「しょせん他人事ですから」ネット専門の弁護士のモデル!清水陽平弁護士インタビュー【前編】

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累計210万部突破の大人気コミックをドラマ化した、ドラマ8「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」(毎週金曜夜8時)。原作漫画と今回のドラマの監修を務め、中島健人演じる主人公、ネットトラブル専門の弁護士“保田理”のモデルでもある清水陽平弁護士にインタビュー。

【動画】TVer:清水陽平弁護士がモデル!中島健人演じる弁護士“保田理”がトラブル解決

ネットトラブル専門弁護士“保田理”のモデル


――主人公・保田理弁護士のモデルは清水弁護士で、タイトルの「しょせん他人事ですから」も漫画の編集者と原作者の左藤真通さんが清水弁護士の言葉を気に入ってそのまま使ったそうですね。ご自身から見て“保田弁護士”をどのように感じますか?

「漫画のためにお話しした言葉やエピソードは、ほとんど使われていると思います(笑)。トラブルなどの案件も実際に類似の事案などもあり、自分の仕事と重なります。ただ、キャラクターとしては違いますね。あんなに、あからさまに依頼人を怒らせるようなことはしないです(笑)」

――(笑) 原作の漫画監修についてはこれまでにもインタビュー記事などでお話されていますが、今回のドラマの監修では具体的にどのようなことをされているのですか?

「脚本を読み、仕事上での経験から『こういう会話はしない』、法律上ではありえない展開には『流れを変える必要がある』などお伝えしています。スタッフさんから“リアルに寄せてほしい”とご要望がありましたので、なるべく裁判の実際に沿うようにしています。

また、ドラマの小道具として使う裁判や開示請求の書類などの資料作成もしています。基本的に一から裁判書類一式を作る形だったので、それはちょっと大変でしたね」

――劇中の書類にも注目ですね。中島健人さんが演じるドラマの保田弁護士の印象は?

「ああいう弁護士は実際にないでしょうが、“保田理”というキャラクターをよく理解して演じられていて。漫画のイメージのままでありながら実写として違和感がないのがすごいですね」

「しょせん他人事ですから」ネット専門の弁護士のモデル!清水陽平弁護士インタビュー【前編】画像素材:PIXTA

――清水弁護士の発言や実際のエピソードが基になっているとのこと。第4話では、保田弁護士がネット専門の弁護士になったきっかけや、“他人事”をモットーにしている理由が描かれましたが、これも清水弁護士ご自身のきっかけとなった出来事なんですか?


「このエピソードそのものがあった…ということではないのですが、ネットトラブルに関する依頼があってそれに対応していたら、結果としてネットトラブルの案件が多くなったという感じで、その意味ではエピソード類似のことはあったといえます。

第4話の事例(喫茶店の中傷レビューで炎上)は、漫画では十数年前の出来事として掲示板の“2ちゃんねる”を題材にしていましたが、今回のドラマでは中島健人さんの年齢から数年前の出来事にすることになりました。当時のインターネットの状況を鑑みながら何を対象にするかスタッフと話し合い、“Googleマップのようなものの投稿欄”にしたのですが、“掲示板”と“投稿欄”で起こったことの違いをどう描くかの調整が、かなり大変でした。ただ、ネットトラブルの案件を初めて担当した保田弁護士の『ゲームみたいで面白い』という感想は、たぶん私の言葉です(笑)。」

「しょせん他人事ですから」ネット専門の弁護士のモデル!清水陽平弁護士インタビュー【前編】画像素材:PIXTA

――原作の漫画が描かれた時点からネットを取り巻く環境が変わっているため、ドラマにする上でのご苦労があったのですね。

「第1話の主婦ブロガー炎上のエピソードも、漫画ではプロバイダ責任制限法(※注)の改正前だったので今とは手続きが違っていて、今では当たり前のWEB会議も制度がありませんでした。こうした当時とは変わってきたものをドラマにどう取り入れるか、逆に、保田を裁判所に裁判をしに行かせるためにはどうすればよいか、と現在の法律に合わせて内容を組み替える作業がありました」

※注 プロバイダ責任制限法:インターネット上での権利侵害についての発信者情報の開示などの権利を定めた法律。ネットでの誹謗中傷の深刻化などから改正され(2022年10月1日施行)、さらに2024年5月17日には、プロバイダ責任制限法を改正した「情報流通プラットフォーム対処法」が公布された。

「しょせん他人事ですから」ネット専門の弁護士のモデル!清水陽平弁護士インタビュー【前編】画像素材:PIXTA


ネットトラブルに遭ったら、どうすればいい?


