんの姿を見て、自分は何もしていない…と感じて。やっぱり負けたまま終わるのは嫌だし、勝って終わりたいという気持ちもありました。このまま何もしないで終わるよりも、ボロボロになるまで戦ってやめるのとは違うので、やり切りたいと思ったのがきっかけです。
──今のままの自分でいいのか? と思ったんですね。
荒木さんにも相談したら、『やめるのはいつでもやめられるよ、だけどボロボロになって戦うのは今しかできない』と言っていただいて。本当にその通りだなと思いました。自分がボロボロになるまでやり切れば、納得して終われると思います。
──五輪後、モチベーションのコントロールが大変だった中で、あえてきつい道を選ばれたんですね。
五輪が終わってすぐに試合に出るのは無理だったと思います。逆に2ヵ月休ませてもらって柔道と離れることによって、応援していただいている方々の存在、今の環境のありがたみがわかりました。だから、応援していただたい方への恩返しとしても自分はやり切りたいです。
──久しぶりの公式戦に向けて、現在のコンディションはいかがですか?
今は、純粋に柔道が楽しいと思えている自分がいます。とくにコンディションがよくて技が切れるとかそういった部分はないんですけど、試合ができるのは幸せなことで心が充実しているので、その気持ちでカバーしていきたいですね。
──1年前とはまた違う大会になりそうですね。
1年前は代表になりたい、ライバルに勝ちたい一心で戦っていました。五輪がこんなにも遠いものだと感じて、しんどくて現実から目を反らしたかった状態でしたが、今年の『グランドスラム東京2016』は、五輪を経験したことで自信にもなりましたし、また違った柔道を表現できそうです。
──最後に「グランドスラム東京2016」、今後の目標をお願いします。
これまでのグランドスラムで東京大会だけ、金メダルを獲ったことないので、今大会では絶対に金メダルを獲りたいです。五輪を目指しはじめてからは、きついことの方が多くて、『欲がない』とか『意識が低い』とかいろいろ言われてきましたけど、そんな自分がボロボロなるまで柔道をやると言えたのは、これまで考えられなかったことなので『ミラクル』だと思っています(笑)。4年後の東京五輪は、この気持ちで試合に挑んで積み重ねていった結果としてつながっていけばいいと思っています。