11月22日に開幕する柔道グランドスラム大阪。2020年東京オリンピック代表選考を兼ねる大一番に日本代表はどんな思いで挑むのか。男女全階級の見どころを紹介する全14回連載の4回目。
柔道グランドスラム大阪 みどころ 男子100キロ級
「やっぱり勝ちより負けから得られるものの方が大きい。足りないものがわかったので、しっかりと次につなげたい」
男子100kg級のウルフアロン(了徳寺大職)は準々決勝で黒星を喫したこの夏の世界選手権を前向きに振り返った。
世界選手権の準々決勝で昨年世界王者のチョ・グハム(韓国)に優勢負けしたウルフアロン Photo:Sachiko Hotaka
「個人的に大きかったのは東京五輪が行なわれる日本武道館の畳で闘えたこと。その1年前に同じ場所でやれたというところは大きかった」
結局、ウルフは敗者復活戦を勝ち上がり、銅メダルを獲得したが、満足しているわけではない。「第一線で柔道をやっているからには勝ってこそナンボ」と本音を吐露した。
「結局、試合で負けて内容が良かったということはないので、内容がどうであれ勝つことが最も大事だと思っています」
今春、私生活で大きな変化があった。ひとつは元柔道家の女性と結婚したことだ。
「結婚したことで頑張る理由がひとつ増えた。僕は整理整頓が得意ではないので、そこは奥さんに任せたい。奥さんの手料理?う~ん、何だろう。豚の角煮とか美味しいですね。ヘタなことを言ったら、マジで怒られる(微笑)」
その一方で、柔道に専念するため、東海大大学院を休学した。
「柔道以外にかける時間は全くない状況なので、専念できる環境はいいと思う。ただ、時間に余裕があると、どうしてもあぐらをかいてしまう。そういうことをなくすために予定は詰め詰めにしてやっています」
全ては柔道のために。心を磨くため、読書にも時間をあてるようになった。
「最近は日本の歴史の本を読んでいます。誤解されるかれしれないけど、戦争中、軍人たちがどんな闘い方をしてきたのかを学ぶことは、今後の自分の柔道や人生に参考になると思ったんですよ」
知っての通り、ウルフは父はアメリカ人で母は日本人ながら、日本とともに星条旗を背負いたいという気持ちはない。
「僕は生まれも育ちも日本の下町なので、日本を背負って闘いたいという気持ちが強い。父親がアメリカ人というだけの日本人として見てもらえたら」
当然、主食はパンではなく白米。今年4月、初優勝を遂げた全日本選手権当日朝、ホテルの朝食にはパン中心の軽食しかなかったことには閉口したというエピソードもいかにもウルフらしい。
「ずっとお米で育ってきたので、お米を食べた方が力は出る。その時泊まったホテルにはパンのほかに一応おいなりさんもあったんですよ。朝からおいなりさんはどうかなと思ったけど、仕方ないので食べました」
毎月、鹿児島から5kgほどの鶏肉を仕入れている。ぼんじりは自らサバいて食べる。
「鳥刺しで食べられるいい肉はないかと捜していたら友人から紹介してもらったお店の鶏肉が美味しかった。やっぱり体が資本なので、食べ物にはこだわりたい。もともと生肉が好きなので一石二鳥ですね」
―鶏肉パワーで東京五輪を目指す?
「鶏肉だったらあんまり強そうではないので、肉パワーということで(微笑)。あっ、最近は魚も結構食べます。最近だと井上(康生)監督が奥さんと一緒にお寿司屋さんへ連れていってくれました。魚は自分でも普通にサバきます。僕はインドア派。あまり外は好きではないので、いい魚がほしいと思ったら釣りではなく市場に行きたくなる」
ウルフは2017年の世界選手権、今年の全日本選手権を制している。
もうひとつオリンピックで金メダルを獲得すれば、三冠を達成することになる。そのステップとなるグランドスラム大阪(以下GS大阪)は何が何でも負けられない。
「三冠を目指すという気持ちはある。五輪は昔からの夢であり、いまの目標でもある。一応世界と全日本のふたつは獲っているので、三冠にむけてのモチベーションは上がっています」
とはいえ、GS大阪は国内の強敵も多い。
前回大会銅メダルの飯田健太郎(国士舘大)Photo:Itaru Chiba
この階級には昨年のGS大阪で3位となった飯田健太郎(国士舘大)、リオ五輪銅メダリストで今年の全日本選抜体重別ではウルフと飯田を下し初優勝した羽賀龍之介(旭化成)、今年の講道館杯で2位に輝いた西山大希(日本製鉄)も出場する。
4月の全日本選抜体重別でウルフと飯田を破って優勝した羽賀龍之介(旭化成)Photo:Sachiko Hotaka
実力者ぞろいの階級は嵐の予感だ。
文=フリーライター・布施鋼治