――ネットトラブルについての相談は、どんなものが多いですか?

「Xでの誹謗中傷などが全体の8割ぐらいですね。会社や、SNSを活用して集客するビジネスをしている人からの相談もあります」

――逆に珍しい相談はありますか?

「Googleマップのスポット情報を勝手に書き換えられたので、書き換えた人の開示請求したいという相談でしょうか。誹謗中傷とはちょっと違う切り口なのと、類型としてそれほどあるものでもないので、珍しい相談といえます」

――勝手に書き換えられると聞いてWikipediaが思い浮かびました。Wikiには虚偽情報も多いですが、名誉毀損で訴えることはできるのですか?

「難しいケースが多いですね。Wikipediaは、ログインしていないとIPアドレスが出ますが、ログインしていると出てきません。ログインしないでおかしな編集をされた場合はIPアドレスを基に開示請求していく余地はありますが、それが日本のIPかどうかという問題もありますし、なかなか難しいです」

――解決できないこともあるんですね。

「実は、解決できない事例の方が多いです。ネットトラブルで、法律で対処できる範囲にあるものは少ないんです。ただ、ネットトラブルに遭ったら、悩んでいるより早めに相談していただいた方がいいですね。できることがあったとしても、ログの保存期間(※記事【後編】で詳しく解説)などもあって一定の時間が経つと対応できなくなってしまうこともあるからです」

――トラブルの内容は、ネットやSNSの普及によって以前と変化はありますか?

「『名誉毀損』に基づいて開示請求をすることが多いのですが、最近は『名誉感情』が侵害されたとして開示請求しようという案件が増えたかもしれないです。以前は名誉感情侵害での開示はなかなか認められなかったのですが、最近は認められている例も多いです」

――“感情”に着目するようになったのですね。“名誉毀損”については、ドラマで保田弁護士が「日本では名誉の価値が低いため、裁判を起こしても高い賠償金を取れるわけではない」と説明していました。誹謗中傷などのネットトラブルが増加する中で、その辺りに変化はあるのでしょうか?

「残念ながら、名誉に対する価値は低く、賠償額も低いままです。賠償金額は裁判所の認定によります。裁判例は積み重ねられるものなので、裁判官は他の同じような事例でどれくらいの認定をしているのかを見ます。そうすると“横にならえ”で決められてしまい、金額が上がりにくいというところがあります」

――今や、いつ誰がどんなトラブルに巻き込まれるかわからない状況ですよね。ネットを使う私たちが、そこを変えていくためにできることはありますか?

「『その賠償額はおかしい』『賠償金はもっと高く認定する必要があるんじゃないか』といった意見が世の中から出てくれば、変わる可能性はあるとは思います」

後編】では、弁護士として改善を望むことや、ネットトラブルを回避するための方法などについてうかがいます。

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累計210万部(※紙+電子)突破! 漫画「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」(白泉社)第1巻~第7巻、販売中! 左藤真通(原作)・富士屋カツヒト(作画)・清水陽平(監修)
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清水弁護士が監修する、ドラマ8「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」(毎週金曜夜8時)第7話。加害者家族に届いた賠償請求。息子にかける言葉に悩む父に灯は自らの父との経験を話す。山梨で被害者と対面するが少女の怒りに周囲は圧倒され…弁護士保田の出した答えは?

TVer」、「ネットもテレ東」で第1話と最新話を期間限定配信中! 第1話が5分でサクッと見られるダイイジェストも!

【プロフィール】
清水陽平(しみず・ようへい)
東京弁護士会所属 弁護士。2010年11月「法律事務所アルシエン」開設。得意分野は、ネット中傷の削除・発信者情報開示請求、損害賠償請求・刑事告訴、ネット炎上対応、ストーカー対応など。インターネットの誹謗中傷に詳しい弁護士として多くのメディアに出演、著書も多数。漫画「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」(白泉社)、ドラマ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」(テレ東)の監修も手掛ける。
法律事務所アルシエン
X:@shimizu_alcien
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