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東京五輪へ 向翔一郎が「我慢する柔道」とともに挙げるもうひとつの課題

2019.11.21
柔道グランドスラム大阪 - 東京五輪へ 向翔一郎が「我慢する柔道」とともに挙げるもうひとつの課題

11月22日に開幕する柔道グランドスラム大阪。2020年東京オリンピック代表選考を兼ねる大一番に日本代表はどんな思いで挑むのか。男女全階級の見どころを紹介する全14回連載の5回目。

 

柔道グランドスラム大阪 みどころ 男子90kg級

 

 試合の主導権を終始握っていたのは向翔一郎(ALSOK)の方だった。しかしポイントを奪えない。そうした最中、″伏兵″ファントエイド(オランダ)の小外刈りの前に技ありを奪われ万事休す。初めての世界選手権は、あと一歩というところで頂上に届かなかった。

 

 向は「調子が良かった分、決勝で負けたということがすごく悔しかった」と振り返る。「″何であの時こうできなかったんだろう″は今でも思い出す。一生悔いが残る試合だったと思います」

 

 向は、こうも言った。

 

「途中でいけると思った瞬間、″何で投げようか″と考えてしまった。やっぱり決勝だったし、周りの人も見てくれていたから、カッコよく決めたいみたいという邪念が入ってしまった」

 

 その一方で個人戦初出場での銀メダル獲得を評価する声は大きい。井上康生監督も「我慢強い試合だった」「次の大会に向けて一歩前進はしていた」と評価する。次の大会とは、グランドスラム大阪(GS大阪)を指す。

 

 準決勝で得た評価と糧をどのように活かそうとしているのかと水を向けると、向はこの大会に出場する他の3名の日本人選手 長澤憲大(パーク24)、ベイカー茉秋(日本中央競馬会)、村尾三四郎(東海大)に目を向けた。

 

リオ五輪金メダルのベイカー茉秋を破るなど勢いに乗る19歳村尾三四郎(東海大)Photo Itaru Chiba

 

「今回の世界選手権は途中で強い奴が負けたから、自分が上がれたと思っている。他の選手たちはそんなに焦っていないので、ここで勝たないといけない」

 

 向は、他の日本人選手とはやりたくないという本音も吐いた。

 

「だって日本人選手はみな我慢強い。自分みたいに我慢しない柔道はしない」

 

 そのせいだろうか、世界選手権前、向は「我慢する柔道」を課題として挙げていた。ただ、その裏側には勝負師らしい反発心も。

 

「自分は逆に他の日本人選手たちにはできないことができると思っている。逆に自分が今までできなかったことをできるようになれば、絶対負けることはないと思っています」

 

 向は「投げる力は自分が一番」と胸を叩く。

 

「一本を取れるという技も自分は何個も持っている。そこは自分の長所でもあるし、見ていて面白いところでもある。そのへんはこれからももっと伸ばしていきたい」

 

 グランドスラム大阪(以下GS大阪)で優勝すれば、東京五輪も見えてくる。向はそれまでに時間はないと考えている。「(来年)4月の選抜くらいまでには決まると思うけど、やっぱりそれまでにどれだけアピールできるか。出る全部の大会で優勝できるかどうかにかかってくる」

 

 GS大阪での課題に、向は我慢する柔道とともに、もうひとつ付け加えた。

 

リオ五輪金メダリストのベイカー茉秋(日本中央競馬会)Photo Sachiko Hotaka

 

「徹底的して相手の息を止めるまで追い続ける柔道をしようと思っています」

 

 そうであるがゆえに、強くなることに関して向は貪欲だ。トレーニングのひとつとしてキックボクシングも取り入る。打撃系格闘技のどこが役立つのか? 向は柔道とキックには相通じるところがあると力説する。

 

「キックをやっていると、スイッチ(右構えから左構えに、あるいはその逆)が自然にできるようになる。それにキックをやっていると、体が軽くなる。体脂肪がめっちゃ落ちてキレが増す」

 

 傍らからみると、通常の柔道の練習後にキックのそれを組むスケジュールはハードに映る。しかし、向はそうは思わない。

 

「そういうのが自分の中では普通。やっていることが特別だとは思わない」

 

 柔道+キック。1日の練習時間はどのくらい? 「6時間半。長い? いやいや、足りないくらいですよ」どこまで強さを追い求める向だが、前回大会で銅メダルを獲得、今月の講道館杯では決勝でリオ五輪金メダリストのベイカー茉秋(日本中央競馬会)を破った19歳村尾三四郎(東海大)の躍進が著しい。

 

昨年世界選手権銅メダルの長澤憲大(パーク24)Photo Sachiko Hotaka

 

その村尾には敗れたものの、ベイカーも右肩の手術を乗り越え調子を上げてきている。ここに昨年の世界選手権銅メダルの長澤憲大(パーク24)も加わり、混沌とする90キロ級の東京五輪争いで今大会は大きな意味をもつ。

 

 

文=フリーライター・布施鋼治

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