東京五輪代表選考会である柔道グランドスラム大阪。
2020年東京オリンピック代表選考を兼ねる大一番に日本代表はどんな思いで挑むのか。
男女全階級の見どころを紹介。
柔道グランドスラム大阪 みどころ 女子78kg超級
2019年11月、素根輝(環太平洋大)は地元福岡県久留米市からスポーツ大賞を授与された。同賞の受賞は自転車の世界選手権プロスプリントでV10を達成した中野浩一に続く33年ぶりの快挙だ。同年10月には福岡のヤオフクドームで行なわれた日本シリーズ第1戦で始球式を行なっている。
地元では東京五輪での金メダル獲得への期待がいやがうえにも高まっているのか。素根は「何年か前まではオリンピックなんて夢みたいな感じで、そういうことを聞かれると『オリンピックに出て金メダルを獲りたいです』と漠然と言っていたんですけどね』と少々戸惑いがあることを隠さない。
「いざこうやって近づいてくると、本当に覚悟が必要なんだなと思います」
無理もない。素顔は19歳の大学1年生。高校時代から素根が放つ大内刈や体落はシニアの世界でもトップクラスと言われ、日本で行われるグランドスラムでも2016年からメダルを毎年獲得している。とはいえ、全てが順風満帆に来たわけではない。
2018年には″ライバル″朝比奈沙羅(パーク24)に4月の選抜体重別と皇后杯で勝利を収めながら、個人戦では代表に選ばれなかった。
素根は「悔しかった」と振り返る。「でも、やっぱり代表に選ばれなかったのは自分の実力不足で自分が(グランドスラム・パリで)負けたから選ばれなかったんだというふうに受け止め、『来年は絶対優勝してやる』と心に誓いました」
持って生まれた性格なのか、いつまでも落ち込むタイプではない。
「そんなにクヨクヨしていてもという感じですかね、やっぱり」
昨年の屈辱を胸に、今春大学生になった素根は選抜体重別と全日本を制して、日本で開催された世界選手権に出場した。決勝は五輪金メダリストのイダリス・オルティス (キューバ)との一騎討ちに。最初に「指導2」を受けたのは素根の方だったが、ゴールデンスコアになると、オルティスが失速。
最後は素根の大内刈りによる場外逃避で「指導3」を食らって反則負けを喫した。終わってみれば、初戦から決勝までオール一本勝ち(反則勝ちも含む)。素根にとってはうれしい世界選手権初優勝だった。
「決勝で先に指導をふたつとられた時には、もう攻めるしかないと思いました。とにかく何かをかけて、相手のペースにならないように心がけました」
素根の身長は162cm。この階級では決して大きい方ではない。しかし無尽蔵のスタミナと人一倍強い負けじ魂でハンディを感じさせない。素根は「やっぱり(実戦で)闘うのは大きな相手ばかりなので、それを意識して練習しないといけない」と打ち明ける。
「今年の世界選手権では優勝することができたけど、技が中途半端な部分がたくさんあった。今はしっかりと技をかけ切る練習と組み手の強化、そして外国人選手にも負けないパワーをつけることを課題にやっています」
そんな素根には欠かせない参謀&トレーニングパートナーがいる。兄の勝だ。
「普段はやっぱり柔道についての話が多いですね。練習の時にはアドバイスをしてくれる。世界選手権の時には試合前には必ず『自信を持っていけば、絶対に大丈夫』という感じで声をかけくれました。きょうだい喧嘩?年も離れているので、喧嘩することはないですね」
素根の快進撃に待ったをかけられるか Photo Sachiko Hotaka
78kg超級には過去5勝3敗と勝ち越している朝比奈のほか、今年の講道館杯優勝の冨田若春(コマツ)、講道館杯3位の児玉ひかる(東海大)が出場する。児玉は全日本ジュニアやインターハイの予選で素根を破ったことがある。再戦はあるのか。
11月上旬、地元福岡で練習中の素根の元を訪れると、「GS大阪で勝つことだけを考えて練習している」と打ち明けた。
「今回のGS大阪はオリンピックがかかっている大事な大会。絶対に勝つという気持ちで一戦一戦を全力で闘いたい」
両親の″世界で活躍する人になってほしい″という思いから「輝」と名付けられた素根。GS大阪を制して、東京五輪代表の座を射止めることができるか。
文=フリーライター・布施鋼治









